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零の風~あるパイロットの戦争~  作者: 佐久間五十六


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生き残った者の責務

 亡くなった者がいれば、生き残った者もいる。当然、戦争で生き残った者にはそれなりの責務がある。それは、亡くなった人間の分も強くたくましく、生きて祖国の為に尽くす事である。勿論それは、誰に強制される様な事でもない。

 だが、生き残った者は、その様な感情が自然とわいて来る。戦争と言う国難を経験した者にしか到底分かり得ない感情ではある。生きる事さえ困難であった状況にあって、先の事など考える事など出来ないだろう。

 それでも戦争が終わり、落ち着けば嫌が応にも先の事を考えなければならなくなる。戦後と言う混乱期にあって、生き残った者達が歯を食い縛り踏ん張って来れたのは、ただ単にこうした強い想いがあったからこそであると言える。

 米国に敗れはしたが、その悔しさよりも、これからの日本をどうすれば良くなるか?と言う想いの方が強かったであろう。生きている者に責務は無いかもしれないが、少なくとも第二次世界大戦を生き抜いた人間には、その様な感覚は無かったかもしれない。

 現代人の多くが、エゴイズムとヒューマニズムに侵食されていく中にあり、先人のこうした心情を理解する事は大いに勉強になる事であろう。誰かの為にと言う特定の想いはないが、それでも一つの方向に向かって進んで行こうとする意思が戦後の奇跡の経済復活を生んだと言える。

 どんなに思っても、日本が負けたと言う事実は変わらない。変えられるモノではないが、それでも未来を見据えて進んで行こうとする、その潔さは現代人も見習わねばならない。

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