織物の町
【織物の町】
買出しの前にに、今回の商いやステインから預かった魔石の換金を済ませるために、商業ギルドへと向かう。
エムファスは恐ろ・・、じゃなく、素敵な笑みを浮かべ、出迎えてくれる。
「一瞬、へんな事を思わなかったかしら?」
「い、いえいえ、そんな事はまったくもってありませんよ」
恐るべし商業ギルドの商人・・、乾いた笑みで誤魔化すしかなかった。
「何時も通り、良い品物ね」
胡椒や砂糖、金属といった商品を見て喜んでいる。
「それでこちらが、今回の新しい商品です」
自分のユニオンの分と、ステインが持っていた分の二箱取り出す。
「へぇー、随分大きな箱に入れて持ってきたのね。まあ遠距離なら仕方ないか」
「・・えっ!?」
エムファスの言葉に、思わず驚くと言う失態を再び繰り返してしまう。
「オプファ君? 今の『えっ!?』って何かしら? 『えっ!?』ってどう言う意味かしら? 新しい商品って、この間の話から魔石よね? 間違いないわよね?」
可愛らしく首を傾げる姿なのに、聞きとがめた彼女の表情から笑みがなくなり、僕の心と、精神を抉ってくる。
「ち、ちなみにお聞きしますが? 随分大きな箱と遠距離の意味は?」
「・・・ ・・魔石というのは、傷や欠けたり、割れると質が下がるの。魔石はかなりの固さだから、そう簡単に傷が入ったり、欠けたり、割れたりはしないわ。でもね同じ魔石同士だったらどう思う?」
「そっか・・。同じ固さだから、ぶつかったりすると割れたり、傷ついたり、欠ける可能性があるんですね」
「その通り。ぶつからないように梱包されてるんだけど、遠距離だから一個一個丁寧にしっかりと梱包しているのかしら?と思ったのよ?」
「なる程・・」
やばい、やばすぎる。さっき箱だけ買ってザラッと入れてしまった。
「じゃあご開帳!」
「ちょっと待った!?」
考え事をしている間に、エムファスに魔石の箱の蓋を取られてしまった。
が、すぐに蓋が閉められ、僕の首も絞め始める。
「てめぇ! 何て事してくれるんだ! 全く梱包されてねぇじゃねぇか!」
「ず、ずびばぜん・・」
ぐいぐい締め上げるのを、傍にいた職員が止める事はなかった。
「エムファス! そんなのに構っている暇はないわ!」
「そうね! 手が空いてる職員は、魔石用の梱包材をありったけ持ってきて、梱包を手伝って頂戴!」
「他にも傷や欠け、割れがないか慎重に、且つ丁寧に調べて!」
商業ギルドでは、他の業務が一時中断されるなど大騒ぎとなっていた。
僕はそのまま床に放り出され、床の上でも邪魔と壁の隅に追いやられ、小さくなりガクブルしながら、作業が終わるのを待つしかなかった。
一通り作業が終わり、商業ギルドが落ち着くと、今度は僕が落ち着かない。
こっそり逃げ出せば良かったのだが、、狂喜の笑みで魔石を透かして調べる職員たちは、さながら魂を見せ合う悪魔の宴・・その雰囲気に当てられて全く動けなかった。
そして今、僕は正座をさせられ、正面に仁王立ちのエムファス、周囲を商業ギルドの職員が取り囲んでいるから。
これで交互に蹴りでも入れられれば、虐めの現場にしか見えない。
「オプファ? あなたは何をしたか分かっている?」
エムファスが腕を組み、見下ろししながら問いかける。
「えーっと、魔石をざっらっと一箱にまとめ、運びました・・」
だだん!
