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ぼくのかかった変な病気  作者: 日木玉 鉄才
1/8

裏山に行こう

最近、なんだか人の顔がおかしく見えるんだ。


目の位置が馬のように離れていたり

猫のように近かったり

アリクイみたいに口の位置があごの方に落ちているように見える。


みんなの顔が失敗した福笑いのように見えてしまう。


いろいろな病院に行ってみたけど

お医者さんはみんな原因がわからないんだって。


この病気になってから五日が経つけど

友達の顔を見ても

変な顔に見えるからつい笑ったりしてしまって怒らせてしまう。


それにみんなの顔が変わって見えるから

誰が誰だかわからなくなっちゃう。


だから早くこの病気をぼくは治したいんだ。


ぼくの病気のことを幼馴染の大木おおき希美子きみこに話してみた。


希美子は小学校四年生でぼくと同級生なんだ。


ぼくと希美子の両親はとても仲良しなので

小さいころからよく遊んでいた。


でも小学校高学年になってからは

あまり遊んでいないよ。


なぜかというと希美子は学校で一番可愛らしくて

とても人気者だからなかなか近づけないんだよね。


いつもニコニコしている希美子に

初恋の気持ちを教えてもらった男子は数知れないと思う。


だから男のぼくが希美子とあまり仲良くしていると

みんなに恨まれてしまうんだよね。


今日は帰り道でたまたま会ったので

久しぶりに一緒に帰っているんだ。


「え? そんな変な病気に健太なってるの?」


ぼくの話を聞くと

希美子は心配そうな顔で聞いてきた。


ちなみのぼくの名前は峰林みねばやし健太けんたという。


「もしかして私の顔も変に見えてるの?」


「そうだね。馬みたいに目が離れて見える」

とぼくは答えた。


「え、そうなの? じゃあ、こうしたら普通に見える?」


希美子はそういうと目を寄せて見せてくれた。


「ははっ。確かにちょっとマシになったけど

そんなことしなくていいよ。

可愛い顔が台無しになるよ」


ぼくは笑いながら返事した。


希美子は都会の街に行ったら

絶対にアイドルにならないかとスカウトされると思う。


それぐらい本当に可愛いんだ。


「そっか。でも大丈夫?」


希美子はいつものニコニコとした顔に戻っている。


「大丈夫じゃないなあ。

声を聞いても誰だかわからないこともあるし

それにやっぱりみんなの顔が変に見えたら

気持ち悪くなってくるもの」


「お医者さんに診てもらったの?」


「うん。みんなわからないって」


「そうかあ」と希美子はまた心配そうな顔になった。


「そうだ。裏山の神様にお願いすればいいよ」


希美子が思い出したと

手をパーンと打っていた。


「裏山の神様?」


「そうそう。

困ったことがあれば裏山の神様に言えば

願い事を叶えてくれるっておばあちゃんが言ってたよ。

裏山の神様に会うおまじないを教えてもらってたの忘れてた」


希美子が元気良く大きな声で言った。


「へえ、ほんとに? 神様なんているのかな?」


「信じるものは救われるんだよ。

一度試してみたらいいじゃない。

さ、行ってみよう、やってみよう」


希美子がぼくの背中を押してくる。


もうぼくたちは希美子の家の近くまで来ていたので

ランドセルを希美子の家に置かせてもらって

そのまま裏山に行くことにしたんだ。



裏山は大きな平屋の家が並んでいる住宅街を抜け

田畑を見ながら歩いていると

すぐに見えてくる。


希美子の家から歩いて二十分ぐらいで着く小さな山だ。


「神様が住むから

裏山にはあまり入ったら駄目だよって言われているけど

今回はいいよね」


希美子はそう言いながら笑顔で元気よく歩いている。


希美子は可愛い上に

いつもニコニコして元気いっぱいだ。


一緒にいるだけで楽しくなってくるから

人気者なのは当然だと思う。


それに比べてぼくはブサイクだし

いつもムスッとした顔をしているから

友達もあまりいない。


希美子みたいに良い顔になれたらなあといつも思う。


顔さえ良ければ人気者になれるし

女の子にもモテモテで

きっと楽しい人生をおくれるのになあとぼくは思う。


そして、そうなれていない自分に落ち込むんだ。


「どんな神様がいるんだろうね。

ひげとか生やしているのかなあ?」


希美子は水溜りをぴょんと飛び越えながら聞いてきた。


裏山のふもとまで来ているので

今からは山道だ。


うっそうと茂る木々に囲まれ

やや湿った土の道を歩く。


「本当に神様がいるのかなあ」


「いるよ。おばあちゃんは嘘をつかないもの」


希美子はそうきっぱりと言うと

ニコニコしながらと歩いていく。


歩きやすいように丸太が埋められている階段のような坂道を登りきると

神社が見えた。


緑の葉っぱが空を覆う中に赤い屋根の神社がポツリとある。


山奥の神社だけど綺麗に掃除されていて

重々しい空気が辺りをただよっていた。



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