『機械仕掛けの天使は闇夜を翔る』
お久しぶりです。前回の投稿から随分、間が空いてしまいました。
皆さんは、機械の身体をどう思われますか?
そこに人の心は宿り得るでしょうか。
夏野露草さん作『機械仕掛けの天使は闇夜を翔る』のヒロイン・フェイヴァは、心を持つ機械の女の子。
高い戦闘能力を持つ「死天使」と呼ばれる存在です。天使の名の示す通り、出し入れ可能な羽を持ちます。
彼女の記憶は思春期ごろの少女で始まります。
反帝国組織において彼女を生み出した「母」・テレサは、フェイヴァに様々なことを教えます。
やがて彼女は訓練校に入り、友情を育み、知らず恋することとなるのです。
『羽ばたく心』
夏野さんの描かれる世界は独特で、人に害をなす魔獣という存在がいたり、フェイヴァのような死天使や、魔人、妖魔と呼ばれる種もいます。
その丹念な筆致で紡がれる「異世界」は、他作品の異世界とはまた異なる色合いのものではないかと思います。
フェイヴァは当初、機械として人間扱いされませんでした。しかし中には、彼女に優しく接する者もいて、フェイヴァの支えとなるのです。
『胸に咲く花』
この物語の序盤から登場する青年・レイゲンは、冷徹な態度でフェイヴァに接します。
けれどその、氷のような心が次第にほぐれてゆくのです。
その過程も見どころの一つ。
フェイヴァとはこの世界に咲く桃色の花の名前で、桃色の髪のフェイヴァには相応しい名前です。
可憐な容姿、一生懸命で一途なフェイヴァは、読者の共感を誘います。そしてレイゲンの共感も。
どこまでも強い彼の強さの所以と、その目的は…。
『反骨』
フェイヴァが訓練校において出来た仲間の一人がこの少年・リヴェン。
良くも悪くも正直で、口が悪い。けれどここぞという時は勇敢な行動を見せてくれます。
さて、あえて触れませんでしたが、レイゲンにもリヴェンにも、そしてフェイヴァに近しくなるほかの友人たちにも、それぞれ秘密があります。物語が進むにつれて、それは明らかになっていきます。
辛い展開も多いです。
その中で、彼らが何を選び、どう行動していくか。
国、宗教の思惑が絡み合い、強大な敵が彼らの前に立ち塞がります。
恋愛あり、バトルありの重厚なファンタジー!
あなたはきっと、この世界の空気に浸ることでしょう。




