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零の風~あるパイロットの戦争~  作者: 佐久間五十六


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晩年

 空里天斗は、民間航空会社のパイロット→航空自衛隊を経て56歳、(二等空佐)で自衛官を退職した。

 自衛隊を退職してからの彼の人生は、彼にしてみれば退屈なものであったと言えるだろう。晩年は、盆栽を趣味として、静かな老後を送った。

 勿論、一人の家庭人としての役目もしっかり果たした。妻を得て、二人の子宝に恵まれて、二人とも大学まで卒業させた。家庭の事は、妻に任せてばかりであったが、それでも一家の主としての威厳だけはしっかりと示していた。

 多くの人間がそうである様に、彼は家族を大事にしながらも、ストレートな愛情表現はしなかった。と言うよりもあえてそうしなかった。日本の武士たるもの、心は優しくも、強き者でありたい。そんな気持ちがあったのかもしれない。

 航空機に携わっていたが、特別な感情は抱いていなかった。生きる為の糧でしかなく、結局の所は、彼の生き様を示すステータスでしかなかった。晩年、家族にあてた遺書にはこう記されていた。

 「我が人生は儚くも一つの時代の節目で、少しばかり輝いたに過ぎない。多くの闇の中に散って行った同胞の事を思うと、戦後と言う時代は生きづらかった。しかし、伴侶を得て子宝に恵まれ五体満足で育ってくれた。日本の空を長年守って来たが、結局何の為にこの様な事をせねばならぬのか、と言う疑問は分からずじまいだ。切に願うのは、戦争の無い世界であって欲しいが、世界地図を見渡すと、その様な理想論は幻想なのかもしれない。」

 と、空里天斗は嘆いた。

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