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零の風~あるパイロットの戦争~  作者: 佐久間五十六


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大判断と小判断

 欧米列強を倒し、大日本帝国の栄光を維持すると言う大判断を達成する為には、零戦の構造に多少の穴があると言う小判断は、飲み込まなければならなかった。

 勿論、本来であれば戦闘機開発においては、ベターよりもベストの方が相応しい。大判断=帝国のプライドと言う図式が成り立つ以上、誰もが小判断を飲み込まねばならない時代でもあった。

 米国や英国に勝つ為には、多少の無理は仕方が無い事であった。そんな事は日本国民ならば口にするまでもない事実であった。零戦とて、エース級の機体にあっても、勝つ為には妥協しなければならない所があった。そこに敗因があったのかもしれない。

 どの様な場合であっても全力で、小判断を優先させられる国力に余裕のある国が勝利を重ねて、歴史を作って来た。だが、当時の大日本帝国には、その余裕は無かった。大判断を優先させる為には、多少の無理は目をつぶっていた。

 勝てる、勝てないと言う議論の前に、技術的体力や政治面において、かなりの無理は承知の上であった。それ位米国や英国とは、差があった。良識のある軍人ならば、この戦いは勝とうが負けようが辛く厳しいものになる事は明白であった。

 太平洋戦争開始直前の日本においても、その戦争を止めようとする事の出来るカリスマ政治家も、カリスマ陸海軍人も、残念ながら現れなかった。絶対的リーダーを欠いた事により、安易な戦争に突入してしまった、判断を誤らせた原因の一つなのかもしれない。

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