1 Yes or "No"
この物語はフィクションであり、登場する人物、団体など現実とは切り離してお考えください
あなたは、あなたという物語の主人公。
『はぁー、、』
ため息がでる。
狭いワンルームマンションで昼間から、ゴロゴロしながら
青年はスマホを見ていた。
神風 迅26歳独身、一人暮らし、彼女なし、親友あり。
仕事は、中規模小売系企業での営業サポートデスクとして現場と会社の橋渡しの様な中間管理職をしている。
それなり大変な時もあるが今では仕事にも慣れ、毎日無難にこなしながら日々を過ごしている。
そんな彼もささやかな趣味がある。________
『このゲームも、結局重課金しないと強くなれないのかよ』
悪態を突きながら内心わかってはいる。
誰かが課金しないと運営だって商売として成り立つ訳もなく、重課金ユーザーに最大限の恩恵がある事を。
ジンも課金に反対という事ではなく、ある程度の課金で最大限遊べてワクワク、ハラハラ、ドキドキできれば良かったし、幸せだった。
『やっぱり、微課金だと辛いよなー、時間かかるし』
今日も、気になったゲームをジャンル問わず、何個もインストールしてはチュートリアルをサクサクとこなし早ければ数十分でゲームの本質を理解してしまう。
これもジンが色々なゲームをプレイする中で自然と身についた特技みたいなものだった。
たまには予想と違う事もあるのが、それは運営する会社の度重なる仕様変更などでゲームバランスごと、書き換えてしまうからだった。
ここでいう課金とは(現実のお金を払い仮想のお金やアイテム買ってゲームを快適にするシステム)で課金といってもジャンルやゲーム性によって様々。大きく分けて2つあり
・ガチャガチャ:訳『ガチャ』(一定量のアイテムラインナップの中でランダムでアイテム獲得する、稀少な物、効果が高いほど出にくい)
・月額、従量課金(決められた金額を払わないとできないゲーム、または一部利用できないサービスがある)
21世紀現在、細かく区分すれば多種多様なビジネスモデルが存在していて、ゲーム性に適した課金マーケティングをできるかが、長くゲームタイトルを存続させる1つの指標となっている。
ゲームが面白くとも、運営する会社や考え方でタイトル自体なくなることもザラだ。
課金する人にも課金に応じたランク付けが存在する、っというより自然にゲーム内外で周知されている。
・無課金(基本無料のゲームをお金を払わず遊べる範囲で遊ぶ、一部の人は無課金にプライドを持ってたりする。 0円
・微課金(微妙に課金することでゲーム全体を広く浅く遊べる。 〜数千円程度
・重課金(それなりに課金をして、ある程度好きなアイテムを手に入れ快適にゲームを遊ぶ。 〜数万円程度
・廃課金(欲しいものは必ず手に入れ、強くなる為にならお金も時間も惜しまずゲームを遊ぶ。 〜数十万〜数百万円超え
細かい情報は抜きにしても、2000年以前はコンシューマーゲーム(家庭用ゲーム機+ソフト)の物を買う時代から2000年以降は、体験を買う時代へシフトしてきた。
それがソーシャルゲームこと、ソシャゲの出現。
ソシャゲは、詳しく解説すると長くなるので簡単にいうと、携帯端末にアプリ、ソフトなどのデータをインストールし手軽に始められるゲームのことだ。
特に専用のゲーム機、ソフトなど機器を必要としないのが最大の特徴で大体は、基本プレイは無料だが、ゲーム内での課金が存在する。
キャラの装備、経験値増加系アイテム、スキル等々、、現実には存在しない【仮想世界のデータ=体験】を買う。
実際に現実では存在しない物=目に見えない物にお金を出す事自体に嫌悪感を抱く考えの人も少なからず存在する。
尚更、それがゲームというだけで冷たい視線をでみる人もいるくらい。
それも1つの価値観でしかなく、
元より、手軽に、どこでも、場所をもとらずと三拍子揃ったソシャゲが流行らない訳がなく、そんな時代の流れに漏れず、どっぷりハマっているジンであった。
