始末書
いくら優秀なパイロットや技師でも、組織の一員である以上はミスをすれば始末書を書かなければならない。無論、そう言うミスが無いに超したことはない。だが、人間は必ずミスをする。パイロットや技師では小さなミスでも命取りになる。
日頃から点検作業に整備兵が気を使うのは、大事故を防ぐ為であり、万に一つの事故を起こさせない為である。誰がミスしたかは重要ではない。責任の擦り付けあいをしたところで、ミスは消せない。大切な事は、一人で飛行している訳ではない事を、きちんと認識すべきなのである。飛行機はチームプレイで飛ばすものてある。
安全に最良の飛行をする為には、何が必要か。それが飛行機乗りの命題である。一人のミスが誰かを死なせてしまう事はこの業界ではザラにある。始末書の重みが他の業界とは違うのである。
危機意識を持たせる意味合いも始末書にはある。民間企業とは言え、やっている事は日本軍の為のものであり、もし仮に日本軍が事故を起こせばその機体を製作した三菱重工業名古屋製作所に全責任を擦り付けられる。そうなれば、今後仕事を振ってもらえなくなるかもしれない。
1度失った信頼を取り戻すのは容易な事ではない。だからこそ、ケアレスミスを無くす為に始末書を書かなければならないのである。ミスを無くす事は出来ないが、そのダメージを最小限に抑える努力をすべきなのである。始末書はそのツールに過ぎない。




