働き方改革、だって。
「おはようございます」
「おはよう」
国広さんは素っ気なく挨拶を返してくれて。自席へと向かった。
始業のベルが鳴るまであと10分。
もう少し笑顔で答えてくれると嬉しいのになとかそんな事もちょっと考える。
ここは小さな電気関係の会社で、家電から太陽光発電、お家のリフォームまで、なんでも取り扱ってる割と浅くて雑多なところ。
あたしはたまたま親戚の紹介で事務員として採用されて働き出して半年以上が過ぎたところ。
正直お給料にはあんまり期待はできないけどとりあえず残業とかもなくてわりとホワイトな職場。
先輩も優しいし、同僚ともうまくやれてる、かな。
国広さんは営業だけど、こちらはちょっとブラック、かも。
営業さんにはタイムカードも無いらしく、どれだけ働こうが残業も付かず、だ、とか。
お休みもあんまり取って無いみたいだし……。
そりゃ、あたし達と比べたらお給料も沢山貰ってるんだろうけど、それでも大変なんだろうなぁって漠然と考えてた。
沢山いる営業さんの中でも特に国広さんはお堅くて、あたし達事務員にも素っ気ない。
もっと軽い営業さんの方が人気があるかな。
あの後。
あたしは結局国広さんとタクシー相乗りして帰った。
お家の方向も同じだったみたいで、あたしを下ろしてから帰る国広さんを見送って。
あんな笑顔もできる人だったんだなって、その時はそう思ったんだけどな。
身の回りを掃除して給湯室を片付けてたらそろそろ朝礼だよって声がかかった。
今日は社長がこのフロアに来てたっけ。
ちょっと長くなるのかなとか思いつつ皆が集まってる場所まで行く。
まもなく朝礼が始まりいつもの連絡事項が話されてから社長の言葉になったんだけど。
「——と、言うことで、うちの会社も働き方改革を導入していくこととなった。この部署だと休日を消化していない営業職の面々に——」
え? 営業の人たちもお休みとれるようになるの? それは良いことだよねー。
「——事務職の者も営業補佐としてマンツーマンでチームを作り対応していってもらう——」
はい?
「この営業2課では岩下係長には榊さん。石山君には嶋原さん。清水君には牧さん。国広君には御浜さん。事務職のまとめとして全員の補佐を友坂さんでお願いします。当面平日に営業が交代で休日をとったときの顧客からの電話対応が出来るよう、各々パートナーの仕事の進捗を把握するように」
社長から交代した赤池課長が最後にそう締めて朝礼が終わった。