『うーん。大体ゲームアプリランキングで上位のタイトルは、ほとんどやったし。
そもそも、上位ランクタイトルには廃課金様がいて微課金勢は肩身狭いしなー』
別に他人など気にしなくても自分が楽しめればいいのは分かってはいたが
ゲーム内では強さこそ絶対であり、強キャラプレイヤーの人気も注目度も高い。
なら課金すればいいじゃん?と思うが都会での一人暮らし、有名大学を出たわけではなく
22歳で就職し今年で社会人4年目。上がった給与も年5000円程度
管理職手当もつくわけでもない。
そんな心許ない給与から奨学金の返済などもあり。
何十万もゲームに課金する事はできない。
そんな分かりきってる事をブツブツとスマホにぶつけながらベットにスマホを投げる。
近くにあったタバコをくわえ、狭いが景色のいいベランダへ出る。
吸い始めたタバコの煙が夕日で赤く染まる。
しばらく黄昏ていると、近所の小学生達が楽しそうにスマホを覗きながら何やら盛り上がっている声が聞こえてきた。
『ケンちゃんの、装備強すぎで、ずるいよーいいなー!』
『内緒で課金しちゃったーー、ユウも内緒な!内緒にしてくれれば一緒にボス倒して装備GETするの手伝うからさー今の俺は強いぜ!!』
あーあ、時代を感じるよ、小学生が親の目を盗んで課金しちゃうんだもんなー。
恐るべしソシャゲの闇、、、まぁ最近は携帯のキャリアによっては親が契約時に子供の携帯の料金発生を制限したりと対策もあるわけで、少し前になるが子供が課金してたの後で知った親が運営元の会社を訴える事件などもあったりと何かと話題にはなってはいた。
自分とは関係ないニュースを思い出しながら遠くにある地平線に沈みそうな太陽を見つめていると
『ピッコーン!ッ』
ベットに上に放り投げたスマホが何かを受信したようだ。
タバコの火を消し近くの空き缶に入れ部屋にもどる。
スマホを手にとり画面を見つめる、見つめる、見つめる、、、
画面には【Yes】or【"No"】の選択肢のボタンと一緒に
【おめでとうございます。先行体験テスター様
あなたは、新しいゲームの先行体験のテスターとして選ばれました。
是非、当社の新作ゲーム【Kairos Online】をプレイしていただけないでしょうか?
テスターの皆様には特典として、お使いのスマートフォンと接続し意識をゲーム内にコンバートする『モバイル型VR:クロノス』の無償提供とゲーム内「限定アイテムをアカウントに付与」させていただきます。
なお、限定アイテムは今後、サービスが正式リリースされる際には消去されることはなく、テスター様限定のアイテムとして残り続けます、そして今後手に入る可能性はございません。
ただし、あまりにも今後のゲームバランスを崩してしまうと判断した場合に限り、調整または消去する事もございます。
その際は、該当のテスター様には最大限の恩恵をお約束するのでご容赦ください】
ジンはよくある怪しいサイトへの誘導かと思いつつも、今の生活に刺激も少なく、しかもこの通知の魅力的な部分は
テスター限定仕様のアイテムこれはかなり珍しいし、いくら後で課金したところで手に入らない点だ。
それに、【モバイル型VR:クロノス】は最近、ネットニュースランキング1位を総なめにした機器で一部の金持ち、YouTuberなどが何とか手に入れるレベルで一般人には高くてなかなか出回っていない代物だ。
このチャンスを逃せば手に入らない、、、人の真理をついた王道キャッチコピー!【限定】ジンにとっては最大級の売り文句だった。
っトン。気付けば画面の【Yes】ボタンをタップしていた。
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この時のジンは特に疑う事もなく、まだ見ぬゲームへの好奇心でいっぱいだった。
Yes or "No" の ホントウ の 選択肢 の 意味を。
"No"
" "
No
"
.
今後、ある程度のペースで連載を進めますので誤字、脱字など目立つとは思いますが暖かく見守りください。