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零の風~あるパイロットの戦争~  作者: 佐久間五十六


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秘密主義

 戦艦大和にしても、零戦にしても、日本海軍が総力を上げて作り出した兵器のほとんどが、秘密裏に作られていた。徹底した秘密主義は、大戦を出来る限り優位に進めたいと言う、思惑があったのだろう。

 製作する人間と海軍上層部しか知らない秘密事項にする事で、情報を極力遮断した事により、情報は外に漏れない。だが、結局末端の兵士達がそうした兵器を使う訳なのであるから、秘密主義はいつまでも続かない。

 物事にはメリットやデメリットがあるから、仕方の無い事ではあるが、ある程度把握しておかないと、秘密主義は決壊するだろう。秘密主義最大のメリットは奇襲攻撃に長けている点にあるだろう。語弊があるやもしれぬが、戦場にいきなり投入して、大戦果を上げ様と言う意図は明白であった。

 秘密主義は日本の戦力を不透明化し、戦略的優位を保ちたいと思っていた事も、明白であった。これ等の意図を加味すると、日本海軍の秘密主義は誰もが納得の行くものになる。結果的には大した戦略的効果は無かった。それどころか、戦艦大和に限っては、ほとんど戦略的効果を果たせずに沈没した。

 そうした意味では零戦の秘密主義は成功したと言える。とは言え、最も効果は限定的であった。そして、長く持続はしなかった。零戦も大和も日本海軍にとっては切り札であったのは事実である。しかし、これ等の切り札を上手く活用出来なかったのは、技術的な問題以上に、日本海軍のヒューマンエラーも多分にあったのだろうと思う。

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