表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼくのかかった変な病気  作者: 日木玉 鉄才
4/8

あぼう捜し

「あぼう。ぼくだよう。

お客さん連れてきたよう」



わぼうはそう言いながら

わらぶき屋根の民家に入っていった。


開いている扉から中の土間や囲炉裏が少し見える。


「あれえ、おかしいな。

留守だなあ。どこに行ったんだろう」


わぼうが首をかしげながら出てきた。


「いないの?」と希美子が聞いていた。


「うん。本の虫だから大体家にいるのになあ。

ちょっと捜してみよう」


わぼうに連れられて

ぼくたちは陰武蔵の里の

もっと奥に歩いていくことにした。


すると何だかおかしな顔をした人がいた。


まあ、ぼくはどんな人を見ても

今はおかしな顔に見えるのだけど

目や口の位置がずれるよりもっと変だったんだ。


まず口の位置にはアヒルのような黄色い口ばしが付いていたし

それに全身が緑色をしている。


その人は青いジャージ姿で

クワを持って畑を耕していた。


「おおい、武蔵ガッパ。

あぼう見なかったあ?」


わぼうが大きな声でその緑色の人に話しかけていた。


「おう。わぼうか。

ん? 人間を連れているのか?」


武蔵ガッパと呼ばれた人は

ぼくの顔をちらりと見た後

ユキちゃんを珍しそうに見ていた。


ユキちゃんは得体の知れない人にじろじろと見られたので

怖がって希美子の後ろに隠れてしまっている。


「あの人ってもしかして河童なの?」


「そうだよ」

とぼくの質問にわぼうが即答した。


「河童って頭に皿があったり

背中に甲羅があったりしないの?」

と希美子が聞いた。


「よくそれ言われるけどね。

頭の皿の水がなくなったら力が出なくなるとか

皿が割れたら死ぬとかね。

でも考えてみてよ。

そんな弱点さらけ出している生物が生き残れるはずないでしょう。

このふさふさな頭が普通の河童なの」


武蔵ガッパは自分の黒髪を書き上げながら力説していた。


「そうなんだ。じゃあ、甲羅は?」

と希美子が聞く。


「あれはファッションだよ。

ほとんど着ない。

水かきはすぐ出せるけどね」


武蔵ガッパそう言いながら

にょにょっと手に水かきを出してくれた。


よく出来ているなあとぼくは感心する。


「そういえばあぼうの居場所だっけ。

あぼうは朝から陰磐城かげいわきの里に

行くって昨日から言ってたじゃないか。

もう忘れたのか?」

と武蔵ガッパが教えてくれた。


「あ、そうだった。すっかり忘れてた」


わぼうはそう言うと

ごまかすためにちょっと笑っていた。


「あぼうは何で行ったのかな?」

とわぼうが武蔵がっぱに聞いていた。


「馬で行ったよ。

途中でナニワガッパと会うとも言ってた」


「そうかあ。

じゃあ、ぼくたちはかっちゃんに頼めば追いつけるね」


わぼうはそう言うと一人で納得してうなづいていた。


「じゃあ、かっちゃんのところに行こう」


わぼうは一人で決めて

歩いていってしまった。


朝から馬で移動しているのだから

あぼうは遠くに行っているはずだ。


かっちゃんに頼めば追いつけると行っていたけど

かっちゃんは車でも運転できるのかな?


そう思いながら歩いていると

前の畑でなにやら奇妙な光景が広がっていた。


牛が引くような大きなクワで

何かが畑を耕している。


でもぱっと見たとき

あまりにも変なものだったので

いったい何がどうなっているのかまるでわからなかった。


「あ、いたいた。かっちゃーん。

ドライブ連れてってえ」

とわぼうが手を振りながら言った。


かっちゃんと呼ばれた者がこっちを向いたときぼくはぎょっとした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