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【連載版】ホームパーティーに誰も来なくて、冷めた手作り料理を孤独にモソモソ食べる魔王様『……そうだ! 王国軍に一般入隊して魔族を滅ぼそう!』  作者: タック
2章 ホームパーティーをしよう!

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5饗宴 12歳少女に化けた魔王様、教会に潜入してみたの巻

 昨日届けられた書簡──今回の問題を整理してみよう。


 ジャスティナが勇者として目覚め、最強と(うた)われていたロトシアですら倒せなかった、鳥魔将軍グゴリオンを倒してしまったと認識されたことが発端(ほったん)だ。

 それに目を付けた大司教バギエル──いや、背後にある教会や貴族たちの巨大な思惑も絡んで、ジャスティナを手に入れたがっている。


 年端もいかないジャスティナ相手なら、今から教育すれば自分たちの都合のいい手駒(ゆうしゃ)として洗脳できるからだろう。


 我は魔王ゆえに、人間のジャスティナ個人に肩入れなんてこれっぽっちもせぬが、本当にこれっぽっちも肩入れなんてせぬが、我のホームパーティーを潰されては困る。

 というわけで、教会、貴族──つまり人間すべてを敵に回すことになっても、ジャスティナを守る事にした。


 だが、問題はどうやってジャスティナを守るかだ。

 以前のように力尽くでバギエルを止めたとしても、再びこの事態になるだろう。

 今回ははっきりと教会公認の書簡が送られてきたからな。


 教会の規模は、人間の世界全土に巣くっている。


 ただ1人の“教皇”と呼ばれる禁忌聖女(ミスティックセイント)をトップに、12人の異能持つ“枢機卿”が事実的に運営。

 現地の管理を部下の“大司教”──つまりバギエルのような者が執り行っているのだ。


 構造的に魔王軍と似ている。

 ただ1人の魔王(われ)をトップに、12人の魔将軍──。

 不愉快だが対のような存在だ。


 とにかく、この仕組みでは末端のバギエルを倒したところで何の意味もない。


 ──そういうわけで、我は決めたのだ!

 いっつも隕石を落っことしたり、殴ったり、隕石を落っことしたりする、ごり押し魔王に思われていそうだが!

 インテリジェンス溢れまくりな知性派の我は、潜入して相手の内部から破壊してやることにしたのだ!


「フゥーハハハハ! 完璧なのである!」


 響く少女のけたたましい声。


 ……我だよ!!

 12歳少女、魔王始めました。

 いや、この場合は6000歳のおっさん魔王が、12歳の少女の外見になりました、だな。


 顔バレしてない少女に化けた我が、人間の教会に入り込んで、相手の情報を引き出して、弱みを握ったりと魔王的な活躍をする予定なのである!


 少しだけ『前、一般兵に化けたのに、王様に言いくるめられちゃったの忘れてない?』とか内心ちょっとトラウマったりもするのだが、きっと、たぶん、もう大丈夫なはずなのである!

 あのときは人間の狡猾さを学習していなかった。


 今ならもう人間の様々な面も学んだし、ぜーったい平気に決まっている……!

 失敗フラグっぽいけど気のせいなのである!

 フゥーハハハ──。


「お嬢ちゃん、教会で高笑いを上げちゃいけないよ。静かにね……」


「あ、はい。ごめんなさいなのである……」


 ここは朝の教会。


 簡易的なものではなく、王都では一番デカい教会なので、開放されている礼拝堂もかなりの規模だ。

 木製の長いすが数十は並んでおり、祈りに訪れている人間たちがゴミのように集まっている。

 ついつい、ステンドグラスを背にする生意気な神々の巨像を目にしたら、“フゥーハハハ”と高笑いの一つもあげてしまいたくなるのが魔王であろう?


 だが、我は人間の少女に化けているのだ。

 小さき身体っぽく、小さく可憐な声で謝るしかない。

 声がおっさんボイスじゃないのに激しく違和感があるのだが、まぁ慣れるだろう。


「さて、これからどうしようかな……」


 一見何も考えてなさそうな顔の、たぶん知らないけどIQ500000億くらいの知的な少女の我。

 とりあえず教会にきてはみたが、そこからどうするかはあまり決めていなかった。

 なんか、こう、知的なら行き当たりばったりでもアイディアが思い浮かぶはずだが?

