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『嫋夜小話』
異国の珍しい宝玉を眺めたら、こんな気持ちになるでしょうか。
中島透乃さん作『嫋夜小話』。
語られるのは王や貴族、将軍、神官、楽師、名もない庶民、子供たちの物語。
広い土地の東西南北に湖があり、神殿がある。
掌編集だけれど、大きな共通した世界観があり、繋がっている話もある。
『爛熟』
洗練された、密度の濃い描写は、熟した花の香りを彷彿とさせます。
全てが夢幻のように、読み手を陶酔させる物語。
並みの言葉で語り尽くすことは、到底、出来ず、九藤の手に余ります。
血が流れ、得体の知れない病気があり、暴力や欲が滾る場面があっても、それでもなおこの作品は美しいと思います。
特融の固有名詞もまた、魅力の一つ。
難字もありますし、決して簡易な作品ではありませんが、一読するだけの価値はあると思います。
読み手にとっても、書き手にとっても。