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『金魚邸の娘』
一気読みするほど、夢中になる作品に出逢いました。
それは読み手として、とても幸運なことだと思います。
モノ カキコさん作『金魚邸の娘』を、時を忘れて読み耽りました。
時は1920年代から2025年の二つに焦点を当てて書いてあります。
2025年、図書館に勤める六花は、ある日、ふとしたことから大机の裏に日記らしきものが書かれてあることに気づきます。
その書き手は「果穂子」という名前でした。
物語は果穂子視点から始まります。
「あなたが残るなら、果穂子は百年も千年も、永遠にまでいきませう──」
あらすじに載るこの台詞はとても意味深で、想像を掻きたてられます。
『金魚幻想』
果穂子は出自から、金魚邸という名の邸に暮らします。
この物語にはたびたび、金魚が出てきます。
六花は果穂子について調べる内、彼女が結核で早くに亡くなったこと、そして「留根千代」という名前の謎に行き当たります。果穂子は「留根千代」にひどく執着していた。それは誰なのか、いや果たして人名なのか。
母と娘の情愛や確執にも触れた、とても読み応えある良作です。




