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テンプレ通りの展開 〜如月くんと武藤さんの場合〜

作者: 陽乃優一
掲載日:2018/06/10

テンプレの限界に挑戦してみました。

 それは、テンプレだった。


「申し訳ありません、いずれの契約も成立しておりまして…」

「えっ」

「えっ」


 手違いだった。重複だった。ダブルブッキングだった。


 この春から一人暮らしを始めようとアパートを借り、さあ引っ越しだとトラックで乗り付けたまではいいのだが、もう一台、似たようなトラックが到着していて荷物を運び込もうとしていたのである。


 これを、テンプレと言わずしてなんとする。


「君はどうする? 明日から学校なんだろ?」

「それはあなたも同じでしょ? 同じ学校なんだから」

「そうなんだよなあ…」


 …


「まあ、テンプレ通りにいこうか」

「そうね、他に行くところもないし」


 そういうわけで、同居することにした。どちらかが別の場所に引っ越せるまで。


 明日から高校1年の、如月(きさらぎ)純也(じゅんや)。15歳、男。

 明日から高校1年の、武藤(むとう)秋穂(あきほ)。15歳、女。


 ちなみに、親には内緒である。知られたら面倒だから。

 もちろん、これもテンプレである。



 引っ越し当日。


「ねえ、冷蔵庫がふたつで邪魔なんだけど」

「そうだなあ。俺の小さいのはとりあえずベランダに置いておくか」

「じゃあ、私のを一緒に使おっか。あ、私のプリン取らないでね」

「取らないって。俺のチョココロネも取らないでくれよ」

「やだ。おいしそうだから、夜ゴハンの出前の後にちょうだい」

「おい」



 入学式の日。


「ああ、クラスも同じだったか」

「そうね、よろしく」

「武藤、クラスメートにもあのことは内緒な」

「もちろん」

「あ、弁当代貸してくれ。金を下ろし忘れて財布に二百円しか残っていない」

「しょうがないなあ。明日返してよ?」

「ああ、ありがとう」



 最初のHR。


「あ、席が隣か。よろしくな」

「よろしくー。ところで、消しゴムを忘れたから貸してくれない?」

「いいよ、ほい」

「新品かあ。後で新しいの買って返すね」

「いいよ、そこまで」

「まあまあ。この後、購買で買って渡すから」

「そこまで言うなら」



 放課後。


「なあ武藤、帰りにスーパーに寄ってかないか? 冷蔵庫を充実させたい」

「そのココロは?」

「スーパーのATMで金下ろして、武藤への借金を早く返済したい」

「明日でもいいのに。でも、卵がなかったよね。行こっか」

「ああ。ついでに、チョココロネの補充を」

「プリンもね」



 夕食後。


「はー、カレーライスうまかった」

「お粗末さま。明日は如月くんが作ってくれない?」

「ああ、いいよ。チャーハンでいいか?」

「えー、他にもおかずがほしい」

「じゃあ、レバニラ炒めもつける。今日、食材を買っておいた」

「よろしい。明日はパンでいい?」

「ああ、いいぜ。ウィンナーもほしいな」

「残念、ベーコンしかないよ」

「残念」



 クラブ活動の見学。


「武藤はどっか入るのか?」

「入ろうと思ってたんだけど、夕食作る時間がなくなりそうなんだよね」

「ああ、なるほど。俺もやめとこうかな」

「じゃあ、夕食当番の交代制は継続?」

「だな。今日はなんだ?」

「ハンバーグカレー」

「カレー好きかよ」



 最初の週末。


「ふわあ…おはよ」

「おはよ。もう10時だよ?」

「実家にいた時は、12時まで寝てたなあ」

「寝すぎ。まあ、私もさっき起きたところだけど」

「じゃあ、メシどっか食べに行かないか? ブランチってやつだ」

「いいわね。交代制のおかげで食費安く済んでるし」

「だな」



 近所の散策。


「あ、この公園、落ち着けそう」

「そうか? 夏には虫が湧きそうだ」

「虫除けスプレーを持っていけばおっけー」

「そこまでして…。あ、屋台が出てる。また来よう」

「現金ねー」



 ある日の夜


「この問題わからん…教えて」

「だーめ、自分でやらないと宿題にならないよ」

「くそー」

「あ、ここわかんない。教えて」

「おい」

「ヒントでいいからー」

「こっちのヒントと交換な」

「おっけー」



 ゴールデンウィーク初日。


「ヒマだ…」

「ヒマね…」

「帰省しないのか?」

「電車賃が高い。如月くんは?」

「同じく。連休前に友達と遊ぶ約束しておけば良かった…」

「え、如月くん、そういう友達いたの?」

「いや、だから、そういう友達を作っておけばなと」

「さみしいわねー」

「そういう武藤は?」

「以下同文」

「やっぱりかー。じゃあ、隣町のテーマパークでもいくか」

「混んでるよ?」

「行くだけ行ってみようぜ」

「まあ、ヒマだし…」



 ゴールデンウィーク最終日。


「よっしゃー、ガチャ成功! SSRだぜ!」

「いいなー、私はRしか出ない…」

「気合いが違うのだよ、気合いが」

「具体的には?」

「課金額」

「ちょっと、夕食代まで使ったとか言わないでよ?」

「大丈夫だ、まだ冷蔵庫に食材がたっぷりある」

「一週間後あたりが不安なんだけど」



 最初の定期試験。


「どうだった?」

「可もなく不可もなく。武藤は?」

「同じかな、平均並」

「そっか。じゃあ、打ち上げ行こうぜ」

「そうね。…あれ? クラスに誰もいない」

「え、カラオケ置いていかれた? ぐっすん」

「乗り遅れたー。如月くんのせいだからねー」

