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【連載版】ホームパーティーに誰も来なくて、冷めた手作り料理を孤独にモソモソ食べる魔王様『……そうだ! 王国軍に一般入隊して魔族を滅ぼそう!』  作者: タック
2章 ホームパーティーをしよう!

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幕間 オウマのホワイトデー ~天国の美味脱衣~

※3月14日投稿に間に合った! ヤッター!

「オウマ様、キザイルさん、今日はホワイトデーですにゃ!」


 3月14日。

 我の自室にイフィゲニアが飛び込んできた。


「え? ああ……。そういえば、あの命日から一ヶ月経ったのか……。オウマちゃん、あんなことになっちゃって……」


「いや、我はギリギリHP1残ったからね。生きてるからね」


 お茶を飲んでいる我と、ポリポリと茶菓子をつまんでいるキザイル。

 今日も平和である。

 というか、我の部屋に来すぎじゃないか此奴(こやつ)たち。


「ところで、僕はずっと気になっていることがあったんだけど」


「にゃ? こちらをじっと見てどうしたんですにゃ?」


「イフィー……君。って、本当に男なの? なんか僕の“女の子センサー”が反応しまくってるんだけど」


 なんて鋭さなのだキザイル。

 あの“竜殺しの枢機卿モード”になった状態よりキリリとしている。

 普段から女好きっぽいのだが、許嫁とやらに刺されないか心配である。


「バレたかにゃ。実は『†聖天使猫姫†』という正体があるのにゃ……」


「マジなのであるか!?」


「いや、オウマ様。もちろん嘘ですにゃ」


「嘘であるか~……」


 キザイルが腹を抱えて笑っている。

 何かツボに入ってしまったのだろうか。


「──あっははッ。……ふぅ。イフィー君はほんっと変な子だなぁ」


「キザイルさんも、獣人に対して普通に接してくれる変な人だと思いますにゃ」


「いやいや、オウマちゃんの周りじゃ普通だと思うよ。それに、イフィー君が女の子だったとしたら、もっと手厚く接するかなぁ」


 それエロい目で見てるだけなのである。

 だが、イフィーはそれを察してか、頬を少しだけ赤らめて呟いた。


「しょうがないにゃあ……」


 イフィーは──キザイルの手を取って、部屋の隅に向かった。

 そして、壁際でズボンをズルッと脱いで、服を静々とたくし上げた。

 こちらからは桃のような臀部が見えているが、キザイルからは前が見えている。


「おぉ……ある。それに……おぉ……」


 キザイルは何か納得したようだ。

 イフィーは服を元通りにしてから、キザイルと共に戻ってきた。


「イフィー君……。いや、イフィーさん。マジリスペクト」


「何かお主、イフィーに対して態度が変わっていないか?」


「大きさ……男の器の大きさを見てしまったからね……」


 よくわからないが、そういうことらしい。

 なんか我の中で、“人魔将軍イフィゲニア”というより、“よく脱ぐイフィー”というイメージが強くなってきちゃったのである。

 竜魔将軍は主婦ってるし、魔王軍って大丈夫なのであるかコレ……。


「あ、何かオウマ様が頭を抱えてるにゃ。よーしよしよし」


「いや、おっさんの頭をナデナデはしなくていいからね」


 イフィゲニアのナデナデを機敏な動きで回避した。

 ちぇっ、と残念そうな表情をされても困る。


「あ、それで前置きが長くなりましたが、ホワイトデーのことなんですにゃ」


「ほんと、すっごい長かったね~」


 やっと本題に入るらしい。

 ずいっとイフィーが顔を近づけてくる。

 猫っぽい口からは、ほんのりとオヤツの猫缶の香りが漂ってくる。


