『60×30』
氷上に美しく舞うのに、性別は関係ないというのが持論です。
男性であれば男性らしい美しさが、女性であれば女性らしい美しさが冷たい氷の上に熱く顕現します。
そしてフィギュアスケートを書くにおいて、なろうで彼女を知らない人はいないのではないでしょうか。
黒崎伊音さん。
代表作品『60×30』。
作品名に「ん?」と思われた方もおられたはず。小説としては一風変わったこのタイトル、スケートリンクの広さを表しているんです。
この作品は氷上に全てを捧げた少年少女の送る青春を軽妙かつ重厚なタッチで描いています。
主人公は鮎川哲也と星崎雅。
二人ともジュニアながら高い潜在能力の持ち主です。
彼らの努力の結実の一幕が2015年3月上旬に行われた世界ジュニア選手権。
鮎川哲也の選んだジブリでもお馴染みの白竜が出てくる曲は、圧巻の一言。
本当に彼がハクと交流して滑っているように思えるんです。
『白竜とリンク』
簡単なスケート用語しか知らない九藤でも、思わず惹き込まれました。
また、画面に描かれたタンチョウは北海道育ちの哲也にとって特別な存在。
要所要所で彼を導いているように思えます。
そして雅の選んだ曲に、にやり。
白竜は水。それなら対になるのは?
そう、火、火の鳥です。
ここはダイナミックな描写が目立ちます。
『火の鳥』
雅は天才外国人選手に「力強い演技」と言われ、女子でそれで良いのかと思い悩みますが、それが彼女の持ち味だと読者が実感する場面です。
幼馴染の二人。
恋心が芽生えそうで邪魔が入りそうで。
そんなところでもやきもきします。
フィギュアスケートファンでなくても、読んで楽しめる作品です。




