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【連載版】ホームパーティーに誰も来なくて、冷めた手作り料理を孤独にモソモソ食べる魔王様『……そうだ! 王国軍に一般入隊して魔族を滅ぼそう!』  作者: タック
2章 ホームパーティーをしよう!

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3饗宴 新たなる我が城

「ヒソヒソ……あんなにマジメだったステラさんが……」


「……あらやだ奥さん。もしかして、あの前を歩くおっさんが性的な弱みを握って……」


 我は道を歩いているのである。

 道……ウワサ好き主婦たちの(いぶか)しげな視線を受けながら、魔王道を歩き続ける我。

 まだ登り始めたばかりだ、この長く険しい魔王坂を──。


 い、いかん! ちょっと精神にダメージを受けすぎて消滅しそうになっていた!


「オウマ殿、着きました。ここが私とジャスティナの家です」


「そ、そうであるか」


 比較的治安の良い、裕福な者たちが住む区画。

 そこを進んで、一軒の家の前まできたのだ。

 人間の家というのはあまり知らないが、割と大きい方ではないのだろうか。


 二階建てで、外から見ただけでも部屋数10はくだらないように見える。

 外観もそれなりに金をかけていそうだ。

 屋敷──といった方が近いかもしれない。


「まってたよ、オウマ!」


 我たちを待ちわびていたのか、少しだけ空いていたドアから覗き込んでいたジャスティナが飛び出してきた。

 たぶん、この出待ちを知っていてステラはお姉さんモードに戻ったのだろう。


 ああ、ジャスティナ。救いの幼女。ストッパーになれるのはこの子しかいない。


「あれ? オウマ、何かちっちゃくなってない?」


「小っちゃくないよ~、気のせいダヨ~」


 ジャスティナは眼がいいので、我の状態も無意識に感じ取っているのだろう。

 我はここにくるまで、多大なる精神的ダメージを受けた。


 超棒読みで桃色(エッチ)な英雄譚の朗読を続けてくるステラを背に、王城近くの兵舎からここまで歩いてきたのだ。

 人々の目が非常に痛かった。

 なまじ、ステラは勇者として有名で、我はおっさんである。

 その組み合わせで、それはもう“針のむしろ”すら生ぬるい、地獄の中の地獄。


 しかも、我からは人間の基準があまりわからないのだが、キザイルがいうにはステラは16歳の美少女で、魅力的な大きな胸部分の甲冑だけを外している状態。

 それが後ろからぴったりとくっついて、大まじめに官能朗読を続けていたのだ。


「ふふ、オウマ殿の望みを叶えて差し上げられたと思うと、胸が温かくなりますね」


 やり遂げた感で充実のステラ。

 ゲッソリとしている我とは正反対である。


 全世界の勇者よ!

 我を殺すには、古今東西ありとあらゆる聖剣、魔剣、神剣、上級第一位魔法が必要と思うたか!?

 残念ながら、今の精神的ダメージを喰ろうた我なら、ひのきの棒で倒せるぞォ!

 フゥーハハハハハハハハ!!