 うぅむ、知的な魔王的に何か思いつきそう──……。


 そうだ! バギエルに直接会えば早いのであるな!

 我、すごいナイスアイディアなのである!

 低年齢に変化したせいで、ちょっと“思考まで少女化”しているような気もするのだが、たぶん気のせいなのである!

 若いというだけで何もかもが上手くいきそうな気分とか、いやいや、ダイジョーブ博士(はくし)


「そこのシスター、大司教バギエル猊下(げいか)を探しているのだが?」


「えーっと、たぶんバギエル様は、この時間だと執務室でお仕事中だと思いますが……」


「サンキューなのである。早速、会いに行くのである!」


 えっ、という声と共にシスターから引き留められる。


「お嬢さん、バギエル様はお忙しい方なので、事前に面会約束(アポイントメント)を取らないとダメなのよ? だから、今日の所はお祈りだけで──」


「なるほど、わかったのである」


 我は忠告を華麗にスルー。

 案内板を探して、そのまま執務室へと向かった。

 普通なら約束を取り付けてから、再度会いに来るのが人間のマナーなのだろう。

 だが、我には関係ない……。

 なぜなら、我という存在自体がアポイントメントのようなものなのである!

 たぶんそんな感じ! ナウなヤングはレッツゴー!


 ──その場からの去り際、禍々しい剣を腰に下げた“騎士団長ライオネル”らしき姿を見かけたが、気のせいだろう。




* * * * * * * *




 若さ特有の自信に満ち溢れた我は、それっぽい通路を見つけたので突き進む。


「ちょっとキミ、ここは関係者以外立ち入り禁止だよ? 外に出ようね~」


「ふむ、それくらい知っているが?」


 思いっきり、出入り口に“関係者以外立ち入り禁止”と書いてあった。

 我はそれを無視して通路を進んでいるのだ。

 そして警備の修道兵に止められたという状況。


「あ、ちょっ!? だからそっちに進んじゃダメだって!?」


 相手の装備は鎖帷子(チェインメイル)に、法衣をサーコートのように重ね着して、腰からメイスを下げている。

 とくに魔力も付与されていないようなので軽装の部類だろう。


「ククク……木っ端(つまらぬもの)よ。我が道を遮る輩は、何人(なんびと)たりとも容赦はせん」


 我の装備はというと、丸腰である。

 服も黒いゴシックドレスのようなものだが、魔法でそう見せているだけで実質的には全裸である。

 格好良いことを言っちゃってるけど、そう──丸腰というより丸裸である!


「フゥーハハハハ!!」


 なんかテンションが上がっちゃった我は少女ボイスで高笑いをしながら、通路の隅に置いてあったモップを手に取る。

 棒術の真似事でクルクルと回したあと、バシッと腰だめに構えてポーズを決める。


「この暗黒の輝きを恐れぬならば、かかってこい!」


「暗いのか光ってるのか、どっちなの……。それにかかってこようとしてるのはキミの方じゃ──」


「おおっと、手がすべったぁ!」


 我は的確すぎるツッコミをした修道兵を棒で──はっ倒した。

 おっさんと違って、得てして少女とはこんなものなのである!


「お、おい! そこの少女! なにをしているんだ!」


 ……目撃されて、修道兵たちが続々と集まってきた。

 やばないですか、これ。


 ──ええい、若さパワーで何とかなるだろう!


