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ぼくのかかった変な病気  作者: 日木玉 鉄才
5/8

陰磐城の里へ

大きな車輪の中央にこれまた大きな顔があった。


顔と車輪だけで手足や体などまったくない。


車輪がぼくの身長ぐらいあるなら

顔はぼくの上半身ぐらいの大きさだ。


すごいギョロ目で口も鼻も大きく

とても怖い。


車輪には火の玉が六つくっついており

その車輪は宙に浮いてゆっくりと回っていた。


「んあ。わぼうか。ど、どこに行きたいんだ?」

とかっちゃんが話した。


「あぼうに用があるから陰磐城の里まで連れてってよ」


「か、陰磐城か。

ええけど、そ、そいつらも連れていくんか?」


「うん。みんな仲間だよ」

とわぼうは言うとにっこりと笑った。


「そ、そうか。

じゃあ、そこの、に、荷台に乗りな」


かっちゃんがあごを向けた場所に

木で出来た馬車の馬がいない状態のような荷台があった。


その荷台には屋根などなく

車輪の付いた箱のような形だ。


わぼうが背中を押して

ぼくらを荷台に乗せる。


ぼくらが全員乗り終えると

かっちゃんが荷台の前に付いた。


するとかっちゃんと共に荷台が浮き上がっていく。


「え? 空を飛んでいくの?」

とぼくは驚いて聞いた。


「そうだよ。早いよ」

とわぼうはうれしそうに答えた。


「かっちゃんって何者なの?」

と希美子が聞いていた。


「ん? どうだろう? 

かっちゃんって何者なのかな? 

かっちゃん、自分が何者かわかる?」

とわぼうがかっちゃんに話しかけた。


ぼくたちの乗った荷台は空に浮かび

もう学校の三階よりも高くなっている。


下を見るのが少し怖かった。


「お、おらは火の車だと思う」

とかっちゃんが答えた。


「だって。火の車だって。

また神様じゃなかったね」


わぼうはそう言うと「残念」と付け加えた。


かっちゃんはぼくたちを引っ張って

飛び始めた。


車に乗っているぐらいのスピードが

出ているように感じる。


顔に風が当たり、髪が揺れる。


でも空を飛んでいるのはとても気持ちが良かった。


遠くの山々が見渡せたし

海だって見える。


それにすぐ近くに雲があって

手を伸ばせば取れそうな気さえした。


楽しいとぼくは思った。


「かっちゃん。遅いよ。もっと速く速く」


わぼうはそう言いながら荷台で飛び跳ねた。


「んあ。こ、これ以上早くすると

人間には厳しいと思うぞ」


「大丈夫だって。

ぼくたちは急いでるんだから速く」


「ん。わ、わかった」


わぼうとかっちゃんの会話を聞いて本当に大丈夫かな? 

とぼくは不安に思った。


そのとたん、体が後ろに引っ張られたように感じる。


どんどんとスピードが上がっているみたいだ。


ユキちゃんと希美子にあまり風が当たらないように

ぼくが一番前に立った。


しかし、あまりにも速いので

顔が消えてしまいそうだと心配になるぐらい

吹き付ける風が強かった。


死ぬ、死んでしまうとぼくが本気で思い始めたときに

風がどんどん弱くなり

かっちゃんのスピードが遅くなった。


助かったとぼくが胸をドキドキさせている横で

わぼうが「いえい、いえーい」と楽しんでいる。


振り返るとユキちゃんはぼくと希美子の間でしゃがんでいて

無事のようだった。


希美子もほっとした顔をしている。


「つ、着いたぞ」とかっちゃんが言うと

ゆっくりと荷台は地面に降りた。


ぼくは地面に降りると

大きなため息をついた。


まるで体が固定されないジェットコースターに

乗っているみたいだった。


帰りもかっちゃんに乗せてもらうのなら

絶対にゆっくり飛んでもらおうと思った。


「ふう、速かったね。ユキちゃん大丈夫?」

と希美子が心配そうに聞いていた。


「うん。怖かったけど、ちょっと面白かった」


そうユキちゃんが答えたので

希美子はホッとしていた。


「さて、あぼうどこかなあ。

ところであぼうは何しに陰磐城の里に来たんだったかなあ?」


わぼうはそういうと首をかしげていた。


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