びくっ
職員たちがその場で、足を床を一蹴りする音に、全身をビビらせる。
「分からないようようだから、骨身に染み込ませて上げる」
「ひぃぃぃぃぃー」
エムファスが目をひん剥いて、わざわざ下から覗き込んでくる。
「もう脳みそに焼き付けたわよね? 魔石は固いけど、同じ固さのものがぶつかり合えば、傷つき、欠け、割れる。一番は魔石同士が上げられるわ」
「はい・・」
「傷つき、欠け、割れた物は質が下がる」
「はい・・」
ここからが本題、つまりあなたの罪を暴きます、と言って話し始める。
「魔石って言うのは希少で貴重なの」
「・・・えっ!?」
「あ゛あぁ!?」
「ひぃぃぃー、すびまぜん」
一瞬で般若の顔になったり、職員の顔になったりとコロコロと表情が変わる。
「希少で貴重だから、無属性の魔石を加工して、色々な属性を与えるの。これが出来るのが魔法使いや錬金術師といった人々よ。魔石技師と呼ばれる事もあるわ」
「へぇー・・」
「魔石は大きさや質によって、持続性や威力が変わってくる。しかし残念ながら加工した魔石は、天然物の半分程度の性能しか出ない」
「そうなんですか・・」
「そんな手間と暇と金を掛けた物しか、このバーシスには届かない! 分かってんのかぁ? ごらぁ!?」
「ひぃっ!?」
大した関心を示さず下を向いて返事をすれば、再び下から覗き込みまれる。
「そんな天然の魔石を、お前は無属性、有属性、大きさ、質を全く関係なく、一纏めにしたな?」
「はい・・」
「今回運よく傷一つなく、欠けも割れた物もなかったが・・、もしも一番安い無属性が、一番高価な有属性を傷つけていたら・・」
「・・傷つけていたら?」
ゴクリと唾を呑み込む。
「・・・ ・・・ ・・・覚えてろよ?」
そこは何も考えてなかったのかよ!と、あくまでも心の中で突っ込む。
何もないのは良い事なので、表面上は神妙な顔で頷くだけの理性は働かせる。
精神的に追い詰められて、ユニオンに帰ると、メインズも既に帰ってきており、ステインの話を、きちんと皆に話したのだ。
「それでステインには薬師見習いとして、ユニオンに参加してもらおうと思っています」
「ふむ、トロナちゃん一人に責任を負わせるのは酷な話だ」
「ただ薬師になるためには、やはり薬草の知識は重要だよね?」
「もちろんよ」
「なので、しばらくは僕やメインズさんと薬草採取をしながら、薬草について勉強してもらおうと思うんだ」
「そうね。それは良いアイデアだわ」
「はいっす!」
僕の言葉にトロナが頷いており、メインズさんもステインも特に異はないようだ。
薬草と言えば、先ほど商業ギルドで折檻の後に、さらっと話しがあった事を伝える。
「そうだ、皆」
「どうしたの、オプファ?」
「薬草園の事なんだけど、薬草学の先生が決まったらしくて、ユニオンの誰かが代表で行くか、それともこちらに来てもらうかって話しがあるんだ」
「ほぉ。それで?」
「まだユニオンには空き部屋もあるし、来てもらった方が四人で講習を受けられると思うんだけどう?」
「良いんじゃない?」
メインズも頷いているが、一人ステインだけが話しについていけない。
「この建物の庭に薬草園・・、と言うか薬草を植える計画をしててね・・」
この町を取り巻く薬草不足の状況を説明する。
「凄いす! 安全、確実に薬草を入手できる方法なんて!」
「広さが広さだから、量はそんなに取れないし、上手くいくか分からない実験的な要素もあるからね」
「それでもす!」
魔石の町周辺では薬草は生えず、ポーターしか選択肢のなかったステインにとって、薬草園は夢のような場所なのだろう。
絶対に成功すると疑わない程の興奮に、皆が苦笑いである。
薬草園の話を詰めるために、再び商業ギルドに顔を出す。
「・・魔石は?」
「・・取り扱い注意。厳重個別梱包」
「よろしい。肝に銘じるように」
「はい・・」
