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第85話  復讐する者たちと少女ら(2)

 

 ドォーーーン

 ドォーーーン

 ドォーーーン


 連続の破裂音。同時に、土や石ころが爆風と共に、少年を襲う。両腕で顔を守りながらひざまずき、小さくなる体勢。集中力が一瞬途切れたことで、制御不可状態。塵旋風のダンスは出番なく、終えた。

 爆音が収まると、伏せていた顔を正面に。驚愕の目だけで、周囲を窺う。平坦だった地面にはいくつもの盛り上がった土と浅い穴、そして砂煙。クレーターのようなモノが一瞬にして、生じていた。何が起きたのか理解するのに、時間は掛からなかった。

 しかし、どのような爆破物なのか、まではこの時点で知る由もない。


 武装隊が使用する爆弾ではない。奉術師らによって作られたFAEB《気化爆弾》、だったのだ。気化麻酔を自然界の分子の膜球で密閉、徐々に球を縮め加圧、衝撃を与え爆破させる単純のモノだった。ヘリの建毘師の仕業である。空中から地上へ高速で、落下させたのだ。


 ゆったりと立ち上げる少年直毘師は複数の傷を負いながらも、右腕を上げた。再び攻撃するために……。しかし、それに反応し一発の銃声。

 陽の左足を霞めた銃弾は、ズボンを裂き、汚れた白スニーカーを濃厚褐色に染めていく。踏ん張りが利かず、再度片膝を立てしゃがんだ。


「それ以上抵抗するなら、容赦しないぞ! 」



 ***



 空き地西側に着陸したヘリを降りた3人は、その方向へと走った。静けさと荒れ地だけが彼らを迎えるが、もやらしきものも立ちこめていた。工事現場での砂煙なのか、争いがあったのか、それすら判らない。

 掘り下げた地と土の盛り上がりが、点在している。そこに、平行に保ててないRV車だけがポツンと、放置されていた。


「あの車、湊さんのだと思います」


 レイはその周辺を見渡すが、目的の2人の姿を確認出来ない。嵩旡は埋立地全体の安全確認を行なうが、敵となる者は確認出来ない。

 傾いている車へ先頭で駆け寄る、須佐野。ドアを開け、中を確認。首を横に振り、2人に知らせる。


「いました! 湊さんです」



 ***



 約35分前――


 臨海トンネル入口手前での渋滞はあるものの、分岐があるためゆっくりと流れる城南島の道路。入口では警察ではなく道路公団の黄色い車両が斜め止めし、2人の公団スタッフのみで誘導していた。それを無視し間をぬって突破する、黒RV車。


 トンネルを抜けたと同時に、爆音と砂煙を目撃。少年の安否への不安とNSネスへの怒りが冷静さを失い、ハンドルを強く握りしめ、足首を伸ばす。警察官2人が立つ通行禁止柵を猛スピードで突破した。砂煙たつ現場へと加速させる。メディアを遠ざけるためなのか、スカイブルーのヘリ二機が、上空を旋回しているのも目視していた。


 煙下付近で視野に入ってきたのは、10数台の警察車両と包囲している数えられないほど、警官隊。猛スピードで近づく車両に気づいた者たちは、銃を向けてくる。

 それでも、クラクションを連続で鳴らしながら包囲網の内側に、突入した。跪いている目的の人物を見つけたドライバーは、盛り上がる地面を避けつつ、近くで後輪を横滑りさせながら急停車。


「乗って! 」


 足を引きずる少年に動揺。一旦降り、手を貸そうと駆け寄る。左足の傷の他にも、顔や腕などにも数ヶ所受傷しているではないか。頭からの流血は、頬を通過し垂れていた。


「なんて酷いことを……」


 肩を貸しながら、助手席へ。彼を乗せて包囲網を突破しようと試みる、黒のRX450H。

 しかし、容赦ない銃弾によってタイヤ二本が破裂。ハンドルを取られ、爆破跡のような空いた穴に、嵌ってしまった。アクセルを踏んでも空回り。包囲されてしまうことに。


「手を上げろ! 」


 そんな声は気にせず、陽は助けに来た者と話し出す。


「姉さん、闇、持ってる? 」


「あ、あるわよ。2人分だけど……」


流石さすが姉さん、助かる。……貸して! 」


「陽……」


 車の外に銃を向ける警官らが再び、叫ぶ。


「手を上げて、車から降りなさい! 」


 ガラスの外にいる者たちに見えないように、2人は手の平を合わせた。彼に一つの幽禍を渡した後、ドアを開け両手を頭の高さまで上げながら、降車する女。

 少年はある準備をして、降車。そして両手を頭後ろで組み、降参の素振りを見せた。が、彼の目は未だ反抗的である。


「いいよ」


 ほんの僅かに唇を動かした。瞬時、闇畾実行。

 車中で受け取った幽禍を15分割、車の下から地中に移動させていた、のだ。敵の奉術師に見つからぬように。彼の合図で相手の足元から奇襲の如く、注入。彼の部下となった幽禍たちは、従順にその使命を遂行し始める。


ひざまずけ! 」


 彼らは2人に命令。それには抵抗することなく、ゆっくりと両膝を地面に立てる少年と女。だが、一人、また一人と、苦しみ出すと、含み笑いをこぼす。2人を近くで包囲していた13人の武装警官ら全員に、異変。

 一気に肺胞をウィルス感染の如くボロボロにし、呼吸困難を起こさせた。倒れ込む者、うずくまる者、咳き込む者、そして吐血する者。

 解放された女は、少年の元へ。


「大丈夫? 」


「このくらい、平気だよ……これからさ! 」


 肩を貸してやっとのことで立ち上がる、受傷している少年。相手の残りに攻撃するための構えを取る。そばで吐血する者の鮮血を利用し、ビー玉ほどの血の玉を可能な限り多く、作り上げた。


 その時、だ。


「いやいや参りました。君の技、その執念。……あ、褒めてるつもりですから、一応」



 

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