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商業ギルドの魔王候補  作者: まる
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借り受けた能力

【借り受けた能力】


商業ギルドに移籍してから、約二週間、それは嵐のような日々だった。

・・と言う事はない。


正直、生活に殆どといって良いほど変化がなかったからである。


朝、トロナと食事をする。

薬草を採取する。

薬師ギルドに薬草を卸して、トロナと夕食。

家に戻って寝る。


変わったのは、宿屋での朝食と夕食がトロナと屋台での食事になり、寝床が宿屋からアパートメントに変わった位である。


これがバリバリの冒険者から、薬師にでも転職したなら話しは別だろう。


「トロナの勧めに従って商業ギルドに移ったり、エムファスさんの助言に従って正解だったなぁ」


薬草を採取する手を休めて、強張った身体を伸ばしながら呟く。


殆ど変わらない日々の生活なのに、ほんの僅かだが蓄えが出来ているのだ。



この世界の貨幣は以下の通りとなっている。


小銅貨一枚がパン一個、薬草一枚である。

大銅貨一枚が、小銅貨六十四枚で、三段ベッドの素泊まりの宿屋の二泊がこの値段。

銀貨一枚は、大銅貨八枚で、約一週間の生活費の基本となる。

金貨一枚は、銀貨八枚で、約一ヶ月、八週間の生活費の目安となっている。



朝夕食事つきの個室の宿屋であれば、大銅貨二枚、薬草なら百二十八枚を集める必要があった。


月々の家賃、食事の準備、ベッドメイク、料理の準備後片付け、光熱費に、自分でやる手間と時間を換算するのと、一概にどちらが安いとは言えない。

オプファのように外食派などの生活スタイルに依っても変わってくるが、それでも一日平均、大銅貨一枚半前後で済んでいる。


冒険者ギルドでは、どんな薬草であっても一枚銅貨一枚で、最低単位が十枚一束からが依頼の基本である。


これに冒険者ギルドは手数料を上乗せして、一枚銅貨二枚ほどで商業ギルドもしくは必要としているギルドに卸す形を取っている。

ギルドとて、運営するのには人を雇い、雇うために給料が必要で、給料のためには、どこかで利益を出さなければならないので仕方のない事だ。


トロナによると薬師ギルドは、冒険者ギルドと特別な契約があり、薬草に限り手数料が安く設定されているらしい。


薬師ギルドへの僕の持ち込みは、冒険者ギルドと違い、薬草の種類ごとに、若干価格が変動している。

二枚で銅貨一枚の薬草もあれば、一枚で銅貨二枚の物もある。


平均的には銅貨一枚なのだが、中間マージンを支払う必要の無い薬師ギルドとしては、大歓迎な訳なのである。

特に僕の場合は、必要な薬草、欲しい薬草を、出来る限り良状態で採取、保存するのも買われているようだ。

また顔見知りにもなりつつあるので、時々色を付けてくれる。例えば九十五枚の所を、百枚ねっ、と言う感じで。

これは冒険者ギルドの時もあった、ちょっとした心づけと言うやつである。


要求と枚数によっては、多い時で大銅貨一枚ほどの貯金が出来てしまう様になった。

もっとも病気や怪我など、何かあればすぐに吹っ飛んでしまう額ではあるが・・


「確かにこの額じゃあ、工房を買うのは控えるし、人を雇うなんて無理だよなぁ」


エムファスとの、工房付きの家を買う買わないの話をした時の事を思い出す。


「将来を見据えた買い物か・・」


エムファスは、僕の夢を笑わなかった。

夢を聞いた上で、必要となるであろう助言をしてくれた。


「それと上級の薬草の素材か・・」


毎日のように薬草を、薬師ギルドに持ち込むようになり、かなり歓迎されていると感じる上に、トロナと一緒に帰る姿は、好意的にとられているようだ。


お互いの関係が良好になってくると、できればと言う口ぶりながらも、上級や最上級の薬用の素材が欲しいとの要望が出てくる。


「確かに上級とか最上級用の素材が手に入れられれば、工房付きの家にも一歩近づくけど・・」


上級や最上級用だけあって、当然の事ながら単価が高い。単価が高いと言う事は、当然、素材が自生している場所が限られ、また見つけにくい事を意味する。


この世界には、空気と同じように、大気や大地に魔素と呼ばれるモノが満ちあるれている。

一説には、この魔素が魔力となり蓄えられ、魔法の発動に至るらしい。


