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もしも十年前に戻ったら  作者: 茶々
プロローグ 二週目の始まり
10/28

#10運命の再開


『河野くんが好きです。私と付き合ってください』


 林さんの泣いている顔が見える。


『河野くん、また明日学校でね』


 林さんの笑顔が見える。


『なんか河野くんおかしくない?』


 林さんの疑問を浮かべている顔が見える。


『転校…えっと、え?転校…』


 林さんの衝撃を受けた顔が見える。


『そっか、うん、知ってた…。ごめんね告白しちゃって…。本当に、ごめんね…。それじゃあ河野くん元気でね』


 林さんが泣きながら去っていく姿が…。




――――――――――――――――――



 夢を見た。

なんで今更夢に林さんが出てくるんだよ。

一年間一度も夢になんて出てこなかったのに。

こっちに帰ってきたからかな。きっとそうなんだろう。

僕は、林さんのことが好きなんだろうか。

今まで…、前回の人生を含めても人を本気で好きなになったことはない。だからわからない。

でもこれはきっとそうなんだろう。僕は、初めて本当の恋をしたんだろう。



 母方の祖父母の家に来た。

変わらず元気だった。前回の人生でも変わらずに元気だったので、本当に元気なんだと思う。すごいもんだ。結構な年のはずなのに。


「恭たちはこっちに帰ってこようとは思ってないのか?」


「うーん、俺はわかんないなぁ。颯は?」


「多分帰らないかな。向こうで行きたい高校も大学もあるし」


「そっか、まあまた遊びに来てな。いつでも歓迎するから」


「うん、ありがとう」


 そういって、僕たちは帰路に就いた。

電車で一時間もかからずに、父方の祖母の家に着く。

夜ご飯をごちそうになってきたので、帰ってきてからはもう寝るだけだ。

なので僕は寝る前に、宿題を進めておいてから、寝ることした。



―――――――――――――――――――



 また夢を見た。

林さんの夢だ。

学校や習字の教室でただ話していた時の夢。

僕にとって一番心安らいで、落ち着くことができた時間。

なんだかんだ習い事に勉強など、前回の後悔を払拭するために頑張り続けていた。

そんな中で、唯一安らかになれた時間を作ってくれた人、それが林さんだ。僕はそんな林さんのことが好きになっていたのだろうか。

告白されたとき、とても嬉しかったのを覚えている。なのに僕は断って林さんを泣かせてしまっていた。

あの時の選択は、正解だったのだろうか。それはずっとわからない。



――――――――――――――――――



 今日は特に予定はない。

なので、僕は一人で、ふらつくことにした。

懐かしい、公園や学校。

それを見ながら歩いているだけでも結構楽しい。


「ピアノの教室か、懐かしいな」


 なんだかんだで引っ越してから一年。

大体のものを懐かしいと思うぐらいには、時間がたっていた。


「この公園…」


 引っ越す前の最後の登校日。林さんに告白された公園だ。


「あれから一年か」


 とても最近のことに思ってしまう。

きっと夢に出てきたからだろう。


 林さんとの日々を思い出しながら歩いているとふと見覚えのある景色の場所に来ていた。


「習字教室…」


 僕と林さんが一番話した場所。

林さんはまだ続けているのだろうか。そんなことが気になってしまう。

林さんは僕と違って、習字がとてもうまかった。

僕は字が下手なのでダメダメだったが…。習字を一年ちょっとぐらいやったおかげで普通にうまいぐらいの字を書けるようにはなっていたが。

林さんは賞を受賞したりと、本当にうまい人だった。

だから、まだ続けているだろう。そんな気がする。


「河野くん…?」


 心臓が高鳴った。

ゆっくりと後ろを振り返る。


「林さん…」


 振り返ったそこには、林さんがいた。


「久しぶりだね、元気だった?」


 林さんが、問いかけてくる。

何を話せばいいんだろう。前回林さんと会ったのは、あの日だ。

そして最後に見た林さんの顔は泣き顔だった。

僕が泣かせていたんだ。それなのに、林さんは普通に話しかけてくる。

僕は、何を言えば。


「えっと、うん。久しぶり。変わらず元気だよ」


 無理に普通を取り繕う。


「私の事覚えててくれたんだね。よかった」


「そりゃあ覚えてるよ、たった一年だしね」


「そっか一年。あれから一年たったんだ…」


「林さん?」


 林さんがうつむいてしまう。きっと林さんも普通を作っているのだろう。僕と同じで。


「河野くん、なんか大人っぽくなったね。身長も伸びてるし」


「そうかなぁ、まあ身長は結構伸びたんだけどね。そういう林さんこそ、その、綺麗になったね」


 僕は素直に思ったことを言う。

もともと林さんは整った顔立ちをしていた。

それが一年たって綺麗だ、と思えるぐらいに美人になっていた。本当に中二か?と疑いたくなるぐらいには。


「え…、えっとありがと、恥ずかしいな…そんな風に言われると…」


「これから習字なの?」


「ううん、今日はこれを提出しに来ただけ」


 そういって、半紙を見せてくる。

林さんはここで書道も習っているようだ。

小学生の時は習字だけだったが、書道も始めたのだろう。


「相変わらず上手だね。前よりさらにきれいな字になってる」


「ふふ、ありがと、あれからずっと続けてたからね。河野くんもまだ続けてるの?」


「いや、習字はやめちゃったんだ、中学になって部活とか勉強が忙しくて。習い事はピアノと英語と塾しかやってない」


「まあそれだけのことを続けられるだけで凄いんだけどね…。河野くんは相変わらずだなぁ」


 そういって林さんは、笑う。

僕はその笑顔を見て、少し、いや、だいぶ見惚れてしまった。


「ど、どうしたのじっと見て…、顔になんかついてる…?」


「ご、ごめん、特になんもついてないから安心して」


「そう?よかった」


 少し会話が途切れる。


「あのさ、林さん」


「なに?」


「この後時間ある?少し話がしたい」


「大丈夫だけど、話って…?あ、うん分かった」


 林さんは話の内容を聞こうとしたが、僕の表情を見て、すぐに理解してくれた。

一年前に話しきれなかったことを話そうとしているということを。


「とりあえずこれ提出してくるね。せっかくだし挨拶していく?」


「あ、いいね、急に訪ねて楠先生を驚かせちゃおうか」


 僕たちは習字の教室内に一緒に入っていった。あの時みたいに。




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