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『月下のアトリエ』
苦さと甘さが絶妙に混じり合った大人ファンタジー、いかがですか。
志茂塚ゆりさん作『月下のアトリエ』は、派手ではないけれど、確実に心の滋養となる良作です。
フランスやイタリアを彷彿とさせる世界観。
蓮の花飾りがついた杖で、空を飛ぶアミュウは魔術師です。
『月下の魔女』
ある日、姉の見合い相手である牧師見習い・御神楽聖輝と出逢います。
そして、アミュウの介在により、姉・ナタリアと聖輝は肝要な記憶を喪失するのです。
『聖なる水は血となりて』
聖輝のエネルギー源がワイン、パンが武器というのもユニークな設定。
世界の記録が全て綴られたと言われるアカシック・レコードを鍵に、不可解な夢や政治的思惑、そして恋模様が絡まり合う物語に引き込まれます。
キャラクターたちの個性がくっきり際立っているのも本作の美点です。
作中には食べ物や薬、果ては香水に至るまで、細かな知識が載り、思わぬ豆知識を得ることもできます。
この作品の見どころの一つです。
根底には母性のような、人を見る温かな眼差しを感じるストーリー。
秋の夜長にいかがでしょうか。




