青春に帰る
初日 Phase 1
緊張の瞬間がやって来た。僕の望んでいない青春がこれから始まるのだ。
朝、いつもより寝付けずに母親に叩き起こされてやっと布団の中で四つん這いになる。中身の詰まっているのか分からない頭を大切そうに持ち上げて、布団から這いずり出した。
朝御飯は共働きの為に用意されているでもなく、歯を磨き、トイレを済ませて制服に袖を通せばもう玄関のドアに手を掛けられる。
そうして起きてから10分足らずで家を飛び出し、新しくかってもらった自転車にまだ筆箱しか入っていない鞄を叩き込んでスタンドを蹴飛ばす。
ペダルに足を乗せたのはもう昔のことで、今は風となって駅を目指している。これからタイムを更に縮めるのが僕のこれからの課題だなと、朝に弱い頭では早起きするなど全く思慮にも浮かばなかった。
もう体力ゲージはとっくに赤くなっており、今少しばかりの諦めでも思い浮かべようものならペダルを回転させている両足は活動を止めてしまうだろう。
その考え出した頃、駅が目の前に姿を現してくれた。
お前に会いたかったんだよ!今までで駅が一番恋しくなった瞬間である。自転車を停めると同時に定刻通りの電車が視界の端に映り、さあ走れ!電車はそう怒鳴るようにブレーキ音を響かせ、僕は改札まで最後の脚力を使わされた。