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【連載版】ホームパーティーに誰も来なくて、冷めた手作り料理を孤独にモソモソ食べる魔王様『……そうだ! 王国軍に一般入隊して魔族を滅ぼそう!』  作者: タック
2章 ホームパーティーをしよう!

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9饗宴 ライオネルの過去。希望、羨望、渇望

※過去、少年時代のライオネル視点。

「貴様の名前はライオネルか」


 それが団長──ハーゲンから話しかけられた、初めての言葉だった。


 オレが貴族の次男坊として、騎士団に特別入団した直後のことだ。

 特別入団……つまり実力で騎士になったのではない。

 貴族の家ということで入れただけだ。

 オレ自身も、ただ箔を付ける意味というだけで目標はなかった。


 剣も基礎をかじっただけで、身体も特に鍛えてはいない平均的な少年。

 そんなオレに向かって、鬼──としか表現できないような表情、体躯の団長ハーゲンが話しかけてきたのだ。

 正直、ビビってしまった。


「は、はい! オレがライオネルです!」


 長い髪の団長は、高い背でオレを見下しながら、吐き捨てるように次の言葉を言った。

 生涯、忘れることのできない言葉。


「獅子では、竜には勝てんなぁ?」


「ど、どういう意味ですか?」


 団長と新米騎士という立場を超えて、オレはカチンときた。

 自分のライオネルという名前にはそれなりの誇りがあった。

 貴族としてのプライドを植え付けられたものなら、誰もが持つ誇りだ。


「戦うべき相手、粉砕すべき敵、殺すべきヤロウは魔族なんだぞ?

 悪魔に、不死に、機械に、そして竜に勝てると思うのか?

 てめぇみたいなひよっこの獅子が?」


「……魔物くらい、オレがいくらでも倒してやりますよ」


「ほう、いっぱしに言いやがったな。それじゃあ、俺とやろうぜ?」


「え……?」


 団長は鉄の剣をこちらに抜きはなった。

 オレは信じられなかった。

 いい歳した団長が、新米騎士に……それも貴族に向かっていきなり敵対行動を取ったのだ。


 今までチヤホヤされてきた常識が崩された瞬間だった。

 その後は一方的に剣で攻撃され続けた。

 死ぬかと思ったが、後で見ると鎧の部分を殴打していただけで、死ぬほど痛い打撲痕が残りまくっただけだった。




* * * * * * * *




 それからしばらくは反骨心と、強さへの憧れが複雑に渦巻いていた。

 くやしいけど団長は強い。

 オレも強くなりたい。


 それが日々、真剣に訓練を重ねさせる結果となった。

 貴族だったころの意識とは大違いだ。

 手の豆を潰し、それでも剣を握り続け、また潰し、剣を振り、潰し。

 つねに重い甲冑を着込み、常在戦場を意識する。


 それを何年も続けたところで、ふと気が付いた。

 この王都は魔王軍に侵攻もされないし、野良のモンスターすら現れない。

 周りの貴族騎士たちはそれを知ってか、オレをあざ笑うようになってきていた。


 ──騎士団なんて箔さえつけちまえばいいのだから、貴族様がマジメにやる必要なんてないだろう、と。


 そうだ。そうなのだ。

 この王都ではそれが普通。

 ……だが、オレに火を付けた団長は違った。


 本気で魔族を憎み、殺したがっている。

 なぜなのか?

 数年の付き合いで、多少は親しくなっていた団長に聞いてみた。


「家族全員を魔族に殺されたのさ」


 オレは信じられなかった。

 前線地域以外では平和な世の中で、そんな状況が起こるというのは確率的に低すぎる。

 基本的に魔王軍は前線で防げているし、野良の魔物でさえも人里には近付かない。

 魔物との戦闘ですら、蘇生の加護で生き返れるのだ。


「ありえないって顔をしてるな?

 だが、俺の家族は前線からも離れた村で、俺が帰ったら家の中は死体だらけ。

 爪や牙で殺された痕跡、あんなのは人間じゃねぇ」


「そ、蘇生の加護は……?」


「んなもん、今から戦うってやつ以外が使っても一定時間で効果が切れるだろ。騎士である俺たちも日常では使わんシロモノだ」


 そうか……非戦闘員は蘇生の加護という概念すら薄い。

 オレが団長に持った“鬼”という印象は間違って無かった。

 ただし──。


「それから俺は前線に志願し、魔物を斬って斬って斬りまくった。もちろん、人語を解さない奴らに問い掛けても、カタキが誰かなんてわからなかったけどな」


 それは“復讐鬼”だった。

 だが、強さの秘密がわかった。

 オレも前線に志願して、王都騎士団を離れることにした。




* * * * * * * *




 強くなりたい。

 男なら、それにもう理由は必要なかった。

 その“前線”と呼ばれる地でひたすら戦った。


 魔物は強く、味方も強い。

 蘇生の加護が常時かかっている状態なので躊躇なく相打ちを狙い、相打ちを狙われる。

 殺し、殺され、殺し、殺され。

 魔物との真っ赤な血液のぶっかけ合い。

 最初は気が狂いそうだった。


 日常的に転がっている“死”。

 実際には生き返れるという結果が保証されているのだが──1度は本当に死ぬのだ。

 皮を剥がされる痛み、肉を斬られる痛み、骨を砕かれる痛み、血液を吸われる痛み、身体を潰される痛み、心臓をえぐられる痛み。

 痛い、痛い、痛い、痛い、痛い。

 無限とも言える苦痛地獄を味わわされ、正気を保つというのは難しい。


 上達し、うまく生き残り、殺していくことを覚えるのが一番の近道となる。

 目の焦点が合わないオレの目に映る前線──そこに一人の少女がいた。

 ステラという名前のまだ年端もいかない少女。


 年齢も幼く、弱いという条件が蘇生の加護の回転を早くしているようで、死んでは即蘇生され、前線へ出向くというのを物凄いサイクルで行っていた。

 一日に何度も何度も何度も何度も殺されて生き返り。

 それを何日も、何十日も、何年も続ける。


 オレも強くはなりたいとは思っていたが……アレは本物の狂人だ。

 普通は一回死んだらかなりの休息を挟む。

 身体的に平気でも、精神的にダメなのだ。死というのは心を(むしば)む。


 背負っているモノが違いすぎる。

 実際に命を賭けて戦ってみてわかった。

 団長も、ステラも……別次元の覚悟を持つ存在だ。


 常人のように逃げで狂えず、覚悟の方にだけ狂って、際限なく強くなっていくのだろう。求める何かにたどり着くまで。

 オレには……無理だ。

 そこまで出来ない。


 ホンモノを見てしまったら……オレはある程度でいいと納得させてしまう。

 弱い心の自分自身を。


 ──ほどほどに強くなったところで、オレは王都へと戻った。




 そして引退した団長のあとを継ぎ、新たな団長として騎士団を任されることになる。

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新連載を開始しました。
国を救うことに疲れてしまった強すぎる竜装騎士が、相棒の竜と共に田舎に移り住むスローライフ(?)なお話です。
どうぞ、こちらもよろしくお願いします。


『伝説の竜装騎士は田舎で普通に暮らしたい ~SSSランク依頼の下請け辞めます!~』
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