「──はぁ……歩き疲れたので、お邪魔(・・・)するのである」


 フラフラとした足取りで玄関から入ろうとする我。

 それを見たジャスティナは頬をプクッと膨らませてきた。


「もうオウマの家でもあるんですから──『ただいま』ですよ?」


 幼子に諭されてしまった。

 たしかに他人行儀すぎたかも知れない。


「では……ただいまなのである! 我が城!」


「ハハハ。オウマ殿、さすがに城ではないですけどね」


「あははっ、オウマおっかし~」


 我もつい、釣られ笑いをしてしまう。

 これは家族として……、三人で笑い合っているのだろうか。

 久しく感じていなかった気分だ。




* * * * * * * *




「ほう、広い割に手入れが行き届いているな」


 玄関はシックで落ち着いた色でまとめられていて、高級木材の素材を活かした建築となっていた。

 見えるところはキチンと掃除がされているようで、隅の方にもホコリが落ちていない。

 おまけに高いところも拭かれているようだ。


「掃除は得意なのだな、ステラよ。……掃除は」


 料理というか、食の感覚についてはおかしいが、とは言わないでおいた。


「いえ、恥ずかしながら、たまにお手伝いさんに来て頂いているのです。

 近所の新妻さんなのですが、ジャスの面倒も見てくれたりと、とても良い方です」


「なるほど」


 ステラ自身の家事スキルについては、怖くて聞くことはできない。

 いや、むしろ聞かない方がいいのかもしれない。

 世の中、知らない方が幸せなこともある。

 少なくとも朗読スキルは知りたくなかった……。


「では、オウマ殿。ご案内致します」


「じゃあ、あたしはそのあいだに、お茶菓子でもさがしておくね!」


「ステラ、案内よろしく頼む。ジャスティナもありがとうなのである」


 その言葉通り、広い家の案内が始まった。

 我としては、ただの案内でも気を付けなければいけない。

 もう魔王とバレるようなことは気を付けすぎなくてもいいとしても、ステラからの精神的ダメージを食らうことは避けたい。





 ──そんな警戒をしつつ、まず階段から二階に上がった。


「こちらがオウマ殿の部屋になります。空き部屋は多いので、気に入らなければお好きな部屋を使ってください」


「ははは、我はどんな部屋でも大丈夫なのである。あの狭っ苦しい兵舎でキザイルのイビキにも耐えたのだからな」


 割り当てられた二階の一室は、ベッドにタンスにクローゼット、机まで用意されていた。

 窓ガラスも透明度が高く、光をよく取り込めそうだ。

 とりあえず少ない手荷物を置いて、案内を待たせているステラの元へ戻る。


「部屋チェンジしたいのであれば、オススメはもちろん私の寝室ですね! 一緒に寝るのでベッドも一つで済みますよ?」


「えーっと、案内の続きを頼むのである」


「はい! カギはいつでも開けておきますね!」


 ……我の部屋のカギはしっかりとかけておこう。

 この家は危険がいっぱいなのである。




 ──次に案内されたのはキッチン。


「ここはあまり使わない場所ですね。なぜか使おうとすると止められるんです」


 必死に止めるであろうジャスティナと、たまにくるお手伝いさんという人の苦労がわかるぅー。我わかるぅー。

 だが、使わずにいるのは勿体ないくらい調理器具が揃っていて、何品も同時に作れる窯や火魔術コンロ、広さがある。


「わ、我が使ってもいいのであるか?」


 そわそわ。


「殿方のオウマ殿にそのようなことをさせるわけには……。

 料理とは、食うか食われるかで生きたままモンスターを丸ごとミンチにしたりとか、石の裏にくっついている新鮮な虫を探したり大変なのですよ?」


 ……サバイバル生活でもしてるの、この娘。


「も、もっと軽い料理なのである。趣味的な!」


「なるほど、そういう趣味をお持ちとは可愛いオウマ殿だ!

 ぜひ、女体盛りを作るときは使ってください! 私を!」


 ご近所に聞こえませんよーに、ご近所に聞こえませんよーに。

 というか偏りすぎた知識が非常に怖いのである。なに、女体盛りって。

 だが、これでホームパーティーをするときのキッチンを確保できた。

 テンションが上がってきたのである!


「オウマ殿は女体盛りはいける口っと……メモメモ」


 何かテンションが上がった原因が勘違いされて、特殊な性癖と勘違いされてしまったのである……。

 ショボーンなのである。




 また精神が弱った状態でトボトボ歩きながら案内されたのは、かなりの危険地帯だった。

 その名はバスルーム。


「ここも使われていません」


 よかった、安全だ。

 いや、だが、うら若き女性がバスルームを使わないとはどういうことなのだろうか。つい気になってしまう。


「ふむ、なぜであるか?」


「ええと……それは、水を大量に()んできて、湯を沸かさなければならないのですが、恥ずかしながら私は初級魔術すら使えないので……」


 ああ、なるほど。理解した。

 人間の世界では技術不足によって、大量の湯を沸かせるのに手間がかかるというのか。

 魔術も使えないとなると、それは大変なのである。


「なので、普段は少し離れた場所にある共同浴場を──」


「わかったのである。我が何とかするのである」


 離れた場所とか、幼いジャスティナが湯冷めして風邪でもひいたらいけない。

 ここは我が火魔法と水魔法を使い、家風呂に入れるようにした方がいい。

 我もお風呂大好きだし。湯船にゆっくり浸かりたい。


 それに、戦闘に使えない程度の初級火魔術、水魔術くらいは使える設定に話しておいても問題はないだろう。

 今までは特に言う機会が無かったとかの理由にして。


「さすがオウマ殿! 火も自由自在ですね!」


「そう、我が──……ん?」


 今、火も自由自在とか言ったか、ステラは?

