2 "In" stall
コンピュータの分野における"インストール"とは、コンピュータにソフトウェアを追加し、使用可能にすることを指す。
Yesボタンをタップし、最低限の利用者規約にチェック入れ、住所と本人確認のための運転免許カードを撮影アップロードしてから2日後、Kairosオンライン運営元であるガイヤインターナショナル社から郵便物が届いた。
何と言うスピード感である、逆に怖い。
もっと時間がかかると思っていただけに、色々な感情はあるがワクワクを抑えられず乱暴に箱を開封する。
小さめの段ボールの中にはステンレス製の箱が出てきた。箱には”Jin - No.003”と刻印され
さらに小さな画面と0~9の数字ボタンがあった。
ジンはあらかじめメールにてPassを受け取っていたので入力する【012707】
ピピ!っと音と共に、女性の機械音で
『Hello Jin! Welcome to KairosOnline 』
メタリックな箱が開き中には、フルフェイスの黒いヘッドギアと黒のキューブ状の装置が出てきた。
『きたきたー!!これだっ!噂のブラックボックス!ネットで見た通りの見た目だ!
このモバイル型VR:クロノスはモバイル型とはいっているが実際は自身の使用するスマホに接続して
ゲーム世界に意識をコンバートするシステムをとっている。置き型に近いがスマホに接続する事からモバイル型と称していた。
この黒いキューブも謎に包まれており、中身は不明、故にブラックボックスと言われていた。
取説も同封してあったので見ながら接続を進める。
『えーっと、ヘッドギアの回線をスマホにさして、、、あ、線二股に別れているから一方をブラックボックに刺すのか丁度、スマホが中間にきてるから常にスマホを経由してブラックボックスの情報が流れ込むのか?
謎が多すぎる。
ブラックボックもコンセントにさしてと、、これ自体が電源のハブも兼ねてるのか?』
色々と思考を巡らせながら接続は完了する。
スマホからまた女性の機械音で『Welcome!Start Kairos!』
と音が流れたのでヘッドギアを頭に被り、ベットに寝転んだ。
『ドキドキするな、えっと確か言えばいいのか
"クロノス スタート!"』
ジンの声に反応しブラックボックスが光だし、ジンの意識はゲーム内に落ちていく、、、
気づくとジンは何もない黒い空間に立っていた、目の前には大きなスクリーンがあり、スクリーンにはフィールド、キャラクターの挿絵などが流れていく。
さらに、世界観の説明なども合間合間に挟まれ
登場する個性豊かなキャラクター達を見ているとワクワクが止まらない。
挿絵を見ていると色々な種族がいるようだ。
細マッチョで綺麗な鎧を見に纏う人族、筋骨隆々で髭が逞しいドワーフ族、耳が長く端正な顔立ちのエルフ族、人型に近く狼のような耳を持ち運動能力の高そうな見た目の獣人族、一際、セクシーな服でスタイルのよい妖艶なお姉さんに目が止まった、種族は魔族とある。
『ここの待機画面はBGM入れた方がいいよなー、これからプレイする人を更にワクワクさせるBGMは必要だろう。
あーでも、あえてBGMを入れないで挿絵に集中してほしい狙いもあるのか?ふむむ』
先行テスターとしてのポジションを意識しつつ開発側の意図を考えるのも楽しいものだとジンは思っていた。
挿絵には、一人称視点もありステータスや、地図などもわかる仕様となっているようだ。
ジンは、ジャンル問わずゲームをやってはいるが、自身がゲーム世界に入ってプレイするとは思ってもみなかった。
ニヤニヤが止まらず、待っていると、、
?『キモっ』
声?が聞こえたような.......。
『え?』
不思議に思ってるとスクリーンには”complete”のログが現れた。
〜【Kairos Online】〜闇と時と運命と〜
同時に、重厚感あるクラシックなBGMと、アナウンスが流れた。
『この度は、クローズドβ:Kairos Online 先行プレイに参加して頂きありがとうございます。
クローズドβという事もあり、まだまだ調整段階ではありますが楽しんでいただけたら幸いです。
Kairos Onlineではプレイヤー様の自由な発想を大事にしており特にチュートリアル等は設けておりません
