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はばたけ雛鳥  作者: 海鈴
8/15

苦悩するOBとOG

「イミ分かんないーーー!!!」


そう、学校の最上階の最も端にある、3-4のクラスで三村が叫ぶ。

煩い…と地毛である金髪を、煩わしそうに揺らす、俺達の代の元副部長、清水明日が呟く。


「いきなり叫ばれても全く意味がわからんのだがぁ…?どしたの」


と、肩までの髪を邪魔そうにのけつつ問うのは、元漫研会長、新浜律花。

塾が始まるまで時間があるし暇だから、と一人クラスに残り勉強をしていた所に、俺たちが来たのと、三村が如何にも怒っていると言った表情をしていたため、話しなら聞くよ?と声をかけてくれた、いい人だ。


__あの後

俺たちはとりあえず部誌を配り、生物室を出た。その時丁度、元顧問の御山先生に用があるとかで御山先生を探していた明日に部屋の前で会った。

生物室から漂う空気から何となく察したらしく、御山先生は後で探すから、どうしてこんな空気になっているのか、話してくれない?と聞いてきたため、それじゃあ話せる場所に行こうと言うことになった。

その際、3-4に忘れ物をしたと卯月が言い出し、3-4なら自習してる人もほとんどいないし…というわけで3-4で集まることになった。


三村は興奮していて、説明が説明になっていなかったたて代わりに俺と卯月が二人に説明すると、新浜はうっへぇ…と声をだしながら何処と無くちょっと憐れむような表情に、明日は苦虫を噛み潰したような顔をしていた。


「別にさ、自主研究班がまだ決まってなかったり、研究が全然進んでない…ってことなら、勝手に決められてもまぁまぁ…と少しは許せたよ!だって、終わりそうのないのが悪いから」


と三村が声を荒らげつつ話す。


「でも!私ちょくちょく後輩ちゃんと話すから知ってるけど、各班研究はちょっとずつではあるれど、確実に進んできてるのに!

そんな中で勝手に班を決められるなんて…!!

あとうちの部活に今年はそんなお金はありません!」

「あー…今年いくらだっけ。10万?」

「そうだよ。10万。去年の半分以下」

「まぁ、そういうタイプのカメラは…高いよなぁ…私、部活自体は元々写真部だったからそれはわかるよ…しかも2台か…」


うっはぁー…と新浜は呆れたような顔をした。金額を想像して居るのか、その時の目は死んでいた。


「…そういう事であんな好きな雰囲気が悪かったのか。生物室

最悪。俺、もう少し部活に居たいとか、正直思ってた。だけど後輩には悪いこと言うようで悪いけどさ、今回の件見たら正直引退していてよかったと思う

それ位、最悪だな」


そう明日がいう。それに対し卯月も、三村も、正直それは同感だ、と言う。

悪い空気の部活は、誰だって嫌なものだ。


「…とはいっても、気になるよな、後輩…」


そう俺がつぶやくと、三人ともうなづいた。新浜はそんな俺たちを見て、あんたらの後輩愛凄いわ…とボソリと呟く。


「そりゃ気になるよ」


三村が言う。そして、続けて彼女はとある後輩についてはなし始めた。


「…今の中3、ちょっと前まで仲悪かったでしょ?そん時さ、霞月麗奈ちゃん、部活全然来てなかったでしょ?」


それを聞いてうなずく。


「今はさ、もう皆落ち着いて、霞月ちゃんも部活、来るようになっていたの

今日、生物室に入った時、最初に話したんだけど今は部活楽しくできてるんだって。来てない時、保健室で話していた彼女と違うくらい、楽しそうに答えてくれたよ

…なのにさ」


そこで一度三村は言葉を切り、俯く。

少し間を開け再び俺たちの方を見て、話を続けた。


「今回、先生が勝手に決めたのを見て、心配になってちょっと話してたら『やっと戻ってこれてあれだけど…また、部活に来たくなくなりました…』って言うの…折角楽しんでこれるようになったのに、あんまりだよ」


いつになく、三村は落ち込む。それもそうだろう。霞月さんは三村が特に気にして見ていた後輩の1人だ。

そんな後輩がやっと部活に来て楽しめるようになってたのに、また前のように来なくなるのは…


「なんか、私たちに出来ること、あるかな?引退してはいるけど、少しだけでも…

少なくとも、こんな空気のままじゃいけないよ

これから中一さんたちが入ってくるのにさ」


そう、卯月が言う。

それに対し、明日が返した。


「とりあえず、今日はもう金曜だし、今週はもう部活はないけれど、来週以降ちょくちょく様子見に行って、一人一人話を聞くってのでどうなの?

とりあえず俺はそろそろ行かなきゃダメだから行くわ

じゃ、決めたらLIMEでもなんでもいいから伝えてよね」


そういい、明日が教室から出ていく。

まあ、そうだ。みんなの意見をしっかり聞かないことには何もできないだろうし…

もしかしたら、今からでも部長と話し合って落ち着いていくってこともあるだろうし、様子見に行く、ってだけでもいいかもしれない。


「じゃあ、来週からちょくちょく様子見に行こうか…今日と同じく金曜日でいい?」

「いいよ」

「後輩にあえるならいつでもー」

「うん、それじゃあ金曜日で」

「とりあえず行くのは良いけど、琳湖、盛長先生嫌いって言うのを全身に出さないでね?さっきだって部誌、なんも説明もなしに渡したんだから」

「流石琳湖、すぐ行動に出る」


新浜と、卯月がそう言うと、大丈夫だ問題ない。とキリっとした表情で三村が言う。

そういう訳で来週から、少し様子を見に行くことになった。

そんな俺たちに対して、まとまったなら良かったよ。悪くない方向に行かないように応援はしてるから、と新浜が声をかけてきた。本当に、いい人だな、新浜は。

三村が、んー!と声をもらしながら伸びをし、荷物を手に取った。


「さて、じゃあ帰るか!」

「あっ、まって私も帰るわ」

「はいはーい待ってるからりっかはよしてねぇー!」

「…帰り、賑やかになりそうだな」

「そうだねぇ」


流れで、四人で帰ることになった。

帰り、怒りが収まらない三村が生物部とは何かを語り、前を見ずに歩いたせいで溝に落ちたのはまた別のお話。

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