『君の夢の裏側』
心に棘が刺さったような、不安に襲われ落ち着かない時。
ちょっとしたことで浮上する。そんなケース、ありませんか?
鈴鯉さん作『君の夢の裏側』を読むと、そんな気持ちになれるかもしれません。
大学生の幸野は高校時代の親友と連絡が途絶えたままであることに気持ちが落ち着きません。
そんな中、課題を済ませようと訪れた図書室で出逢った(叱られた?)のが、白髪の青年・貴城慶人でした。
彼は「LA」、ライブラリー・アシスタントでした。
『心のLA』
彼自身、そんな積りはなかったのでしょうが、幸野の悩みと関わることで、次第に事態の真相を究明していくことになります。
それは幸野の、思いもかけない親友の心の病の発覚であったり、その親友を本当は自分がどう思っていたか知ることであったり。
決して綺麗事だけでは終わらない、まだ思春期を引き摺る女子の心の機微を、リアルに描き出された作品です。
最後の締め括り方も甘過ぎず、さらりとした読後感です。
余白が少ないですが、敬遠せずに、文字の羅列ときちんと向き合ってみてください。
書き手の目指す世界観ともフィットすると思います。
「ああ、自分にも似たような経験があったかも」
そんな気持ちになるかもしれません。
ちなみに、貴城の白髪が個人的に九藤のツボだったことは、まあ、蛇足です(笑)
そして『君の夢の裏側』の「君」とは、誰を指すのでしょうね?
そんなことを考えるのも、また一興かと。




