最難関チェックリスト
航空機が一つの商品として、実戦配備されるまでには、数多くのチェックリストをクリアしなければならないが、その中でも最難関とされているのが、急降下のテストである。もし仮に機体の強度や設計上のミス等から小さな不具合があれば、それが積み重なり大事故になる。
そう言ったものを確認する為にはこの急降下のテストはリスキーなのだが、機体の強度を図るには外せないチェックリストではある。だが、ここはパイロットの命の安全が第一である。急降下の途中で空中分解してしまえば、死を避けるのは困難である。
幸いにして三菱重工業名古屋航空機製作所には熟練のテストパイロットがいた。中尾純利と言う男が操縦工がその人だ。彼は軍人ではなかったが、日本で初めてのパラシュートによる脱出成功者であり、フラッター(旗の様に機体がはためく現象の事)等に対しても抜群のテクニックで対応する事が出来た。
そんな中尾も急降下のテストは嫌なものであっただろう。一歩間違えれば死ぬ世界にいたからだ。ただ、この最難関のチェックリストをクリアしなければ、試作機が日本海軍の正式採用となる事はない。実際の水上戦闘になれば、無理な急降下爆撃もしなくてはならないし、何よりも敵機体よりも、有利なポジションをとるためには、急降下を用いなければならない時もある。艦戦であろうと艦爆であろうと、機種に関わらず航空機、取り分け軍用戦闘機に至っては、降下する能力。つまり急降下の能力は必須のものである。




