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零の風~あるパイロットの戦争~  作者: 佐久間五十六


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「もう少し」と「他に何か?」の精神

 航空機の設計において、最も重要な事は、恐らくフィロソフィー(思考方法、思考態度)であるだろう。その追求の先にしか、良い航空機は生まれない。

 その為、満足の行く航空機を作る為には、「もう少し」や「他に何か?」と言う様な口癖の元で、何度もやり直す必要があったと言える。

 「もう少し」の精神は機体性能の向上の為には、必要な事であるし、「他に何か?」の精神は、機体に充分な装備を補充させる為に必要な事であったと言える。

 いずれにせよ、日本の様な三等国家が、工業力において米国や英国と言う一等国家と渡り合う為には、これらの様な精神は必要不可欠である事は、言うまでもない。

 機体を設計して行く上でも、これらの精神は非常に重要である。ただ、発注された商品を作るだけでは不充分であり、そこにプラスアルファを加えて初めて世に出た時に衝撃が走る。「もう少し」機体の性能を上げられれば「他に何か?」機体にプラスする事は出来ないか、これらの要求を追加する事が出来れば、発注よりも性能や精度を格段に上昇させる事が出来る。

 勿論、それらの精神が必ずしもプラスに変わるとは限らない。付加価値をむやみやたらにつけると、今度はその弊害が生じる事もある。それらを改善して行く事も「もう少し」や「他に何か?」の精神の一つであると言う事が出来る。

 日本の軍事技術の発展は、これらの精神があったからこそ発展していったとも言える。付加価値を付けるだけでは優秀な機体は生まれる事は無いが、それでも、より良い性能の高い機体を生み出す為には、必要な事であったと言える。

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