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零の風~あるパイロットの戦争~  作者: 佐久間五十六


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戦闘機のプライス

 航空機を充実させるとは言え、当然ただでは出来ない。コーヒー1杯が5銭であった時代に、量産機でさえ1機3万円もしたという。

 昭和6年の国家歳出総額が14億7700万円で、この内軍事費は30.8%(4億5500万円)であり、海軍予算が3億600万円であった為、どれだけ航空機を買う事が大きな買い物であったかが分かる。その予算のうち、航空機に回せる予算は約5900万円程であったと言われ、単純計算でも量産機200機程しか揃えられない計算になる。

 必要なのは金だけではない。鉄やアルミと言った鉱物資源やエネルギーとなる石油も必要であった。当時、日本は石油の大半を米国に依存しており、米国からの石油が途絶えれば、戦争を覚悟する必要があった。だが、それは勝てないと分かっているギャンブルでもあった。

 太平洋戦争は資源を巡る戦いとも言えた。南部仏印(ベトナム)に進駐したのは、石油が欲しいからである。だが、荒唐無稽で稚拙な作戦しか展開出来なかった日本軍に勝利の女神は微笑んではくれなかった。戦争に勝つ為には、エネルギー自給率が高くなくてはならない。

 無論、全ての分野を国産で賄えればそれに超したことはない。しかし、世界は持てる国と持たざる国を生み出している。日本も、エネルギー自給率では持たざる国である。地理的にも他国との貿易無しでは、やっていけない。補給や資源の確保をしないうちに戦争をしてはいけないのである。

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