『ジーキル博士とハイド氏の怪事件』スティーブンソン ロバート・ルイス(青空文庫)
〇あらすじ
イギリスが舞台。前回の『ガリバー旅行記』の主人公、ガリバーもイギリス人でしたが狙ったわけではありません(笑)
とある路地裏にある古ぼけた家に出入りする気味の悪い男「ハイド」の噂話から物語は始まります。
ハイドはジーキル博士という医学博士から遺書で遺産の受け取り人として指名された正体不明の男でした。
ジーキル博士の友人であった弁護士の主人公は謎の男、ハイドのことを快く思ってはいませんでした。
一度会ってやろうとハイドを探していた弁護士はついにハイドと接触することに成功します。
そして、後日。
弁護士はジーキル博士と会った時に「ハイドという人物のことが少しわかった」と意味深な発言をします。
すると、ジーキル博士はみるみるうちに青ざめ、その話を早く終わらせようとしました。しかしその後も話は続き、弁護士はジーキル博士がこの世を去った後、ハイドの助けになることを了承します。
その一年後。夜道で老紳士が撲殺されるという事件が起こります。目撃者は犯人がハイドだと証言しました。
被害者が持っていた封筒が弁護士宛のものであったため、弁護士は警察に呼ばれます。
警察で確認した現場に残された凶器は、数年前、弁護士がジーキル博士に贈った杖でした。
警視と弁護士がハイドの家を訪れると、女中が出てきて「ハイドは留守だ」と答えます。
そこで、事情を説明しハイドの部屋を見せてもらうことにしました。ハイドの部屋には、折れた杖のもう半分が残されていました。
その後、ジーキル博士とハイドの筆跡がそっくりであることが明らかになりますが、ハイドの行方はすっかりわからなくなってしまいました。
しばらくすると、ジーキル博士は隠遁生活に戻ってしまいます。
そこで様子を見に行った弁護士は、ハイドの家だと思っていた路地裏の古い家がジーキル博士の家の裏口であることに気付きました。
ジーキル博士の家で働く召使いたちも博士の姿を見ておらず、「博士は殺されたのだ」と言い張ります。
部屋の中へ声を掛けてみると、返ってきたのはジーキル博士の声とは到底思えないような声でした。
疑いを深めた弁護士は召使いの頭の共にドアを破り、部屋の中へ入ることを決意します。
二人が部屋へ押し入ると、そこには博士より小柄な男が倒れていました。
体は震えているものの、息はもうありません。
そこにいたのは服毒自殺したハイドでした。
弁護士と召使いは殺されたであろうジーキル博士を探します。
しかしジーキル博士を見つけることはできず、代わりにもう一人の友人である医師が書いた手記を発見します。
そこには医師の目の前でハイドが謎の薬を飲み、ジーキル博士に変身したという話が詳細に描かれていました。
次に弁護士が読んだのはジーキル博士の手記でした。
そこにはジーキルという人間が元々善と悪の二面性を持つ人間であったこと、独自で調合した薬を使うことで善の人格「ジーキル博士」と悪の人格「ハイド」に分離することに成功したことが書かれていました。
ハイドはジーキル博士と人相も体型も違う、全く別の男に見える存在です。
一見しただけでは同一人物とはわからないため、内に秘められていた悪い欲求を「ハイド」として人知れず満たすことができるようになりました。
ところが、月日が経つにつれて本来の人格であるジーキル博士よりハイドの方が優位な存在になっていきます。
そこでジーキル博士は恐怖を抱き始めました。
ジーキル博士はもうハイドに変身しないと心に決めますが、博士の意思に反して、薬を使うことなくハイドに変身してしまいます。
ジーキル博士に戻る時にはやはり薬が必要なのですが、その薬を作るための材料は残りわずか。
同じものを召使いに買いに行かせますが、元々使っていたものには何らかの不純物が混ざっていたのか、新しい材料では同じ変化をもたらす薬を作ることができません。
その間にもハイドへの変身は続き、ついにはジーキル博士でいる時間よりハイドでいる時間の方が長くなってしまいます。
そこでジーキル博士はこの手記を遺書と共に書き残したのでした。
〇感想
興味を持ったキッカケはYouTubeで解離性同一性障害 (いわゆる多重人格)の方の動画を見たこと。
開いた動画がたまたまその病気を持っている方のものだったのですが、二つ三つと動画を見ているうちに興味を惹かれました。
その方の動画の中で出てきたのが『ジキルとハイド』という作品タイトル。
『ジキルとハイド』は完全初見ではありません。
小学生の頃に『オペラ座の怪人』『ドラキュラ』『フランケンシュタイン』『キングコング』みたいなオカルト系 (?)作品のシリーズの中にあって、それを一度読んでいるんです。
……が、いかんせん小学生の時なので記憶が曖昧なのと子供向けで内容が簡略化されて挿絵マシマシ状態のものを読んでいるはず。
ということで気持ちも新たに青空文庫にあったものを読んでみました。
第一印象としては、文章が読みにくい。
一文が長い上に一行にふたつほど句点があります。一文にふたつではなく、一行にふたつ。
長い文だと三、四行に及ぶので文章が細切れになっている印象を受けます。
翻訳された小説でネックになる部分ですよね……。
もうひとつ思ったのが「ジーキル」なんだなぁと。
翻訳する人のさじ加減なのかもしれませんが、そういう些細な部分にも驚きがありますね。
また、昔読んだ本ではジキル博士の視点で書かれていたように記憶していますが、本当は第三者視点だったんですね。
そのおかげでミステリー作品的な色が強く、なかなか核心に触れるところまで進まなくてやきもきしながら読んでました(笑)
ネタバレ? 前提知識? としてジーキル博士とハイドが同一人物と知っていると面白さや意外性が半減してしまいますね。
これは有名な作品であることの弊害かも。
作品の後半は自分が自分でなくなっていく恐怖がジーキル博士視点で描かれており、こういう恐怖の心理描写は私も使うことが多いので勉強になりました。
次は何を読みましょうかね。