「ボクが見たところ、ステラさんの味覚はおかしいですにゃ。あのチョコをあとで味見しても、普通に美味しいとか言ってましたにゃ……。あ、どもですにゃ」


 口元に魚のフレークが付いていたので、布で拭いてあげた。


「そこでバレンタインデーの意趣返し、というわけではありませんが、あるヒミツ道具を使って……ゴロゴロゴロニャニャ……」


 キザイルも耳をいじったり、喉元を撫でたりし始めた。

 平和だな~。コタツとミカンが欲しい……いや、もう時期外れになっちゃうのであるか。

 とりあえず昼寝しよう。




* * * * * * * *




「はっ、つい流されてしまったにゃ!」


 なんかマジメなとき以外、イフィゲニアのIQが下がりまくっている気がする。


「仕切り直しでお願いしますにゃ! つまりステラさんの味覚を普通にして、様々なものを食べさせて仕返ししてやろうという作戦なのですにゃ!」


「イフィーさん。そんなことできるの?」


「にゃふふ……。パッパラパッパパーッパパーッ♪ 味覚過敏アメぇ~」


 水色髪の猫獣人が、お腹のポケットから、変な効果音を口ずさみながら道具を取り出した。


「イフィえもん! それでステラちゃんをやっつけるんだね!」


「そ~う~だ~よ~、キ~ザ~イ~ル~君~」


 何か此奴(こやつ)ら、口調が変なのだが……。

 おっさんとしては若者にツッコミが追いつかないので、魔王として、部下への安全確認だけはしておくことにした。


「イフィーよ、それは人体には害のない飴なのであるか?」


「あ、はいですにゃ。獣人たちのパーティーグッズみたいなもので、効果は10分ちょっとですにゃ」


「我は食べ物じゃないホワイトデーの“お返し”を用意していたのだが……。まぁ、面白そうなのでいっか。うん、別にいいのであるな。……よし、ぜひやろう!」


 キザイルがこちらを見てニヤニヤしてきている。


「オウマちゃん、やっぱりチョコのダメージが大きかったから、その仕返し? うひひ」


「そ、そそそそそんな大人げないことはしないのである!」




* * * * * * * *




「スッテラちゃん♪ 飴ちゃんあげるよ~!」


「いらん、キザイルから物をもらうなんて、絶対になにか裏があるに違いない」


 我たちは一階の広間まで降りてきていた。

 テーブルに座り、聖女修行のための書類などに手を付けていたステラ。

 王都からしばらく離れることになるので、勇者や騎士団の引き継ぎでなにやらあるらしい。


「あ、その飴はボクからホワイトデーのプレゼントですにゃ」


「なんだ、先に言ってくれ。イフィー君からのプレゼントならありがたく頂こう。うむ、甘くて美味しい」


 キザイルのときとは違い、ひょいパクと秒で食べた。

 普段からの信頼の差というか、キザイルは絶望的に落ち込んでいた。


「美味しいが……これは……おいひぃ……すぎりゅぅぅ~っ! んあぁっ!?」


 突然、ステラは頬を赤らめ、眼をとろんとさせながら身悶え始めた。

 自らを抱き締めるようにして、恍惚の表情。


「やっ、これ……すごいっ、ら、(らめ)ぇっ!」


「へっへっへ、ステラちゃん。すげぇ乱れようじゃねーかぁ……」


「にゃふふ……。これこれ、食欲(よく)にあらがえないメスネコの顔だにゃあ……」


 なんかキザイルとイフィゲニアがノリノリである。

 完全に桃色英雄譚の悪役にしか見えない。


「わ、私の身体はぁっ、どうしたというのぉッ!? あ、んぅ……っ」


「味覚過敏アメ──。

 それは大抵の食べ物を、超絶美味と感じてしまうようになる……天使のような悪魔の飴にゃ……。何人たりともあらがうことのできぬ、味覚の快楽にゃ!」


「そ、そんっらあぁぁっ!?」


 我、見てて恥ずかしくなってきたので、帰っていいのであるか……?

