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ぼくのかかった変な病気  作者: 日木玉 鉄才
2/8

わぼうが来た

「さて、じゃあ

おまじない教えるから一緒に大きな声で言ってみよう」


ぼくは希美子に教えられたおまじないを覚えて

ちょっとばかばかしく思ったけど

せえので一緒に大きな声で言ってみた。


「あぼうさまおられましたら知恵をお貸しください」


ぼくたちの声が山に響く。


ちょっと緊張しながらぼくは耳をすませて

本当に神様が来るのか待った。


森の葉っぱが風に揺れ

さわさわと聞こえる。


でもそのほかに何も聞こえなかった。


一分ぐらい待ってみたけど何も起こらないので

ぼくは希美子と顔を合わせて首を傾げた。


「呼んだ? 

呼んだよね。絶対、呼んだ」


急に声がしたのでびっくりして横を見ると

おかっぱの男の子が立っていた。


赤いちゃんちゃんこを着て

手には赤トンボをつまんで持っている。


年は五歳くらいかなとぼくは思った。


「もしかして神様?」


希美子が目を輝かせて聞いていた。


「え? 神様じゃないと思うな。

何だろう。

ぼくはぼくであって神様じゃないとは思うなあ」


おかっぱの男の子はそう言いながら

赤トンボにワラを結んでいた。


赤トンボは風船のように

ワラによっておかっぱの子に捕まっている。


「ぼくはわぼうって言うんだ。

人間はぼくたちのことを座敷わらしって呼んでいるかな。

だから神様じゃなくて座敷わらしかもしれないね」


「座敷わらしって聞いたことある。

何でも座敷わらしが住んでいる家は裕福になるんだよ」


ぼくの言葉に希美子がうなづいた。


「わぼうさん。

私たちお願いがあってきたのだけど聞いてもらえるかな?」


「お願い? いいよ」


わぼうはそう言いながらも

地面の石をひっくり返して

虫を探していた。


本当に聞く気があるのかな?


「あの、ぼくがちょっと変な病気になっていて

人の顔が変に見えるんだ。

目の位置や口の位置がおかしな場所にあるように見えるのだけど

この病気を治せないかな?」


ぼくの言葉を聞くと

わぼうはぼくの顔をじっと見つめてきた。


「変に見えるの? 

ぼくの顔はどう見えているの?」


「口がだいぶ左にずれてほっぺた辺りにあるように見える」


「そうなの? 変な顔だね」


そう言うとわぼうはけらけらと笑い出した。


「ほっぺたに口っておかしいよ」

とまだ笑っている。


「あの、それで治せるかな?」


「え? 治したいの。

面白いからそのままでいいじゃない」


「よくないよ。困ってるの!」


ぼくはちょっとイライラした声で言ってしまった。


その声を聞いてわぼうは怒られたと感じたらしく

ちょっとつまらなそうな顔になった。


「そうかなあ。面白いと思うけどなあ」


わぼうはちょっとすねているようだ。


「ごめんね。このお兄さん本当に困っているから

この病気を治してほしいの」


希美子が優しい声で言っていた。


「うん。でも、ぼくそんなの治し方知らないし」

とわぼうは元気のない声で言っていた。


「でも、あぼうなら知っていると思うよ。

あぼうのところに案内するからついて来て」


わぼうはそう言うと急に歩き出した。


鼻歌も歌いだし、また元通り元気いっぱいだ。


たぶんこの子と一緒にいると疲れそうだなとぼくはこのときに思った。


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