エムファスからは、商談の前に、魔石に関する合言葉のやり取りが増やされていた。
「それで今日は何の用かしら?」
「薬草園の、薬草学の先生との話の最終調整に」
「はい、はーい」
一瞬で雰囲気と表情を切り替えて、紙とペンを取り出す。
「えーっと、先生の所に行くの? 来てもらうの?」
「来てもらって、生徒は一応四名でお願いします」
「そう四名ね・・、四名!? もう一人って誰?」
「実は・・」
取引先の旅団の人が、ステインを助け、メインズのように託したいと話に変えて、魔石の町であった事を話して聞かせる。
「冒険者ギルドって、どの町でも腐っているのね」
「ま、まあ、その町その町のやり方がありますし、環境も違いますから・・」
被害者の自分が何でと思いながら、表情の消えたエムファスを取り成す。
公正を旨とする商業ギルドに身を置くエムファスとしては許せないらしい。
「本人が戦闘職よりも、生産職を望んでいますので、薬師見習いで、先ず薬草を覚えるために、薬草採取をしてもらいます」
「ついでと言っては何だけど、薬草学も学べるし、良い機会だと思うわ」
「皆もそう思っています」
「それなら尚の事、話を早く進めたほうが良いわね」
「でも彼自身まだ薬草に触ったばかりなので、逆にもう少し余裕があったほうが良いと思うのですが?」
「それは言えるわね・・。まあ、話を詰めて、来てもらうのにまだ時間がかかるから、ちょうど良いかもね」
エムファスは、テキパキと話を纏めて行く。
「えーっと、こちらに来てもらうと言うことは・・」
「ユニオンの空き部屋に寝泊りしてもらいたいと言う事と、食事はこちらで用意しますが、屋台街の出来合いのものである事をお伝え下さい」
「分かったわ。その辺は向こうも了承済みだから大丈夫よ」
「他に何か問題がありますか?」
「もしかしたらだけど・・」
珍しく口篭る彼女である。
「何ですか?」
「教材の値段って結構するのよ。そこで向こうに何人行こうが、必要な教材を一人分いいかしか聞いたらOKって言われてて、一人分しか頼んでいないのよ」
「こちらで授業を受けるのに問題がありますか?」
「それは無いんだけど、ユニオンの皆が欲しいと言うなら揃えないと・・」
「なる程・・」
この勉強は後々、皆の役に立つ。
「エムファスさん、四人分至急揃えてください」
「いいの?」
「構いません。お金はユニオンの口座の分で足りますか?」
「そうね・・。この間の魔石の質の良い物一つで十分お釣りがくるかしら」
「うっ!?」
ここでにっこりと笑顔で、前回の反省を促してくるとは思わなかった。
しばらくして、生徒四人で了承が得られた事、ユニオンの口座から代金が支払われ、今回の先生がバーシスの町に向かっている事、教材がそれに間に合う事がエムファスから伝えられた。
薬草園を造るには、かなりの費用が掛かる、いや、既に掛かっている。
必要な経費ではあるが、薬草学の先生を雇い、呼び寄せ、教材を購入した・・
ちなみにエムファスは、僕の資産の氷山の一角よ、と言うが安心は出来ない。
「そう言う訳で、今回は資金調達をメインに行きたいと思います」
『うむ。各町の特産を集め、己の力を高め、資金を調達するのにダンジョンに潜る以上に相応しいものはあるまい』
商いイコール、ダンジョンイコール、戦闘イコール単なる薬草集めよりも、己の能力を使われ、将来の肉体が強化されるのだから、セイテンも今回は乗り気だ。
「今回は調味料の町、鉱山の町、魔石の町、果実の町は回ろう」
『ふむふむ』
「加えて新しい町、ダンジョンにも行こうと思う」
『素晴らしい!』
ダンジョンゲートでいける場所は、セイテンのもう一つの姿の七つの頭の数と同じ。
そのうち一つは、バーシスの町の傍のダンジョンに割り当てられている。
これは主に町へ戻る際の、移動手段という使い方なのだが。
「残り二つでお勧めはある?」
