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『梅の芳香、雨の音色〜あなたに捧げる愛の証〜』
小野小町の、百夜通いの話はご存じでしょうか?
彼女に想いを寄せる深草少将が、百晩、通ってきたのなら、想いを遂げてみせようと小町が言う。
この作品には、どこかそれと通じるものがあります。違うのは、結末。
石川翠さん作『梅の芳香、雨の音色〜あなたに捧げる愛の証〜』
『雨想い』
忘れられない過去の男の影を引き摺る芸妓・香梅の前に、ある大切な物を返してほしいとその男の兄が現れます。誇り高く気が強い香梅は百夜通えば渡す、と言います。それどころかどこにでも貴方について行ってあげる、と。
無骨な彼は律儀に約束を守り、香梅の元に通い続けます。
さて、その結末やいかに――――?
この作品には雨が香り立つようです。香梅が男性に便宜上、つけた名前も「雨仔」と、雨がかかります。
そこかしこで登場する白い猫も可愛くて、物語を引き立てます。
この作品はサイド・ストーリーなのですが、本編もいずれご紹介したいと思っています。