「なんでだよ。まあいいや、今日はぱーっとファミレスでメシにしようぜ」

「サイ◯リアがいい。安いから」

「でも俺、現金ない。Su◯ca使えるとこがいい」

「カラオケ行くつもりじゃなかったの? あの店現金だけだよ?」

「また武藤に借りるつもりだった」

「もう…。じゃあ、ロ◯ホね」

「おっけー。今日はシーフードだ!」



 体育大会。


「リレー、おつかれー」

「本当だよ、疲れたよ。めしー」

「はい、重箱で詰めてきたよ」

「おお。いつもの弁当の量じゃ足りなかったところだぜ!」

「そう言うと思ったから。でも、明日は三食、如月くんが作る約束だよ?」

「わーってるって。いただきまーす」



 プールの授業初日。


「あれ、それって昨日買ったやつと違うよな?」

「ああ、あれは外出用。こっちは実務用」

「色気ないなー」

「いいじゃない、どうせ見る人いないし」

「俺が見てるじゃん」

「数のうちに入らない」

「ひでー。あ、集合だ」

「ちょっと、走ると滑るよ?」



 夏休み初日。


「さすがに帰省だなー。墓参りするだろうし」

「そうだねー。駅まで一緒に行く?」

「ああ。荷物持ってやるぜ!」

「駅までねー」



 夏休み中。


『なー、なにしてるー』

『高校野球なう』

『だよなー。よっしゃ、打った!』

『え、如月くん、そっち応援してるの?』

『従兄弟が出てるんだよ』

『私は、お父さんが◯◯高校出身だから』

『負けるなー、××高校!』

『敵側の応援L◯NEで送ってこないでよ』



 夏休み最終日。


「おー、武藤、焼けたなー」

「如月くんこそー。海、行ったの?」

「いや、ずっと草むしり。武藤は?」

「お父さんに釣りに付き合わされまくった…」

「御愁傷様。あ、実家から宅配でスイカ送ってきてるぜ」

「本当!? 食べ納めだね!」



 夏休み明け小テスト。


「上位だった」

「俺も」

「夏休み中、やることなかったものねー」

「夏祭り、行きたかった…」

「私の実家のところもやってないのよね」

「よし、来年は帰省せず、学校近くの神社に行くぜ!」

「親不孝ものー」

「じゃあ、武藤は帰省な」

「いけずー」



 文化祭。


「おー、エプロン似合うじゃん」

「そりゃあ、毎日付けてるし。如月くんの、それは何」

「メイドだ!」

「メイド」

「そう、メイド」

「メイドさーん、『もえもえキュン』やってー」

「いやでーす」



 クリスマスイブ。


「今年もひとりかー」

「私がいるじゃなーい」

「同居人とケーキ食べてもなー。ほれ、あーん」

「あーん。あら,おいしい。こっちのあげる」

「もぐもぐ。どっちもうまいな。ホールで買ってくれば良かったか?」

「ふたりじゃ食べ切れないわよ…」



 大晦日。


「両親がはわーいとか行くから帰ってくるなって…」

「しょうがない、私も残るよ。初詣一緒に行ってあげる」

「おお、武藤大明神様!」

「崇めるが良い」

「じゃあ、そば買ってくる」

「生そばにしてよ?」

「まかせとけー」



 初詣。


「着物、着たかったなー」

「実家にはあるのか?」

「まあね。送ってもらうのも変だし」

「でもよー、あれって歩きにくくないか?」

「それも着物の醍醐味よ。あ、おみくじ買お」

「おう。…やったー、大吉!」

「大凶…どうすればいいのよこれ」

「木に結べばいいんじゃね?」

「これって、どういう意味があるんだっけ」

「さあ?」



 学年末試験。


「進級確定!」

「私もよー!」

「よっしゃ、打ち上げだ打ち上げ!」

「そうだね! って、また誰もいなくなった」

「なんだろうな。まあいいや、ポテチ買っていこうぜ」

「太るからイヤ」

「じゃあ、コーラ1リットル」

「もっとイヤ」



 春休み。


「宿題がない長期休業っていいな!」

「ほんとねー。でも、帰省するには中途半端だけど」

「じゃあ、またどっか行くか」

「あのテーマパークはイヤだよ?」

「じゃあ、ショッピングモール。新しくできたとこ」

「いいわね、何度言っても楽しめそうだし」

「あと、映画な」

「そうだね」



 ピロロロロロロ


「如月くーん、スマホの電話鳴ってるよー」

「おー。…もしもし? ああ、親父…。うん…うん…。…えっ、いや、そんなことは…。あ、ああ。じゃあ、そういうことで」


 ピッ


「実家から? なんだったの?」

「い、いや、ただの挨拶、かな。また来年度学校がんばれって」

「そっかー」


 ポロロロロロロ


「今度は武藤のが鳴ってるな」

「鳴る時は続けて鳴るものなんだね。もしもし? あ、お母さん…。…まあね、うん。…もちろんだよ、だから…。…うん、うんうん。それじゃね」


 ピッ


「武藤も実家からか?」

「ま、まあね。あれから一年経ったねって」

「そっかー」


 …


「そういえばさ、このアパートの契約見直しって、いつ頃だったっけ?」

「え? …あー、1月だったはずだよ? もう、自動延長になってると思う」

「そっかー。じゃあ、来年度もこのままかー」

「それしかないねー。あ、今日の夕食当番、忘れないでよ?」

「わかってるって。あれ、米がなくなってたような」

「じゃあ、スーパーに買いに行く?」

「ああ。暗くならないうちに行こうぜ」

「うん」


 …

 ………

 …………


<<はあ…この一年、何も進展なかったなあ。一目惚れだったのに…。来年度こそは、テンプレ通りに…!>>

ところで、テンプレってなんでしたっけ(おい)。

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