『そうだな・・、果実の町へ行くのであれば、生鮮食品の町は避けるべきだろう』
「うん。高くは売れるだろうけど、商業ギルドでも取り扱いに困るよね」
生鮮食品は、その日の内、もしくは出来るだけ短期間で捌かなくてはならない。
果実の他に生鮮食品もあると、ギルドとしての負担が増してしまう。
『ふむ。ならば糸をドロップするダンジョンはどうだ?』
「糸か・・。そうだね、良さそうだと思う」
『人間は衣食住と言うぐらい、生活に大切なものに衣服を上げている』
「確かに必需品だよね」
『であればファーデンと言うダンジョンを選択すると良い』
「ファーデンだね、分かったありがとう」
ダンジョンゲートで、ファーデンへと転移する。
「それで、このファーデンの特徴は?」
『何時も通りの五十階層のランクCで、糸をドロップする』
「ふむふむ」
『このダンジョンの傍の町は、織物の町だ』
「あっ、なる程ね」
そもそもが麻や綿を栽培して、糸を紡ぎ、生地を織るのを生業としていたと言う。
それに合わせたのか、色々な種類の糸をドロップするダンジョンが生まれた。
『ただこのダンジョンは、モンスターの数の割りに、糸の入手量が非常に少ない』
「どう言う事?」
『いや、どう言う事と言われても、俺様に分かるはずがあるまい。ただ町の事を考えて少ないのかも知れんな』
「ふーん」
産出量が少なければ、生地の生産量が減り、値段が上がる。
そういう所をダンジョンが考えているかは分からないが、町のためになるとも言える。
『深く潜れば潜るほど、その特徴が顕著に現れる』
「そうなんだ」
早速潜ってみれば、糸が入手できない理由が判明する。
モンスターは至る所に居るのだが、索敵能力が高くないと見つけられない。
擬態・・。
ここのモンスターは、非常に隠れる能力が高く、深ければ深いほど擬態が巧妙になる。
探索能力を人間とモンスターに絞ると、他のダンジョンと大差ない感じだ。
しかし擬態により、このダンジョンではモンスターを見つけるよりも、冒険者と出会う方が断然多い。
しかも前に接触した冒険者と、何度か出会う事すらある。
「うーん、冒険者も必死で探しているんだね」
『そうかもしれんな』
多分だけれども、冒険者達は擬態の情報を知らないのではないか?そう考えられる。
ギルドは商品価値を下げないために、誰にも告げないのではないか。
探索スキルが高い人は、自分だけの特権として誰にも話さないのではないか。
より多くを手に入れるには、その特性とそれを見破れる能力が必要になる。
だから気が付かなかったのだが、僕を付けねらうパーティの存在に。
ダンジョンボスの部屋の前に到着する。
「今回はここまでにしておこうかな?」
『そう言えば、他のダンジョンでもダンジョンボスの前でやめていたが、何か理由があるのか?』
「セイテン・・、ランクAの素材やアイテムって、取引やばそうなんだよ」
『ふむ。そんな感じではあったな』
町の傍のダンジョンの多くはランクC、セイテンから借りているドロップランク率アップの能力で、ただでさえランクBのアイテムや素材になってしまう。
当然の事ながら、何故ランクCのダンジョンから?と言う事になる。
何十回、何百回とダンジョンボスを倒さないと得られない量を持ち込めばそうなる。
そんな理由から、そのままUターンして、二十九階層の入り口へ戻る。
しかし上の階層へ向かう魔方陣の前に、何やらパーティが屯していた。
右に行けば右に、左に動けば左に、行く手を塞いでくる。
「えーっと、何か用ですか?」
「悪い事はいわねぇ」
「全部の糸を置いて行きな」
「命までは取ねぇからよぉ」
ダンジョンの中で堂々と、追いはぎのような事をしてくるとは思わなかった。
「何故このような事を?」
「このダンジョンの糸は金になるんだけどよぉ」
「モンスターの数が少ないのが玉に瑕でな」
