表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/25

1-②

 セレーナははじめ、魔女の元に行かされると聞いても全く嫌がらなかった。


 むしろおもしろそうだと喜んだくらいだ。


 しかし、魔女が迎えに来る当日、両親と兄姉が目に涙を浮かべて自分を見るのを見て、少しだけ不安を感じた。


「みんな、なんでそんなに悲しそうな顔をしているの? セレーナは大丈夫よ。セレーナが魔女さんの元へ行けば、エルレア王国はこれからも平和なんでしょう?」


 セレーナは悲しげな顔をする家族を慰めるように言う。


 そんな姿を見て国王は目を逸らし、王妃はこらえきれず嗚咽を漏らした。兄弟たちは胸が詰まって、何も言うことができなかった。



 家族の反応が不思議ではあったものの、セレーナは魔女が迎えに来ると元気に手を振って去って行った。


 少し心細いとは思っても、好奇心旺盛なセレーナにとっては、不安よりも未知の生活にわくわくする気持ちのほうが大きかった。


 しかし、魔女の屋敷についていくらも経たないうちに、セレーナは自分の残酷な運命を思い知らされることになる。


「よく来てくれたわね、セレーナ。私、人間の子供で遊んでみたかったの。それもどこにでもいるような平凡な子供じゃなくて、王宮で大事に大事に育てられてきた子供で」


 魔女はにっこり笑ってそう言った。セレーナも言葉の意味を理解しきれないまま笑みを返す。


 すると、突然魔女はセレーナを蹴飛ばした。



「い……っ」


「笑うんじゃないわよ。胸糞悪い。私、幸せそうな子供が大嫌いなの」


 魔女は冷たい目でセレーナを見据える。その手には鞭が握られていた。


「あ、あの、魔女さん……」


「そこから動くんじゃないよ。甘ったれて育ったあんたに痛みっていうものを教えてあげる」


「な、何するの……いや……」


 怯えるセレーナに構わず、魔女は容赦なく鞭を振るう。


 セレーナは初めて向けられる悪意と、終わらない痛みに、ただ震えることしかできなかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