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SS ながらへば(1100字程度)

作者: Jinafu
掲載日:2018/03/09

肌寒い日のことだった。

「一緒にいて、君のことをもっと知りたい。」

そう言って一緒になった人は、一緒にいる自信が無くなったと言って私の前から居なくなった。

告白されて付き合いだして一年、同棲を初めて半年。それなりに順調に関係を築いていると思っていて、お互いの年齢を考えてそろそろ結婚を視野に入れてもいいかと思っていた。

私は彼に何かしたのだろうか。それとも、何もしなかったことが悪いのだろうか。

湧かない実感と、漠然とした寂しさに意識が遠くなる。

ボーっとしたまま声に出してみる。

「そっかー、自信かぁ…」

まだ温かいコーヒーのはいったカップを持ち窓辺に行く。レースカーテンを開け、床に座り込み考える。

さて、どうしたものか。

怒らせるような事したのかな…?自信なくすようなことを言った覚えもないし、いつも通りだったよね?

でもさっきのはきっと別れようってことだよね。荷物持って出て行ったし。

ってことは、私も出て行った方がいいのかな。二人で決めた家だから、ひとりで住むには広いし。引っ越すなら、大家さんに連絡しないと…

外を眺めながら一つ一つ考えていると、ふとデジャヴを感じた。似たようなことが前にもあった気がする…

「そうだ、泉くんだ。」

泉くん…かぁ、懐かしい。

大学の頃付き合っていた相手で、その時も似たような言い方で部屋から居なくなった。その時もこうやって窓辺でぼんやりしていた。

その時言われたのは確か「瞳の考えていることが分からなくなった」だったと思う。

「分かんない、自信が無くなったって言われても困るっての…」

冷えてきた足先に触れると、すっとに心まで冷えていく。孤独感と恐怖心が、一気に襲い掛かってくる。

どうしよう、ひとりが怖い。

人に理解してもらえない私はなんなんだろう。私とは、なんて中学生みたいなことを真剣に考える。

泉くんにも私が分からないように、今さっき出て行った彼に自信が無くなったように、

私にも私が分からないし、自信なんてこれっぽちもない。

胸が痛い。今までどうやって過ごしていたか分からなくなる。今まで、前の時はどうやってこの気持ちを片付けていたんだっけ。

こうして考えている間も、どんどんと心は冷めていって、どうしようもない気持ちでいっぱいになる。

こんな気持ちも、いつかは懐かしいといえるようになるのかな。当時もきっと同じくらい不安だった泉くんとのことを今懐かしいと言える様に。

コーヒーを一口飲む。

肌寒いね、と言いながら淹れたコーヒーはすっかり冷え切っていて、ひとりになった私を温めてくれる気配はなかった。

超訳:こんなに苦しい毎日も、いつかは思い出になるのだろうか。昔の苦しかったことを今は懐かしいと思えるように…

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