「大司教バギエル猊下に会いに来ただけである!」


「も、もしかして魔族側が送り込んだ暗殺者か!?」


 魔王なので魔族側なのは確かだが、暗殺者とは違う。本気で暗殺をしようとするのなら、もっと適した者をチョイスしているだろう。


 たとえば潜入、撹乱(かくらん)に特化した魔将軍──“人魔将軍イフィゲニア”。

 彼奴(あやつ)を人間の都市に送り込めば、一瞬にして崩壊させてしまうこともあるのだ。

 ……この前ワンパンしてしまったが、まぁ、この後でまた出会うこともあるかもしれないのであるな。うん。


「──不審者め、ここは通さんぞ!」


 少女の姿をした我に、10人ほどの修道兵が群がってくる。

 潜入、包囲という燃えるシチュエーションで、無駄にテンションが上がっている我。

 ニヤリと笑いながら棒術を披露してやることにした。


「なッ!?」


 メイスを持った修道兵の手の甲を、ヤナギの如く棒のしなり(・・・)を利用してバシッと叩き、ひるんだスキに──。


「チェストぉ!」


 ふわりスカートをひるがえしながら飛び上がり、相手の顔面を踏み付けて、靴跡をスタンプ。


「ぐあァッ!?」


 その1人を気絶させたことを皮切りに、修道兵との戦いが始まった。

 振り下ろされるメイス、それをひらりと(かわ)す我。

 カウンターで掌底の打撃、離れた相手には棒術。


 どう見てもただの少女とは思えぬ身のこなしだが……。

 ま、まぁ緊急事態だから仕方が無いよネ!   


「何の騒ぎだ、これはァ!?」


 半数以上を気絶させたところで、目的の人物が向こうからやってきた。

 ──大司教バギエル。


「こ、これはバギエル様! この少女がバギエル様に害をなそうと暴れていまして──」


(いな)。……我は、大司教バギエル猊下に会いに来ただけなのである」


 ほぅ、とバギエルはこちらを値踏みするような、初老らしからぬ鋭い眼差しを投げかけてくる。


「少女よォ、名はなんと申す……?」


 ……名前なんて考えていなかった。

 どうしよう?


 うーん……テキトーでいっか。


「マーオ」


「よかろう、マーオとやら。我の部屋にくると良ィ」


 良いの!? 展開早いな!?

 まるで竜の英雄譚とかで、初っぱなでラスボス戦やらして、負け確になっているみたいなお約束の既視感まで覚えるくらいだ!


 ……いや、だが、よく考えたら合理的だ。

 バギエルは都合の良い手駒を育てるために、幼く力持つものを求めていたはず。


 それなら我がその存在(しょうじょ)となってアピールすれば、おのずとバギエルから近付いてくる。

 行き当たりばったりっぽいが、実は無意識に計算していた我すごい!

 若いってすごいのである!

 少女バンザイ! 12歳の幼い少女バンザイ!


 さぁ、どうくるバギエル!




* * * * * * * *




「何か飲み物でも飲むかァ? それとも先にシャワーかァ?」


「……は?」


 我は状況がつかめない。

 執務室で高度かつ知的な駆け引きか、魔族のアサシンと疑って罠でもあるかと思っていたのだが──。


「スマセン、ここどこなのであるか?」


「見ての通り、(みども)の寝室だァが?」


 そう、連れてこられたのは明らかに執務室ではない。

 天蓋付きのベッドが置かれ、テーブルには酒。

 棚にはぬいぐるみや、なんか使い方のわからないオモチャが陳列されている。


「みどもに会いにィ来たということは、金に困って身体を差し出しにィ来たか、武功を求めて身体を差し出しにィ来たか──」


「いえ……」


「ふゥむ、それならやはり──。

 みどもの渋い魅力に引きつけられて、その(たか)ぶりをどうしていィかわからずに、幼い劣情を持て余して……身体を差し出しに来たのだなァ?」


 待て、ちょっと待つのである。

 今の我はおっさんじゃなく、12歳の少女の外見である。

 その12歳少女になにを言っているの、この聖職者の立場にあるバギエルは。


 まだ元のおっさんに対してなら……いや、それもおかしいのであるが。

 とにかくなんだ、この状況は……。


「どぅひひ……顔も可愛らしくゥ、未成熟の素晴らしい身体(かじつ)だァ」


 こ、これは!?

 もしかして、あの聖剣と同類で……ロリコンという性癖なのであるか……ッ!?

 我、もしかして変な意味で大ピンチなのであるか!?


 どうなっちゃうの我!?

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新連載を開始しました。
国を救うことに疲れてしまった強すぎる竜装騎士が、相棒の竜と共に田舎に移り住むスローライフ(?)なお話です。
どうぞ、こちらもよろしくお願いします。


『伝説の竜装騎士は田舎で普通に暮らしたい ~SSSランク依頼の下請け辞めます!~』
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