この冒険者達は、このダンジョンの秘密を知らないのだろう。
故に安易な方法、人の所持品を奪うと言う悪事に手を染めた。
「このことをギルドに報告したら?」
「糸に証拠が残るのか?」
糸に限らず、ドロップアイテムは誰の物かなど分かりはしない。
「はぁー・・、ちなみに断ったら?」
「命ももらう事になる」
「分かりました」
袋に入れられるだけ詰め込んで渡す。
「そうだ。それで良い」
そう言うと、魔方陣に乗って上の階層へと行ってしまう。
『いいのかよ!? あっさり渡しちまって! お前なら・・、まだ限界突破を使ってないんだから勝てるだろう!』
「セイテン。単に殺したら、つまらないだろう?」
『・・ほぉ。と言う事は何か仕込んだな?』
「勿論。今も影の針と糸を縫いつけたよ」
ユニオンのため、他にも犠牲になった人たちのために、裁きを受けてもらう。
彼らが上に昇って、しばらくしてから上階層へと向かう。
『良かったのか、すぐに追いかけなくて?』
「多分だけど・・、ほら見つけた」
『楽して手に入れた獲物を前に祝杯ってか?』
「織物の町に必ず持ち込むのは分かっていたからね。普通ならダンジョンの傍には宿しかなくて換金できないと思ったんだよ」
『ふむふむ。それで?』
「冒険者ギルドに先回りして出迎えるのさ」
『なる程。上手くいけば良いがな?』
「後は、冒険者ギルドが腐っていなければ大丈夫だと思う」
夜通しで織物の町へと向かい、その足で冒険者ギルドへと駆け込む。
横取りパーティは、飲みすぎたせいか朝が遅く、昼過ぎにギルドに入った。
「これの換金を頼む」
「畏まりました」
冒険者ギルドの職員が袋を受け取ると、中身を確認する。
「横取りパーティさん。これはあなた方が手に入れた物ですか?」
「ああん。当たり前・・」
そして僕は、衛兵と一緒に冒険者ギルドに入る。
「てめぇ・・」
「もう一度聞きます。横取りパーティさん、これはあなたがたの物ですか?」
「当たり前だ! 何か糸に付いているって言うのか?」
「糸ではなく、袋の方にですが」
「なっ!?」
何処にでもある袋に、まさか当人の物と見分ける何かがあるとは思わなかったのだろう。
「そ、その袋は拾ったんだ。拾った袋には何も入ってなかったぞ!」
「つまり中は確認されているのですね?」
「えっ・・」
袋だけじゃなく、中にも何か入っている事に気づいたのだろう。
横取りパーティは、苦々しげに僕の方を向いてくる。
「お前・・。あっさり渡したのは、これが目的だったのか・・」
「随分とやりなれているようでしたので、余罪があると思って来てもらったんですよ」
「ギルドでも、あまりにも冒険者が戻らないのでおかしいと話題にはなっていました。モンスターが少ないから長く留まっているだけだろうと思っていましたが、まさか・・」
「ちっくしょぉ、よくも・・」
衛兵に縛り上げられ、取調べのため連れて行かれる。
「オプファさん、ありがとうございました。仲間を疑いたくはなかったと言えば言い訳ですね・・。もっと早く動いていれば、犠牲者はもっと少なかったでしょう」
「・・後は、そちらにお任せします」
「はい。あと糸は換金されますか?」
「いいえ、布に仕立ててもらう予定ですので」
「分かりました。お返しいたします」
僕の商業ギルドの登録証入りの、背負い袋を渡してくれる。
織物の町を見て回り、手間賃だけで布にしてくれる工房で良さそうな所を探す。
「ねぇ、セイテン・・。この事、知っていたよね」
『俺様を誰だと思っているんだ? 無慈悲に生贄にされた魂たちである俺様を』
「そうだったね・・」
セイテンと言葉から、昔らか、今も、そして未来にも生み出される犠牲者の存在。
自分には何も出来ず、セイテンからも妙案は今だ出てこない。
苦々しい思いで、犠牲者たちの恨み辛みが篭った、織りあがったばかりの布を受け取り、バーシスの町へと戻る。




