4 "Dark"ness
現実世界にも盗賊はいるんだろうか?
海賊は居たみたいだけど
光が弱くなり、目の前には森が広がる。
ミザは森の手間で止まり、こちらを見ながら剣を叩く。
『武器は、なにかないの?』
『あぁ、武器は無いみたいだ』
『みたい??? そう、ならついて来なさい!従者を守るのも主人の役目だわ!』
もう完全に従者扱いか。
まぁ武器もないし仕方ないか。
ミザの後を追いながら森に入る、森は不気味な雰囲気はなく木と木の間隔も広く歩きやすそうだ。
少し歩くと、一際大きな木が見える。
木の側には小さな小屋があり、
小屋の前の立札には【ユグルの森 監視小屋】と表示がある。
しかし、ミザは小屋を睨んでいた。
『どうしたんだミザ?道を聞こうよ。武器がないと落ち着かないし街の場所も、、』
しかしミザの反応は違った。ミザは剣を抜く、明らかに雰囲気が変わった。
『オカシイわ。普通なら外に監視する兵士がいるはず。
なのに誰もいないし、小屋のドアも半開き....。』
全然気づかなかった。むしろ気付くはずがないゲームにしては手が混んでる。
ミザが剣を鞘から抜き、構えながらゆっくり腰を落とす。
次の瞬間小屋のドアが開いた。
キィッッー。バダン!
中から男が2人でてくる、先頭の男が右手にメイスと、左手には兜を被った兵士を引きずっている。
恐らくドワーフ族だろうか、雄々しく立派な髭
後ろの男は人族だろうか他種族にみられる特徴はない。
『おおお!なんだ!上玉がいるじゃねぇか!生意気にも剣をぬいてやがる!やるのかお嬢ちゃん。っち!魔族かよ』
下卑た笑いをうかべて男は兵士を軽々放り投げた。
『魔法剣士の魔族か、少しやっかいだが....相方は従者。
おい!デル!お前は従者をやれ。俺は生意気そうな魔族の女をやる』
『け、お前は大丈夫かよ?相手は魔法も使うぞ?
まぁ俺は楽そうだしいいが、人族の従者か同族殺しだが見られたからには死んでもらう』
そういうと人族の男は片手剣を抜いた。
剣自体はそんなに長くはないが取り回しが良さそうにみえる。
ミザの前にはドワーフ族、俺の前には人族の男とそれぞれ向かい合わせになる。
するとミザが小声で、
『小屋に走りなさい。私が魔法を派手に打つわ』
何で小屋に?返事をする暇もなくミザは叫ぶ。
『盗賊風情が雑魚そうね、私ひとりで十分よ!』
そういうとドワーフ族に向けて手をかざした。
瞬間、爆音が響く。
『はぁ?何にも起きねぇじゃねぇか。脅かしやがって』
『笑うぜ、ミスりやがったな!無詠唱じゃ、たかがしれてるぜ!』
2人共笑いながらミザをみている、、のを確認。
ジンは走り出した。
人族の男は反応したが、ジンは軽装なだけあって早かった。
一瞬で男との間合いをつめスライディングしながら横をすり抜ける。
男は舌打ちしながら振り返る。
『おい!なにやってんだ!デル!逃すんじゃねぞ!』
『わかってらーー!はええなクソが!』
ジンは振り返る事もなく小屋へ突っ込んだ。
『勝手にスライディングしたんだけど何だんだ!』
ゲームスゲェー!
考えるのを後回しにして小屋のドアを蹴りながら小屋の中に入る。
中は陽が入り明るかったが、床は血で真っ赤に染まっている。
奥のテーブルに寄りかかるように兵士が俯むいていた。
その傍らには剣が転がっている。
『おいおい、ゲームにしてはリアルすぎるだろう。。
えっと、、剣を装備して、、急げ、急げ、
申し訳ないが剣を借りるぞ』
急いで剣を取る。
剣は生暖かく、しっかり重さを感じる、振れるんだろうか、、心臓がバクバクとする。
アイテム欄を素早く開いて装備した。
後ろから怒号、人間族の男が乱暴に入ってくる。
『クソ従者が!逃げやがって!は?そいつの剣目当てかよ!俺達とやってること変わらなねぇな!
いいぜ、かかってきな!』
男は上段に剣を構え間合いを詰める。
それに合わせて、ジンも剣を構えたがどう切り掛かっていいか分からない、、
『おいおい、手が震えてるぜ!ビビりが!』
瞬間、切りかかってきた。
ジンは両手で剣をしっかり握りながら相手の剣を見つめていた、動きがスローに見える
ジンの目の前に【アシスト】の文字が浮かび意識をそこに集中する。
すると男が振り下ろした剣を避けながら、脇腹の辺りに一太刀入る。
男は何をされたか分からなさそうに脇腹を抑えながらしゃがむ。
『嘘だろ、早すぎる....