素材は高価なものほど、魔素が濃い所を好む性質があり、モンスターも魔素が濃い所で発生し易い。

高価な薬草の採取ほど、モンスターの接触率が高いと言う事になる。


つまり元冒険者ランクFの僕では、正直荷が重いお願いなのである。


「流石に今の僕じゃ・・、無理があるよね」

『ならば俺様が手を貸してやろうか?』

「えっ!?」


突然、自分の独り言に割り込んできた声に驚く。


「ああ、セイテンか。久しぶりだね」


冒険者ギルドでの会話を最後に、特に話しかけられる事も無く忘れていた。


『うむ、久しいな』

「冒険者ギルドの一件以来だね」

『そうなるか』


そして魔王セイテンとの約束を思い出す。


「久しぶりに声を聞かせてくれたのは・・、ギルドに報復する算段がついたのかい?」

『今の段階では不十分だが、その検証のためでもある』

「それが手を貸す、と言う事になるの?」

『その通り。悩みの上級や最上級素材についても解決されるぞ』

「えっ!? 素材の事も何とかできるの?」


ギルドの報復だけではなく、目下の問題の解決にもなるらしい。


『まず世界中に散らばる冒険者ギルド。さっきも言ったが、一括の報復は、今の段階では無理だ』

「それは・・、そうだね」


冒険者ギルド自体への報復。そんな大それた事がすぐに可能とは思えないけど・・


『まずこの町の冒険者ギルドに、悔しい思いをさせてやろうと考えた』

「へぇー、どんな事?」

『おまえを有名にする事だ』

「・・はぁ!? 何、何? 一体どう言う事?」


僕が有名になる事が、冒険者ギルドへの報復と言う意味が分からない。


『俺様が調べた限りだが、レアなアイテムを冒険者ギルドが入手して、商業ギルドに恩を売る形が成り立っている』

「当たり前じゃないか」


レアなアイテムの入手・・。商業ギルドや生産職系のギルドが必要とする素材を、冒険者ギルドが変わりに入手する。


町の中と外の関係でもあり、当然の事である。


『そ・こ・で、商人がレアなアイテムをバンバン入手して、冒険者ギルドの顔を潰す』

「・・えっ?」

『その商人は、元冒険者で、ある町の冒険者ギルドの不手際で、商業ギルドに移った』

「あっ・・」

『確かにSランクと呼ばれる冒険者の足元にも及ばないだろうが、少なくともその町の冒険者ギルドは赤っ恥を書き、新人つぶしと言う話題が上る』

「なる程」


セイテンの言う通り、冒険者ギルドと言う屋台骨は簡単には揺るがないだろうが、新人つぶしの事実は、町の人々に知れ渡る事になる。

新人つぶしの事実に知らん顔の冒険者ギルドとしても、喜ばしい事ではない。


「まずは一手、と言う所だね」

『それでも何にも響かないだろうから、もっとドギツイ、エゲツナイのを用意しなくちゃならんがな』


僕の場合はサブギルドマスターと言う、ギルドの幹部が絡んでいた。

簡単に握り潰されるて、今まで闇に葬られて居た人々がどれほど居た事か。


徹底的に破壊する必要がある、その選択をする時が来るのかもしれない。


「分かった。喜んで手を借りるよ」

『そう来なくてはな!』


実に楽しげなセイテンの声とは裏腹に、僕の心には重く圧し掛かるものがあった。






セイテンは、僕に貸してくれる能力について嬉々と説明してくれる。


『まずダンジョンのレアアイテムを手に入れると言う事は、一定以上の力が必要だ』

「その通りだね」

『その力を手に入れる事は、当然の事ながら、上級や最上級の素材の入手するための手段でもあると言える』

「ああ、そっか。そうだね」


ダンジョンでレアアイテムを手に入れるためには、より深く潜る必要がある。

それだけの能力があれば、当然の事ながら、上級や最上級の薬草採取だって可能になる。


『しばらくの間、黙っておまえを見て、世界を見て、俺様のどの能力をおまえに貸すべきか考えていた』

「えーっと、どの能力って事は複数あると言う事?」

『俺様の力がひとつな訳があるか。俺様のもう一つの力を覚えているか?』

「覚えているよ・・。赤き竜・・、七つの頭と、十本の角、頭には冠を持つ・・。絶対的な破壊をもたらす・・」


ダンジョンの破壊された姿は、今でも鮮明に思い出せる。


『そう! その力だ。力はダンジョンを焼いた炎だけじゃないぞ? 全てを切り裂く風、全てを溶かす酸、全てを腐らせる毒、全てを凍らせる冷気、全てを貫く雷、魂を引き裂く闇、牙も、爪も、尾も、強靭な肉体もある。ただ、おまえの望む復讐に使うには、直接過ぎて、強大で、過ぎた力だ』