 まだ我、誰にも魔術とか魔法が使えることは言ってなかったと思うのだが……。


「──あ、いえ、キッチンで火魔術コンロを見ていたので、実は火魔術を使えるんじゃないかなーって思ってしまって!!」


 たぶん我の表情を見て慌てたステラは、急いで弁明をしてきた。


「な、なるほどなのである。実は我、独り暮らし用に初級火魔術、水魔術くらいは使えるのである。もちろん攻撃とかには使えぬが……」


 ステラの勘が良すぎるというか、違和感があるというか……。

 だが、向こうの説明は理に適っているし、気にしすぎも精神に良くないだろう。


「ちなみに私が風呂に入っているときは、いつでも開け放っておくので、オウマ殿は偶然を装って入ってきてください!」


 よし、今は案内を続けてもらおう。

 早くこの場から立ち去らないと危険だ。




 最後は地下室を案内してもらった。

 頑丈な石造りの狭い一室で、ランタンが妖しい雰囲気を演出している。

 対防諜魔法などをかければ、簡単な作業場として使えそうだ。

 今後、霊薬作りなどはここで行おう。


 そして地下から上がって一息。


「──というわけで、オウマ殿! 一通りの案内は終わりました! お茶をどうぞ!」


 一階のリビングに戻ってきた我とステラ。

 テーブルに座り、湯気をたてるティーカップが置かれた。


「これ、ステラが煎れたのか……?」


「いえ、ジャスがしたいというので。……きっと、あの子も背伸びをしたくて仕方の無い年頃なんでしょうね。微笑ましいことです」


 予想だと、ステラがお茶を入れるとやべぇために、ジャスティナが自衛しているのだろう。

 6歳の割にしっかりしている理由の一つかもしれない……。

 ジャスティナに深く感謝をしつつ、香りを楽しみながらお茶を飲む。


 ──というところで気が付いた。

 テーブルの隅に、布袋が置いてある。

 茶菓子か何かだろか?


 いや、茶菓子はジャスティナが別室に探しに行ってくれているはずだ。


「気になりますか? その布袋──」


 我の視線から察して、ステラが話しかけてきていた。


「あの洞窟で引き抜いた聖剣です。

 鳥魔将軍グゴリオンとの戦いで砕かれてしまったのを、後で泣きながらジャスが破片を拾い集めて、それを入れてあるのです」


 あのオリハルコン製の計測聖剣か……。

 戦闘用でも無い量産品のクセに、ジャスティナを守るために剣として戦ったのだな。

 まったく、無茶なことをするやつだ。


 ……教育に悪い性格だったが、持ち主を守るという立派な勤めは果たそうとしたのであるな。

 もう砕けた衝撃で人格は飛んでしまったかもしれないが、素材のオリハルコンをいつか打ち直して、再び聖剣として生まれ変わらせてやるのも良いかもしれない。


 それだけのことをしてくれた、仲間の1人ともいえる存在だったのだから。

 感謝するぞ、聖剣よ。

 その失った人格が形を変えたとしても、決してお主のことは忘れな──。


『幼女がいる家の空気、ンマァイ!』


 袋の中から、教育に悪いボイスが聞こえてきた。

 どうやら破片になっても、そのロリコンの執念が人格を維持させていたのだろう。


「そぉい!」


 我は窓を開けて、清々しいほどの青空へ──破片の袋を投げ飛ばした。

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新連載を開始しました。
国を救うことに疲れてしまった強すぎる竜装騎士が、相棒の竜と共に田舎に移り住むスローライフ(?)なお話です。
どうぞ、こちらもよろしくお願いします。


『伝説の竜装騎士は田舎で普通に暮らしたい ~SSSランク依頼の下請け辞めます!~』
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