『もしも花弁が揺れるなら』
草原に吹く風。
この作品を拝読した時、世界観に感じたものはそれでした。
緒方晶さん作『もしも花弁が揺れるなら』。※R18作品です。
女性を愛することを知らずに育った美貌の男が、初めて心惹かれたのは、誇り高い男装の公女でした。
『吹く風』
主人公・ローラントは冷淡な振る舞いから「氷のシーク」とあだ名されます。
戦場で狂ったように血を求めるローラントが、心ほどくきっかけとなったのが猫。そして、美しい公女・ソラヤの存在でした。
それまでどんな女性に言い寄られてもなびかなかったローラントが、ソラヤの前では必死になります。
初めて知った恋心に戸惑う様子は可愛くもあります。
二人の初夜が面白くて、「何をする!無礼な!」「触るな!」「この下手くそが!」とソラヤ、ローラントに罵声を浴びせること頻り(笑)初夜なのに、と思ってしまいます。
そもそも彼の母は喋れない美女で、父はその父、つまりローラントの祖父から彼女を奪ってしまうのです。異性を狂わせる美貌は、息子にも受け継がれているのでした。
淡々としながらも気品ある筆致で、緒方さんの物語世界が紡がれています。
本作は『約束の地へ』という作品のスピンオフだそうです。
気になられましたらそちらもどうぞ。