「僕もそう思うよ・・」


直接の破壊はセイテンの力なら簡単だろうけど、僕達を陥れた者達と同じ位置に自分達を貶める事になるのだ。

そう、何の罪もない人々に、多大な悲しみと苦しみを背負わせる結果になる。


『故に力をアレンジして、おまえが使い易いようにしてやったぞ』

「その力を使って、ダンジョンに潜れと? 薬草を採取しろと?」

『その通り!』


セイテンは、恐るべき力の一部を貸してくれ、有名になれという。


「ありがとう」


経緯はどうであれ、僕のためなのだ。感謝の気持ちを素直に伝える。

すると、何やら戸惑うような気配を感じた。


「うん? どうかしたセイテン?」

『いや、気にする事はない』



セイテンは、心の中で思う、


俺様は・・いや俺様を構成する魂たちは、捨てられた存在。

そんな俺様たちが感謝の言葉を掛けられるとは思いもしなかった、と。



『では、おまえに貸し与える能力の説明をするとしよう』

「うん、頼むよ」

『その能力たちは、もう一つの姿に態々紐付けてやったぞ』

「へぇー」

『まず最初に、七つの頭に関連して、この世界にある七つのダンジョンの一階層へと転移できる。この能力をダンジョンゲートと名付けた』

「・・・は!?」


聞き間違いか? 世界のどこかにある七つのダンジョンに転移? 初っ端からとんでもない能力が押し付けられた。


「待ってくれ!? 何だその能力は!? どう使えって言うんだよ!」


もはや悲鳴に近い声で、セイテンに訴える。


『ああん? 簡単だ。そのままダンジョンに潜って踏破しても良し。その地方の特産品を仕入れて、他の地方で売っても良し』

「そういう使い方か・・」


この付近のダンジョンではなく、遠くのダンジョンや特産品を得ると言う訳だ。

商人としての名声を上げる事が目的なのだろう。


しかし懸念される事があった。


「いきなり一階に現れたりしたら、不味くないか?」

『ちゃんと考えてある。おまえは低ランクなのであろう?』

「そうだけど、何か関係が有るの?」

『ダンジョンのトラップには、転送系がある』

「聞いた事があるよ。いきなりボスの真ん前だったり、壁の中だったりする、凶悪なトラップの代表だよね?」

『低階層の物に、そこまで凶悪なものは無い、精々同じ階のあっちこっちに飛ばされたり、一階の入り口まで戻される程度だ』

「一階の入り口・・、そう言う事か!」


セイテンは言い訳として、トラップに引っかかった事にすれば良いと言っているのだ。


『その通りだな』


僕が気が付いたように、他の人が持ちそうな疑問の先を見越していた事に舌を巻く。


『納得できたら、次の能力の説明に移るぞ?』

「うん、お願いするよ」


次に説明された能力にも、驚かされる事になるのだが。




『次は十本の角についての能力だが、当然十種類用意した』

「えっ!? 十個!? そんなに!?」

『ダンジョンゲートを補うための、商人と冒険者に必要な能力だ』


確かにダンジョンゲートは、移動系能力としては凄いが、それを生かす力が僕には不足しおり、上手く役立てられないのだ。


『一つ目は、少し前におまえに貸した能力。アイテムを収納する能力だ』

「やっぱり」


そう僕に不足しているのは、折角のアイテムや商品を運ぶ手段が無いと言う事なのだ。


『これは別の空間に収納するため、無限に入り、且つ時間が経過する事もない』

