空のサーカス
帝国海軍航空隊には、「空のサーカス」と呼ばれる編隊特殊飛行を行う空の精鋭部隊がいた。今で言うところの航空自衛隊所属のブルーインパルスと考えて貰うと分かりやすい。
直接の戦闘技術には、関係の無い技術ではあるが、編隊飛行そのものが相当な技術が必要であり、そう言う部隊を持っている事が国としての一種の"ステータス"であった。
個人プレーの多い航空機ではあるが、空のサーカスにおいては、集団での組織力が必要になる。曲持飛行が出来たパイロットはそう多くは無いが、中でも有名なのは小林淑人大尉であった。水平錐もみ(フラットスピン)の技術であったり、二重横転と言った、熟練のパイロットにしか出来ない高度な技術を駆使しなければ、空のサーカスで、立派なパフォーマンスを見せる事は出来ない。空のサーカスに限らずパイロットになるにあたり最も重要な事は、技術を身に付ける事ではない。飛行機に何度乗っても諦めず技術向上の努力を怠らない事である。
空のサーカスに入れる様な精鋭は、努力を怠らない。だからこそ空のサーカスとして、自信を持って胸を張れる。ブルーインパルスの様に国民の前で披露する機会は皆無であったが、それでも帝国海軍航空隊の空のサーカスに所属している事は一種の誉れであった。勿論、彼等とて一人の海軍軍人である。命令があれば所属先の航空部隊に戻り実際に参加しなければならない。そんな状況にあっても誰一人として、文句を言う者はいなかった。