ゲーム内でのバグ、不都合がございましたら下記のサイトから、ご報告をお願いします。
では、Kairos Onlineをお楽しみください』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
https://Kairosxxxxx.xxx
βテストプレイヤー様 専用サイト
運営:ゼウスインターナショナル
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目の前には、下着をきたマネキンのようなキャラがうつしだされた。
『いよいよ、始まる!よし。
まずは、キャラメイクかワクワクするな』
どうやら、性別、職業、種族を選べる様だ。
種族、職業は共に5つずつ。
そして、キャラは1つのアカウントで1キャラのみで削除して作り直さない限り、やり直しができない。
少し残念ではあるが、容姿等は細かく設定はできないみたいで今後はできるようになるのだろうか?個人的にはどちらでもだが、こだわるプレイヤーは少なくない。
【種族】
・人族=バランスがいい能力値、全ての職で平均的な強さ。
・獣人族=筋力が強く、素早い。近接職を得意とする。
・エルフ族=魔法への親和性が高く、また弓も得意とする。
・ドワーフ族=打たれ強く、扱う武器の性能を最大限上げてくれる。
・魔族=知力、魔法力が高いが打たれ弱い。
【職業】
・戦士=ほぼ全ての武器を扱えて、打たれ強い (バランス型)
・魔法剣士=攻撃力に特化しているが打たれ弱い (攻撃型)
・魔術師=強力な魔法を使えて、回復もできるが序盤はキツく育成が困難 (魔法特化型)
・弓術士=遠距離で敵を牽制し、近距離では短剣を駆使してテクニカルに戦う、簡単な魔法も使える (テクニック型)
・付与術師=自分を含めたキャラ全てを強化、弱体魔法などでサポートする事もできる (サポート型)
『王道ファンタジーRPG!だったんだ!これは期待できる!』
また、画面を見ながらニヤニヤしてしまう。
この時ジンは特典を意識しすぎて、Kairos自体どんなジャンルなのか気にもしてなかったが
RPGは好きな分野なので安堵していた。
?『キモっ』
今度は聞き逃すことなく確かに聞こえた。
『え?なんだよ、怖、』
このマンションに住んでから、そろそろ3年目になるが自分の意識外から人の声がするなど記憶にないし、
若干の不信感は覚えたが、今はキャラメイクを進める。
このヘッドギアは外部の音も拾うようにできており、誰かに話しかけられるとプレイヤーにも通知がいくように出来ている、実に高性能。
どうやら、種族を選んでから職業でより攻撃や魔法に特化させたり、苦手を補うなど、選択に幅を持たせ自由度を上げている。
運営の作りたい世界観にマッチしている。自由な発想がなんちゃらだったか?
『性別は、女性でと、、。種族は魔族、魔族って大体どこでも強キャラなんだよな。
職業はーーっと、魔法剣士!知的で妖艶なお姉さん完成!やっぱ巨乳サイコー!』
魔族は打たれ弱いが知力、魔法力共に高く、更に魔法剣士で攻撃力の底上げと魔法に特化させた。
ジンは勿論、男性だがゲーム内では女性キャラを選ぶ人は意外に多い。
しかも、自分の好きな容姿に設定できるのであれば見た目だけなら理想の女性像を形にすることができる。
これもキャラメイクの醍醐味といえよう。
?『ねぇ、キモいのよ!!!ニヤニヤとさっきから、この変態』
設定終了と同時に光に包まれ目を開けると、
『ふぁ??え、、まさか!? おい!マジかよ』
?『聞こえてるわよ!変態』
目の前には先ほどキャラメイクで創造したお姉様がいらっしゃった。
『おいおい、嘘だろ。人工知能搭載してるキャラなのか!すごすぎる!』
いくら時代の流れが早いとはいえ、ソシャゲに人工知能を搭載し、自由に喋れるキャラクターなど、見たことも聞いたこともない。
だからこそ、ジンは驚き歓喜した。
ただ、彼女の反応は違った。
?『ジンコウチノウ?意味がわからないし、うるさいのよ!』
『.......え、何?会話が成立するだと!いよいよ、ここまで技術が進んだのか!!』
?『話を聞きなさいよ!!変態が!!頭がおかしいから変態なんでしょうけど。
見た感じあなたは人族でしょ?会話は?できるのかしら?