「凄い!」


これがあれば、好きなだけ売り買いが出来、鮮度を保たなければならない物も安心である。


『二つ目は鑑定。これから色々なものを売り買いし、薬草を探す上で役立つだろう』

「そうだね」


商人としても冒険者としても、持っていれば食いッぱぐれが無いと言われる能力だ。


『三つ目はアイテム発見率アップ。特にフィールドでは、素材を見つけ易くする』

「へぇー、便利だね」


薬草を探すでも、モンスターを倒した後でも、ダンジョンのお宝を探す上でも効果があると言う。


『四つ目はドロップランク率アップ。ドロップするレア度が上がる』

「そんな能力もあるんだ」


ダンジョンのモンスターを倒すと、死骸は煙のように消え、アイテムだけ残す。

それをドロップアイテムと言うが、そのレア度が上がるらしい。


『五つ目の能力が探索能力だ。周囲のアイテムやモンスターが分かる』

「だいぶ安全が確保されるね」


探索能力だけだと、何かが有る居る程度らしいけど、更に鑑定能力と合わせると、何が何処にと細かく分かるそうで、薬草が取り放題となってしまう。


『六つ目は・・嫌かもしれんが・・』

「嫌?」


珍しくセイテンが言い淀む。


『魔法が使えるようになる』

「えっ!? 魔法の才能が無い僕でも?」


魔法を使うには一定の能力が必要な上に、魔法を教えてくれる人に師事するか、高い授業料を払って学校に通うしか手段が無い。


『俺様が使えるのは・・闇属性のみ・・だ』

「闇属性・・? もしかして暗黒魔法ってこと?」


闇属性は主に、モンスターや魔族などが使う魔法で、人間も使えるが、忌み嫌われる。


『すまんな』

「気にしなくて良いよ。どうせソロでしかダンジョンやフィールドに出ないから、上手く使いこなしてみるよ」

『えっ!?』


これまた珍しく驚いた声が聞こえる。使えない能力だと思っていたのだろう。


「次は?」

『あ、ああ・・。残り四つは纏めてとなるが、もう分かるだろう?』

「・・いや、分かんないって」


動揺しまくっているセイテンに、苦笑いで催促の声を掛ける。


『身体強化、異常耐性、危険予知、限界突破の四つになる』

「・・戦闘能力って事だね。でもそれだけで無敵状態じゃないの?」


明らかに過剰能力である。そもそも十種類の能力と言うだけで破格なのだから。


『流石にそこまでは無い。精々ランクC程度だ。限界突破を使えば一時的にランクAまで上がる』

「ほら! ランクAであれば・・」

『限界突破は一日に一回までしか使用出来ない。二回目も使用できるが、動く事すらままならなくなる』

「ソロで活動するなら致命的だね」


正に諸刃の剣という事である。


『そして最後になるが・・』

「えっ!? まだあるの? もう十個の能力は終わったよ?」

『これが目玉中の目玉・・』

「いやいやいや! 今の今までだって、十分すぎる能力だって!」


思わずセイテンの言葉に被せてしまう。セイテンはそんな僕を無視して説明を続ける。


『名前はダンジョンロード。頭にある七つの冠に紐付けてある』

「何かとっても悪い予感がするけど・・?」

『その予感は正しい。使う使わないはおまえに委ねるが、使い過ぎると、色々な所から干渉を受ける』

「色々な所? 干渉?」

『まあ分かり易く言えば、この世界に神が実在したとしよう。その神に嫌われ罰を受ける・・かもしれん』

