表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「夏夜に見た悪夢」  作者: 四つ足ジョバンニ
【04】 閉ざされた中の死 ― Death in the Closed ―
8/17

リーダビリティ

「いったい、誰がこんなこと……」

 両膝を抱えてしゃがみ込んでいたココナが、弱々しく、ぽつりと呟いた。

 花火用に使う予定でいた蝋燭の、頼りない灯りで薄暗く照らされた休憩室に集うボクたちの間には、絶望――とまではいかないけど、重たい空気が漂っている。

「それを考えるよりも、まず先に、手分けして、なにか脱出口になる場所とか、脱出に使えるなにかがないか、調べて回ったほうが良い」

 ボクが提案し、皆元気をなくしているようでありながらも、それ以外にないだろうなと同意を示し、ボクたちは、手分けして、この最上階にある各部屋を調べて回ることにした。

 一人で行動するのは危険が伴うだろうからと、二人一組になることにして、ボクとココナ、マキトとヒロタ、シュンとサキがペアになることに決まった。

 美少女と別のペアにされたマキトは、その組み合わせに、当然のように不満をぶつけたけれど、サキは極度の人見知りなので、そのサキが一番打ち解けているのはシュンだからと、ぶつぶつと文句を言うマキトを、なんとか納得させた。

 この危機的状況下にあって、一人一人が、身勝手な要望を通したりすれば、危険度がそれだけ増すことにもなりかねない。

 炭鉱の中に、大勢が閉じこめられたりするなんて事件が現実に起きたときも、皆が一丸となって協力したおかげで、その窮地を脱することができたという例もある。

 『クローズドサークル』――そう呼ばれるような、外界と隔絶された場所に閉じこめられたりした場合、もっとも危険視されるのは、命の危機を前に、それぞれが投げやりになったり、不満をぶつけ合ったりして、その輪が乱れてしまうことなのだ。

 そこらへんのことは、幼い子供でもあるまいし、マキトも分かってくれているはずだ。

 あと、そういった状況下におかれた場合、他の皆を勇気づけたりしてくれるような、リーダビリティをとる人物の存在が重要になってくるわけだけど、この中で、それに見合う人物は、残念ながらいないように思える。

 ボク自身も、自分でその器じゃないことぐらい自覚している。

 マキトは、普段は気の良いやつだけど、意外と落ちこみやすかったり、怒りっぽいところがあったりもする。

 天然ココナは問題外。

 ヒロタは、態度だけは一人前だけど、実は臆病なチキン男子。

 シュンは、頭は良いけど、控え目で、周りを引っ張っていくような強さはない。

 サキもまた、まだ出会って間もないけれど、控え目な上に人見知りだから、上に立つのは無理だろう。

 誰か一人でも、しっかりとした大人がいてくれさえすれば――。

 どうしてもそう望んでしまうけれど、いないものをとやかく言ったところで、状況は改善されない。

 とりあえず、柄じゃないけど、できるだけ、皆を一つにまとめられるように、頑張ってみるか……。

 そんな風に考えながら、ボクは、ココナと一緒に、奥で閉じていた防火シャッターの傍に並ぶ病室の一つを調べて回った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