航空機乗りとしての一生涯
空軍士官(中佐)。彼は諸外国でそう言われる階級まで昇った。単なる民間航空会社のテストパイロットに過ぎなかった空里天斗は、大出世を果たしたと言えるだろう。
しかし、彼にはそんな地位や名誉はいらなかった。航空機乗りとしての一生涯を無事に果たせた。その事実だけが、彼を満足させた。失った仲間の数はいざ知らず。
それでも彼等が守りたかったのは祖国日本ただ一つ。例え、己の命が尽き果てても、祖国が安泰ならばそれで良い。そんな気概や誇りが現代の日本人にはあるだろうか?
零戦から見つめたこの物語はフィクションであるが、戦争の時代を生きた人間の多くは、今の日本を見て、嘆くだろう。勿論、時代は変わった。しかし、日本人の本質は変わるどころか劣化の一途を辿った。物質面では不自由はしなくなった。
だが、国土のほとんどが地震活発断層の上にあり、多大なる被害をもたらす自然災害も多い。戦争はないが、毎年約3万人が自殺を遂げる。戦時中には有り得なかった事である。現代日本の抱える諸問題の多くは日本人自身に非がある。
他国がどうとか言う前に、まずは失いつつある自国のアイデンティティーにこそ目を向けるべきである。零戦もそんなアイデンティティーの一つだ。そしてこの物語は、きっといつか日本人が気付いてくれる事を祈っている。
時代は流れる。人も移り変わる。しかし、日本人には失ってはいけない、崇高な精神=大和魂がある。日の丸はきっといつ何処にいても、必ずそっと見守ってくれる筈だ。




