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零の風~あるパイロットの戦争~  作者: 佐久間五十六


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民間航空機パイロット

 職が無いとは言え、零戦乗りとしてならした航空機操縦のテクニックを民間航空会社が放って置く筈が無かった。

 しかし、敗戦直後の日本に満足な数のジャンボジェット機がある筈もなく、当面は新しい機体の開発も出来ない為、空里の主な仕事は飛行場整備の為の雑用であった。

 まずは草刈りや地ならし。そしてそれが終われば、今度は整地の為の機材搬入がある。日本にあった空港の多くは、戦前に使われていた物を戦後になって再整備した物が殆どである。空を飛ぶ機会は、皆無であったが、いずれ自分が使うかもしれない空港の整備は苦では無かった。

 GHQの指導の元、米国式の仕事のやり方が普及していたが、空里は全くそのやり方を参考にしていなかった。日本式のやり方に慣れていたし、何よりも日本人としてのプライドがあった。そこだけは譲れないと言う気持ちが、空里の中には確かにあった。米国式のやり方をそのまま受け入れている人間が多かったが、中には空里の様に日本式にこだわる人間もいた。どちらが良いのか比べる必要は無いが、長所と短所がそれぞれあり、比較する事自体無意味であった。

 日本人として、戦争には敗れた。だが、日本と言う国家自体が全否定されたと言う訳ではない。勝った者だけが正しいと言うのならば、世界には地域のオリジナリティ等存在しない事になる。とは言え、現実はそうではない。

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