ほとんど攻撃が見えないだと、カハッ』
そういうと男は口から血を吐いて床に倒れ込み、絶命した。
『え、なんだ、、さっきも勝手に体が動いたし、ゲームの仕様か?
ただ、、この切った後の感触は、、
リアルというか、、心臓のバクバクがとまらない』
剣についた血を見ながらリアルさに戸惑った。
ふと我に帰った、
外にミザを残してきたのを思い出し急いで小屋の外へでる。
瞬間、ミザが見える。声をかけようとするが異様な光景が広がる。
ドワーフ族の男が黒い霧のようなモノに覆われて身動きが取れず拘束されている。
口は動いているのに声が出ていないし表情も苦しそうで、ミザを睨んでいる。
これは、魔法か?
ミザはそのドワーフ族を見ながら笑みを浮かべていた。
『すぐには殺さない!聞きたい事もあるし、ただ私の欲しい答えだけでいい。
だから大人しくなるまで、その下品な口を塞がせてもらう』
そう言うと、こちらに気づいたようで、
『あら、早かったじゃない。相手はどうしたの?』
『殺した、、余裕なかったし』
『あなた意外に強いじゃない、見直したわ』
『いや、殺すつもりはなかったんだけど身体が勝手に。。』
『勝手に?まさか狂戦士じゃないわよね?』
『いやいや、ないない。意識はあったんだけど自然と相手の動きにあわせて動いた感じ』
【アシスト】の説明したところで信じるわけないしなー。
『私が召喚したからかしら?とにかくすごいわ!
これで私も安心して背中を任せられる!』
『それは、どうも』
『さぁ、そろそろいいかしら?ドワーフ』
黒い霧が口の辺りから消える。
消えた瞬間、今度は俺の方を見ながら大声で叫ぶ。
『てめぇええええ!デルを殺りやがったな許さねええ!』
『あなたも兵士を殺してるじゃないの?なら殺されても文句はいえな、』
ミザの話を遮りながら男はつづけた。
『俺達はいいに決まってんだろ!さっさと魔法を解きやがれ!くそ魔族!』
『もういいわ、沈みなさい』
ミザは冷たく静かにつぶやいた。
拘束する黒い霧が完全に男を覆い隠し、バタバタする男が動かなくなる。。
あの魔法はなんだろうか?かなり強力に見える。ミザのレベルはいくつなんだ?
とりあえず後で聞こう、、
『ミザ、いいのか?なにも聞き出せてないけど』
『いいのよ、人殺しには容赦しないし。きっと喋る気なかったわ、あいつ』
もう済んでしまった事は仕方ない、一歩間違えば自分が殺されていたかもしれない。
今回はこれでよしかな?
『これからどうする?それに、兵士達と、倒したやつの遺体もこのままじゃマズいだろう』
『そうね、モンスターと違って5種族の遺体は残ってしまうし放っておくとアンデット化することもあるわ』
どうやら、モンスターは存在しているらしい、っというかゲーム初めて理解しないままイキナリ、対人戦とか
鬼畜すぎないか?
『えっと、火葬する?』
『ええ、火葬が一般的ね。教会にいけば祝福を受けて死体を燃やさず土葬にする事もできるけど、する意味はあまりないわね、王族、貴族あたりがお金をかけてする事もあるみたいだけど』
そこからは、ミザと黙々と火葬の準備をした。
兵士の剣は、そのまま借りることにした。
少しの間借ります!あとで返しにくるからね!
ミザは倒した人に戦利品の権利があるとして、盗賊の装備を進めたが俺は何とかく装備する気にはなれなかった。
ミザの魔法で遺体を燃やし、それぞれ別の場所へ埋めた。
埋めた場所に石を置いて目印にする。
自然と目を瞑り手を合わせる。
それを見たミザが、
『それは何の儀式?』
『安らかに眠ってくださいの祈りだよ。儀式とかではないさ』
それを聞いて、ミザも兵士の墓に手を合わせる。
ゲームなのに不思議にリアルで、ゲームということを忘れてしまうくらいだ。
滞りなく供養も終わった。
『ねぇ!小屋に地図とかあるかもしれない、探してみましょう』
『そうだな。村でも街でも探さないと夜になりそうだ』
2人は頷きあって小屋へ戻る。
次回もお楽しみに〜