26/74
『ミコ---龍の子の祭り---』
これは藺草と夕暮れの、香り郷愁漂う物語。
遠堂瑠璃さん作『ミコ---龍の子の祭り---』は、そのように評するに相応しい作品です。
もうすぐ大事な祭りがある。
十三歳になったタケルは、龍神と人の間の子であるという出生の秘密を告げられます。
それから彼の運命の歯車は動き出す。仄かな初恋も儚く消えて。
皇子・牙星、姫巫女・双葉、笛を吹く神子・守り人。
彼らとの出逢いが、タケルの行く末を大きく左右します。
『混沌』
決して生易しくはない物語。血と涙が流れ、傷つき、それでも生きようとする魂。
殺伐としたストーリーなのに、なぜか感じる温かさ。
それはタケルと、彼を育んだおばあさんの絆に象徴されているかもしれません。
温かいんですよ。そこに流れる空気が。
高校生の頃に書かれたものを手直しされたそうですが、深みある作品は、高校生が書いたとは思えないほど。
隠れた名作だと思っています。
懐かしく狂おしく愛おしい。
そんな感情に触れたくなったら、そっと紐解いてみてください。
きっと貴方にも笛の音が聴こえてくる。