 ああ……残念ながらここが家なのである。

 部屋に……部屋に戻──。


「さぁ、オウマちゃん! オウマちゃんの白くてドロドロした熱い欲望を食らわせてやれ!」


「いや、百パーセント誤解される言い方だけど、それたぶん用意しておいたホワイトシチューであるか?」


「そう、白濁した液だよ!」


 うん、キザイルは生来のドエロであったな。

 人間の16歳男子とは、これが普通らしい。

 我はため息を吐きながら、用意してあった一皿をテーブルに置いた。

 エビやイカなどがタップリ入った、トロリとしたシーフードホワイトシチュー。

 湯気も立っていて熱々だ。


「に、匂いだけでもう我慢できにゃい……!!」


「ステラよ! 待つのだ!」


 我は真顔で制止をかける。


「熱いからフーフーしなければならぬ」


「……はい! お願いします!」


 え、我がするの。フーフーと。

 それとステラ、一瞬だけ真顔で冷静にならなかったか……。

 いや、だがしかし……、飴のせいで急いで食べてしまい、口の中をヤケドしてしまったら大変だ。


「仕方がない……。フーフー」


 スプーンの上の世界に、なみなみと揺れながらホワイトシチューの海ができている。

 息に吹かれて具材が踊る踊る。

 ステラの、ゴクリと唾を飲む音が艶めかしく聞こえた。


「はい、あーん」


「……あむっ」


 一口。


「……~ッデリシャスぅ。私は濃厚な白い海の中、多種多様な魚介類と泳いでいる! そして生命がスープとなり、無垢な私のカンバスを美味で書き殴るように──」


 突拍子もない謎解説が始まったのである……。

 って、ステラの着ている鎧が弾けた。


「はぁーッん──」


「な、なんでこうなるのであるか!?」


「オウマちゃん、あれは伝説の“魔力はだけ”だ……」


 何かキザイルが解説をし始めた。


「あまりにも美味しすぎると、魔力が体内から溢れでて、衣服をはじき飛ばすという。今回は鎧まで……Ohはだけパワー……」


「ちなみに『うーまーいーぞー!』と叫んで口からビームを出したり、城と合体するパターンもあるらしいにゃ」


 知りとうなかった、そんな人間世界の常識……。

 鎧が剥がれ落ちたステラは、あと1~2枚脱げてしまうと大変なことになりそうだ。


「さて、それじゃあ、本番にいくにゃ」


「ほ、本番だと……っ!? い、いったい私に何をする気なんだイフィー君……!」


「にゃふふ……自らが作った黒いぬっちょりしたアレ──チョコを食べてもらうにゃ」


「なん……だと……」


 ステラは口元から白い液体(シチュー)を垂らしながら必死に、味覚に抵抗しようとしていた。

 息はハァハァと荒く、肌は赤く上気している。


「あ、あと少しシチューを食べさせて、ステラちゃんを脱がせてからじゃダメなのかよぉ!?」


「ごめんにゃ、あんまり興味ないから飴の効果が切れる前に進めたいにゃ」


 ちなみに服はちゃんと着ている。

 卑猥な格好ではない。

 鎧がポロッと取れただけなのである。


「さぁ、ここに取り出しましたるは、ステラさんのバレンタインチョコだにゃ」


 イフィーが手に持っていたのは、その例のアレである。

 我とキザイルが即死したアレ。

 当時と違うのは、埋まっていたスケルトン君と、小型ハンマーが取り去られているくらいだろうか。

 スケルトン君、すっごい感謝しながら野に帰って行ったけど元気かなぁ……。


「これを、ステラさんに食べて頂くにゃ! 今の味覚過敏状態で食べたら……にゃふふ! あ、ちなみにステラさんは蘇生の加護がかかっているので安全だにゃ~」


「素朴な疑問だけど、そのチョコ。一ヶ月前のって、賞味期限は平気なのであるか?」


「表面にカビが生えていないどころか、野外放置してたのに、顕微鏡で見て菌の一つも繁殖していなかったにゃ。もっちゃりとした水分は維持されてるのに……」


「なにそれすごい」


 イフィーは小さなスプーンで半液(ゲル)状チョコをすくい取り、サッとステラの口に押し込んだ。


「う……」


「巻き進行だにゃ!」


「す、ステラ!?」


 さすがに自分の料理の味を実感させるためとはいえ、我にも、こう、罪悪感が……。


「だ、大丈夫であるか……?」


「む? 何がですか、オウマ殿?」


「何がって……」


「普通のチョコではないですか」


 あの即死チョコを食らって、平然としているステラ。

 眼をぱちくりとさせて、唖然としている我ら。


「ど、どういうことだ……」


「どういうことなのにゃ……」


「もしかしたら……。チョコが一ヶ月の間、熟成されて無害になったんじゃね!?」


「なるほど、キザイルさんニャイスアンサーだにゃ!」


 どれどれ、ためしに。

 ……と、キザイルとイフィーは指にチョコを付けて、口にパク──。


「う゛ッ」


「にう゛ゃッ」


 突然の死。

 一人と一匹は、キラキラと光って教会に転送されていった。

 良いやつらだったのに……。


 いや、待て。

 魔将軍の蘇生は大変なんだぞ!?

 なにこんなところで死んじゃってるのイフィゲニアァァ!!


 ……ま、いっか。

 実のところ丁度よくもある。


「ステラ、身体の火照りは取れたのであるか?」


「あ、はい。どうやら飴の効果とやらが切れていたらしいです」


 勇者の力か、聖女の才能かはわからぬが、状態異常が短いとかあるのだろうか。

 だが、我としてはステラと二人きりになれたので渡しやすい。

 ──用意してあったホワイトデーのプレゼントを。


「ステラ、これをやろう」


「これ、は?」


 我の手に掴まれている、ふわふわ、もこもこの物体。

 サイズは枕くらい。

 色はシンプルに白と黒。


「ぬ、ぬいぐるみという奴である!」


「え、ええ……?」


 なぜか困惑しているステラ。

 魔王である我が、ぬいぐるみを自作してプレゼントしてはいけないというのだろうか!?


「やっぱり恥ずかしいので、無かったことにしてよいだろうか……?」


「い、いえ! 頂きます! 嬉しいです! ですが、なぜぬいぐるみなのですか……?」


「しばらく王都を離れ寂しいだろうな~と、なにか形に残るものを送ろうと思った次第なのである」


「えーっと……それで、モチーフは何なのでしょう。二頭身で小っちゃくて、とても可愛らしいのですが」


 うぐ、痛いところを突いてきた。

 だが、問われたのなら言わねばならぬ。


「わ、我だ……」


「オウマ殿の……ぬいぐるみ?」


「魔王の姿を模しているのなら、それが一番の魔除けとなろう!」


「あ、オウマ殿。照れていますか?」


「そ、そんなことはないのである!」


 今日は3月14日。

 もう気温も上がってきているので、これは、その、そういうことなのである!


餞別(せんべつ)、ありがとうございます。向こうで毎日、話しかけますね」


「や、やめるのである! そんな恥ずかしいこと!」


「ふふっ」


 ステラはその日、一日中楽しそうにしていて、外から帰ってきたジャスティナは不思議そうに首をかしげていた。

近日、タイトルの【連載版】という部分を変更するかもしれません。

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新連載を開始しました。
国を救うことに疲れてしまった強すぎる竜装騎士が、相棒の竜と共に田舎に移り住むスローライフ(?)なお話です。
どうぞ、こちらもよろしくお願いします。


『伝説の竜装騎士は田舎で普通に暮らしたい ~SSSランク依頼の下請け辞めます!~』
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