表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

3話

誤字脱字間違いございましたらご連絡お願いします。

「ようこそ、ドライデン家へ。アビーと呼んでもいいでしょうか」

「お出迎えありがとうございます、私のことは何と呼んでいただいても構いません」

「ありがとうございます……じゃあアビー、用意が出来るまで僕とお茶にしましょうか」



 引っ越しで部屋に荷物を積み込んでいる間に庭でロニーとお茶を飲むことになった。木々が風に吹かれてサラサラとした音を奏でていた。庭で優雅に紅茶を飲む彼の姿はさながら絵画のよう。少しだけ見とれているとロニーが声をかけてかた。


「単刀直入に言いますが、今後アビーの血は飲まないつもりなので安心してください」



 ……今、何と言ったのだろうか?理解出来ずにアビーが瞬きしてどういうことか聞き返そうとしたときにタイミング悪く、ドライデン家の執事が声をかけてきた。家具などの搬入が終わったようだ。


 その後も聞く機会は無く、三日が過ぎた。血を飲めないということは自分達にとって食事が出来ないことと同等なので、倒れてもおかしくないのにも関わらず、体調不良が顔に出ていない。吸血しなくていいはずないのだが。

 吸血鬼は数が少ないので吸血鬼に関する本や情報も当然少ない。だから全てを知っている訳ではない……とは思うけれど吸血しなくてもいいという表記は見たことが無かった。


 吸血鬼のことは吸血鬼に聞いた方が手っ取り早いと考えたのだが、知り合いには吸血鬼はおらず、屋敷の使用人に一人いるらしいのだが見かけたことがないのだ。吸血鬼が治める領地なのでモンゴメリ領よりも吸血鬼は多いだろうし街中に行けば恐らく会えるのかもしれない。

 ロニーは夜に仕事をすることが多いらしく、今も執務室にいて仕事をしている。色々なことを考えて頭の中を整理したくなり、バルコニーに出て、暗い庭を眺めた。

その時、ガソゴソという音が聞こえた。何だろうと思って音の方に注目するとルビーのような赤い目をした、雪のように真っ白な髪をオールバックにした何かがネズミを片手に持ち口を寄せていた。

 アビーの体は固まってしまったが、何かを凝視すると、それは人のようだった。近くにあった灯りの弱い燭台を手に取りその方向に向かってかざすと口元が赤くなっているのが見えた。まるで吸血鬼のような……それがわかった途端にアビーは大きな悲鳴が出そうになった。

 相手は弱いが灯りをかざされたことでこちらに気付いたようで、アビーと目があうと表情に焦りを浮かべた。悲鳴をあげる前にアビーに近付き、口をふさいだ。



「静かにしろ……!俺は怪しいやつじゃない、落ち着け」



口をふさがれた瞬間にじたばたと暴れるが、向こうの力が相当なものだったようで暴れても意味がないことに気付き、ゆっくりと力を抜いた。



「俺は……ここの使用人だ。知ってるだろ、吸血鬼の使用人がいることは。俺は警備担当だから庭にいるんだ」



 なるほど、その言葉を聞いて納得した。この屋敷の人間が着けている使用人のピンバッジを確認出来たので叫ぶのは止めることにする。口から手を離され、身体が自由になると相手を観察する余裕が出来た。

 先ほどまで食事をしていたのか血が口元についていて生々しかった。なるべく目に入れないようにしながらハンカチを渡す。目の前の彼はハンカチを受け取り、口元を拭った。アビーの会いたかった吸血鬼の有識者の登場だ。


「……聞きたいことがあるのだけどいいでしょうか、あなたの主人にも関係することなのです」


「まあ、別にいいけどよ」



 今はどうせ暇だしな、なんて言ったその男は細いロウソク一本の薄暗い中でも分かるほどに顔立ちが整っているのが分かった。暗い中でも分かる白髪と爛々と輝く赤い瞳が自分たちと違う種族ということを思い知らせる。まだ生きてるネズミを地面に置くとネズミは勢いよく走って逃げだした。



「吸血鬼は結婚した人の血を吸わなくても生きていけるのでしょうか」

「そうだな……人間じゃなかったら動物の血も飲める、さっきの俺みたいに」

「そう……」

「その言い方だと奥様が血を飲まれてないみたいだが、別に気にしなくていいんじゃないのか?生きていけるんだから」

「せっかく夫婦になったのだし、夫のサポートをするのが良き妻としての役目でしょう。人間の血のほうが栄養になると聞きますから」

「ふーん、偉いじゃん」



 一つも偉いとは思ってなさそうな口ぶりでククッと笑う。少し気にくわない。



「……あなた、お名前はなんていうのでしょうか。あ、私も名乗っていませんでしたね。知っているかとは思いますが、私はアビー・ドライデンです」

「俺は……ブラッド。まあ、よろしく」

「あの、また会えますか。吸血鬼のことについて聞きたいことが色々とあるのです」



 じゃ、と言ってブラッドはそそくさとその場を去ろうとしたが、アビーの言葉に立ち止まり、まあ考えとく。と言って立ち去った。これはロニーのことを知れる良い機会だ、そう思って次の邂逅に胸を馳せた。



ブラッドがしたっぱなのに砕けてても気にしないのはアビーが吸血鬼に出会えて興奮しててタメ口なのに気付かなかったからです。


サブタイトルを3話に変えました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