先輩と後輩というものは
正直、馬鹿だとも思うし、羨ましいなと思った。
夜の道を歩きながら、今日の放課後のことを思い返す。
今日の帰り、なんとも珍しい元生物部員3人と帰った。といっても琳湖はご近所さんだから、そこそこ良く帰るんだけど。
なんとなく、塾が始まる前までと言って自分のクラスで勉強していた。
そんな時、ものすごく不機嫌そうな顔の琳湖と部長くん、それにかすみちゃん、金髪美青年くん…ではなく、清水くんが入ってきた
話を聞いたら、部の新顧問が、独裁し始めたとか。
清水くんはそれについて、正直引退していてよかったと言った。まぁ、当たり前だろう。それについてはあの部活と後輩大好き琳湖でさえも納得していた。
私だってその立場だったら引退してよかった、って絶対思う。
でも、皆、それで心配だからとか、そういう理由で後輩のために行動するのは正直馬鹿なんじゃないかとも思ったし、でもなんとなく、私が後輩だったら嬉しいかもしれないとも思った。
第1、私だって勿論自分の後輩のことは好きだ。
只、生意気だったり、タメ口だったり…そういう子はあまり好きになれない。
駅についてかすみちゃんと部長くんと別れ、琳湖と同じ電車に乗った時、私は彼女に話した。
あんたらは凄いよって。
私だって何度でもいうけれど、後輩は好きだ。大好き。
普通に話すし、普通に一緒にオンラインゲームだってするし。
それでも、多分一線は引いている。いい意味でも悪い意味でも。
それに、いくらすきでも、そうまでして後輩のために動くことは出来ない、と。
そう私が言うと琳湖は、
まぁ、普通はそうでしょう。と笑いながら言った。
それから、でも、といい、続けた。
うちの部活のヤツらそんな奴ばっかだから。先代だってそうだったでしょ?
ああ、確かに。そんな人達ばっか集まってたよ。
私たちの一つ上、今年の春卒業していった先輩。
琳湖が仲いいのと、私もある1人の生物部の先輩とは、漫研が一緒で趣味も合うしでよく話していた。そのため、生物部の一つ上の先輩方とはちょくちょく話す機会があった。
あの人達も、そういえば琳湖たちとおんなじようなことをしていた。
部活引退後も、最初の定期試験が来る前までは本当に定期的に、生物部に遊びに行っている姿を、私は幾度となく見た。
その先輩達と同じように彼女達もなったのだろう。
…羨ましいよ。後輩のためにそんなにも尽くそうとするなんて。
その後はほとんど会話もなく、電車から降り、別れた。
その後はひたすら私は塾で勉強していたわけだが…
家に帰り、制服から着替えると、すぐにベッドに埋もれた。
そうすると上から愛犬が私の上に乗ってくる。
「どうしたの、リリ」
頭を撫でてやると、とても喜ぶ。そんな姿が愛らしく、ついつい頬が緩んでしまう。
「ねぇ、リリ」
愛犬に声をかける。するとどことなくキョトンとしているような顔をし、リリはワンとだけ鳴いた。
「私の友人達は、すっごい馬鹿なの
それでもね、すごい良いなと思えるし、羨ましいの」
その昔。私は私の代への先輩からのいじめと、同期間の仲の悪化で、一度私は部活をやめていた。
次に部活に入ったのは高一で、その部活にはほとんど先輩がいなかった。
いい先輩ではあったけど、やはり、どこか壁を感じた。なんとなくそれは寂しかった。
「…私は、先輩にするならああいう奴らがいいかな。少し、面倒くさそうな人たちだけど。
悪くはなさそうじゃん…」
そう呟き、瞼を閉じる。
「…しっかり後輩と話して、すれ違うことがないようにね…
頑張れ、生物部」
たまに思う。
実験は苦手だし、あまりやりたくないけど、なんとなく生物部は楽しそうだし、ちょっと入ってみたかったかもと。
先輩と後輩、なのにほとんど壁がないあの環境は、とても羨ましいから…