あなた、名前は?』
『え、あ、神風 迅です』
『あっそう....。変態って呼ぶことにするわ。私はミザリー・アンデルセン!ミザとでも呼んでくれればいいわ、よろしく』
『いやいや、おかしいだろ?変態って、君に何かしたか?』
『ニヤニヤしながら私のこと見てたじゃないの!巨乳サイコーって言ってたわよね?ねぇ?言ったわよね?』
『べ、別に、君に言ったわけじゃないし!俺は、自分の作ったキャラに言ったんだ!魔族の魔法剣士で妖艶なお姉さん!』
『............。 妖艶かは知らないけど、それ私なんだけど?』
『え、まさか俺がキャラメイクで作ったキャラが君?』
『作った?私には親もいるし、訳のわからない事を言っているのかしら?キモい』
ジンは混乱する、先行体験で始めたゲームで作ったキャラと完全に会話が成立してしまっている。
まるで作ったキャラクターに合わせてKairosの世界観が構築されていくような感覚に、違和感を覚えた。
そして、ミザリー・アンデルセンっという名前。
普通ならキャラメイク時に好きなキャラネームをつけることができる。
キャラ自体が意思を持ち自分で名乗るなど、ありえるのか?
そもそも、仕様なのか?
やはり、人工知能?
運営の誰かがモニター越しに作ったキャラに合わせて人が話しているのか?監視されている?
ただ、後者の関しては無理があるのではないか?
わざわざ人を雇い無制限に拘束し、プレイヤーと会話しないといけない。
何より正式サービスを開始した際には、一体どれほどの人員を導入して対応するのか、、ありえない、、非現実的すぎる。
『えーっと、君は、』
『ミザリーよ!ミザでいいわ!ちゃんと名前呼びなさいよ』
ミザは凛として気が強そうだ。性格まではキャラメイク出来ないぽい。
これは運営にできるように提案しよう。
『ミザさん.......。 』
『さん?さんって何?勝手に名前を変えないでよ!ほんと疲れる』
その目が怖いんですよー美人だからさ余計に怖いというか俺自身、職場もプライベートも女子とそこまで関わる事が少ないし特に美人となると気後してしまう。
どうやら、Kairosの世界では名前に【〜さん】など付ける必要はなく、そもそもこちらの世界の価値観や常識は通用しないみたいだ。
『ミザは、どこに住んでたの?地球ってわかる?』
『首都ヴァルキューレよ。チキュウ?知らない国ね』
どうやら、モニター監視説は消えた?か......。
やはり、人工知能か?ただ、ミザは知らない設定なんだろうな。
そして、こちらの世界の知識や常識を話しても通じないし.......。
しかしながら、現状では判断材料が少なすぎる。
ただ、ジンは純粋な感情に支配されていた、、【好奇心】。
面白い!まずはミザと仲良くならないと!会社での人間関係で鍛えられたコミュ力を発揮する時がきたな!
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クワッ!!!
『ミザ、これから宜しくな!早速だけど付き合ってくれ!』
ドヤ顔!爽やかに、サラッと。
『はぁあああああああ?あんたバカー?いきなり告白するとか、やっぱり変態ね!』
軽蔑とありえないっという視線。
会社では、それなりに上手く立ち回ってはいるがそれは会社であって、女性と冒険に行くことなど現実ではありえない。
ジンは自分のコミュ力の幅の狭さと、言葉の難しさを改めて認識したのだった。
言い方をややこしくしたったーーとほほ。
リザは呆れながら、歩き出していく
その後を追いかけるジンであった。
書くのに不慣れで時間かかりました。
次回もお楽しみに。