気がついた時。
気がついた時。
あたしはソファーで寝かされていた。
ふかふかのブランケットもかかってる。
ん、と声を漏らしたところで、
「大丈夫優香ちゃん、起きた?」
そう優しい声がして。
姫さんがこちらを覗き込んでた。
あたしはかーっと顔が火照って。両手を顔に当てて。
「ああ、ごめんなさいごめんなさい。あたし酔いつぶれてました? ああ、恥ずかしい……」
と、そこまでまくしたて。
暗くなった店内を把握すると、ほかに亜紀さんと……国広さん?
「ああ起きたか。このままおきなかったらどうしようって思ってたよ」と、亜紀。
「状況的に俺んち泊めるしかないかなぁとか考えてたんだけどねー」
えー。それはほんと申し訳ない……。
「そうねー。まあ亜紀ちゃんならいちおう女の子だし安全だしね」
「国広さんにお持ち帰りさせるわけにはいかないだろ流石に」
あー、それは困るよね流石に。
「せいぜいタクシーで送ってくくらいだよ。そんな流石に会社の同僚に同意なしでどうこうしたら、俺、クビになるんじゃない?」
「あははー、ぜんぜん信用できないよ拓海」
「それはないだろ? 姫宮。俺ってすごくお堅いって会社じゃ有名だよ?」
「そっか拓海はお堅いのか。それはいい事聞いた。ねー優香ちゃん、こいつの学生時代の話聞きたくない?」
「あは。聞きたいかもです」
「じゃ」
姫さんは立ち上がりこちらに手を伸ばして。
「お店はもう終わりだから。みんなでそこのラーメンでも食べに行こっか?」
あたしは姫さんの手につかまって。
姫さんのそんな提案に思いっきり頷いてソファーから立ち上がった。
エレベーターに乗り下まで降りるとまだ夜の街は終わってなかった。
外国の人、夜の蝶の人、そんな人たちがふらふらと舞って。
今の時間は夜中の2時。
もう地下鉄も無いか。
あたしは姫さんの後ろぴったりついて歩いて。
たどり着いた建物に入ったらそこはとんこつらーめんのお店だった。
頼んだラーメンはすっごく美味しくて。
っていうか、こうして食べるラーメンがすごく美味しくて。
笑顔の姫さん。
つん、とした亜紀さん。
そして柔らかい表情の国広さん。
不思議だなって。
こんなメンバーで食べる夜の食事がこんなに美味しいっていうのが、あたしにはすごく新鮮だった。
なんだか少し、この人たちの仲間に入れて貰えたような気もして。なんだか嬉しくて。