「絶対ヤバイやつじゃないか!?」


思わず悲鳴を上げる。


『一応説明だけ聞いておけ。ダンジョンロードはハッキングだ』

「はっ・・きんぐ・・?」


聞いた事のない言葉だった。眉をひそめる。


『ダンジョンの仕組みは、ダンジョンを管理する何かが存在する』

「それはダンジョンボスじゃなくて?」

『全くの別の存在だ。その存在がダンジョンポイントと言う、人間で言うなら生命力や魔力を使ってモンスターを増やしたり、お宝やアイテムを用意している。そのシステムをハッキングする能力がダンジョンロードだ』

「いや、そもそもハッキングって何?」

『ダンジョンの仕組みの中枢に侵入し、情報を改竄する事だ』

「うーん、今一分からないけど・・、それが凄い事なの?」

『あーっはっはっはっ。勿論!』


待ってましたと言わんばかりに、セイテンの高笑いが響き渡る。


『ダンジョンが蓄えているダンジョンポイントを、勝手に使って、好きなアイテムを手に入れることが出来るんだぞ!』

「・・・えっ!?」

『伝説級の装備も、死者を蘇らせる神秘の薬も、金銀財宝ありとあらゆるものを手に入れることが出来るんだ』

「何だよ・・それ・・そんな事したら」


世界がおかしくなる、そう思った。いや確信する。


『世界にある、今だクリアした者の居ない150階層越えのランクSクラスの難攻不落ダンジョンや、150階層のランクAクラスのダンジョンといった七箇所と繋げて、いくらでもアイテム取り放題だぞ!』

「ま、待ってくれセイテン・・」

『安心しろ! やり過ぎれば魔王認定されて、勇者が派遣される・・かもしれん』

「っ!? それが・・神に嫌われ・・罰を受ける?」


当たり前だ、ノーリスクでこんな力を使えるはずが無い。

だけど使うかどうかの選択は・・、僕に委ねられている。


『だが、助けられなかった者を、助けることが出来るようになるぞ?』

『っ!? セイテン・・」


目の前に死にそうな人が居て・・、いや大切な人が死んでしまったら・・

でもその時セイテンは囁くのだろう、おまえには力がある、と。


「ありがとう」


何故かその言葉が、口から出てくる。


セイテンは、黙っていれば良い事を喋ってくれて、僕に選択する権利をくれた。

何よりも僕の事を思って、沢山の能力を用意してくれた。


そんな思いが重なって、自然に出てきたのだと思う。


『ふん。当たり前の事だ』


セイテンは、ぶっきら棒に言い返してくる。




俺様は自分の言葉とは裏腹に、オプファの言葉に歯噛みしたくなる。


この期に及んで、コイツは、まだ感謝の言葉が出るのか?

己の存在と引き換えに、半ば強制的に魔王にさせられそうになっているのに?


こいつがモンスターに喰われて、魂だけをいただくべきだった。


俺様を構成する、無念の魂が、感謝の言葉に、更に力を貸してやれと叫ぶ。

俺様としての存在意義が、根幹から覆させるという恐怖を感じさせる。


コイツに力を貸すのは危険だと、存在意義が警鐘を鳴らしてくるのだ。

しかしコイツは、数多の無念の魂が、望む何かをもたらしてくれると、俺様に期待感を押し付けてくるのだ。


弱くて儚い、ちっぽけな一人の存在が、魔王という存在を揺るがす。





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