『双竜は藤瑠璃の夢を見るか』
鵺という生き物をご存じでしょうか。
鳥のトラツグミの異称ですが、別の姿を指す場合もあります。
すなわち、頭は猿、胴は狸、尾は蛇、手足は虎に似ている空想上の生き物です。
本来であれば天に棲む筈の鵺が落ちてきた。この物語はそこから始まります。
結城星乃さん作『双竜は藤瑠璃の夢を見るか』。
和と中華が混じり合ったような独特の世界観。挿絵にも魅了されます。
鵺が落ちたことの調査に向ったのは異なる種族の三人。竜と、人。それから鬼です。
実際に生きている年数はともかく、まだ少年と呼べる彼らの、冒険譚とも言える話かもしれません。
『宿命背負う子ら』
それぞれに影響し合い、気遣い合いながら旅は進みます。
そして、彼らを幼年組とするなら、大人組と言える人たちもまた、物語に華を添えます。
『競艶』
都の実質的支配者、少年の一人の父親、そして彼らと友誼を培う者。
一筋縄では行かない関係のようであるのは少年たちと同じ。
とりわけ少年の一人、竜族である竜紅人と、支配者と言って過言でない叶の戦闘シーンは見応えがあります。
また、結城さんは美しい挿絵も描かれているので、想像力が二倍に掻き立てられます。
『香彩』
少年組の中の人間、香彩は大人組の金の長髪の男性の息子です。恐らく、作品中でも筆頭の愛息子。
また、シリーズ短編では叶と大人組黒髪の咲蘭との際どい関係も垣間見ることができます。
謎めいた魅力ある作品。
なろうで楽しめますが、マグネット!では更に挿絵増量です。
不思議で妖しい世界にようこそ。