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栄光と衰退

　戦争の終結は一つの時代の境目となった。零戦の栄光と衰退は誰の目にも明らかであり、こうして零戦はその活躍の歴史を終えた。

　どんなものでも始まりと終わりがある。永遠に活躍出来るものなどこの世界には、存在し得ない。零戦は、日本が生み出した時代の寵児であると共に、純国産戦闘機として、初めて成功した類い稀なる機体であった。

　改良に失敗して、後継機を生み出す事が出来なかったものの、それでも長く戦闘の第一線で活躍し続けた事もまた事実である。米軍の圧倒的な物量と資源の前に屈する事になったが、世界最強の米軍を核兵器使用まで追い込んだ事は、素直に誇っていいだろう。

　零戦は戦闘機としても優秀であったが、空母艦載機としても、優秀であった。史上初の空母同士の艦隊決戦を行ったのは日本と米国である。国力のある国同士でなければ、この様な戦いは出来ない。戦争と言うものは皮肉なものである。技術革新や画期的なテクノロジーと言うものは、戦争を機に大きく変わる事が多々ある。零戦に限って言えば、戦後の航空機開発の礎となり、多くの遺産を残した。

　日本はさきの大戦の反省から、戦後一度たりとも対外戦争をしていない。勿論、それらの為に戦争をする事は許されない。だが、日本にとって戦争を経験する事が必ずしも、全てマイナスのものだとは、断言出来ない。

　戦争をする事は良くない事だと言うのは性善説でしかない。一度起こってしまった戦争をどう利用するか、終わらせるか。と言う事の方が重要であり、備えをしておく事で、ようやく国防の礎となる。零戦の栄光と衰退はその様な現実を教えてくれる"生き地引き"の様な存在である。