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第76話  護身力を知る者

 

 日曜には、体調と元気を取り戻す。そしてある決意をする、レイがいる。

 修学旅行中までは弱気になっていた。涼夏や水恵たちに危険があることを不安に思い、命毘師を退こうと決心する、直前だった。しかし、外からの闇を自らが受け、多くの仲間に助けてもらった事実。奉術師の存在と使命の本来の姿と必要性、NSネスの存在の危うさを、実感した。

 そして何より、涼夏の後押しがあったからだ。


『レイちゃんは困っている人のために続けるべき。そんなレイちゃんが真友であること、私の誇りだ』


 と。――命毘師みょうびしを続けること、を決意出来たのだ。数日後、水恵夫婦、涼夏親子、阿部阪家に、その強い意志を伝えた。当然、危険度は増す。それは命毘師を辞めたとしても、裏組織ダークネスの計画がある以上同じこと、にも気づけた。

 今の自分に出来ることは、亡き祖母が残した言葉、母菜摘のように“強い心”“人を想う心”“勇気”を持ち、正しいと思う信念を貫き、端上家に恥じない奉術師としての活動をすること、と確信した。

 決意には、阿部阪一族と一緒に闘うこと、仲間となる奉術師を増やし、対抗するチームを作ること、も含まれていた。つまり、組織ネスの計画を破算すること、である。


 彼女の判断に全員が、激励。そして阿部阪家、いや建毘師は全力で守護することを、誓った。

 先ず、少女へのシールド。ナチュレ・ヴィタール(自然界生命エネルギー)を利用した、人間ごときの闇を弾き飛ばす術、である。ナチュレ・ヴィタールは、クォークやレプトンなどの素粒子を存在せしめる源、となるもの。そのエネルギーで膜を張り、彼女を守ることにした。だが、これは闇儡あんらい攻撃には有効だが、闇嘔あんおうなどの直接触による攻撃には、向かない。

 故に、少女には建毘師の守護が不可欠となり、かつ自らで守るすべを知っておく必要もあった。



 ***



「人間が生きるためのみょうとは別に、奉術師ほうじゅつしだけのみょうがあるんだ。それを感じ取るだけ、だから……」


 同級生であり、建毘師の嵩旡から教わることに。

 翌週土曜日の午前中、最寄りの観光スポット。男子と2人きりでは、不用な噂を立てられるため、涼夏も一緒だ。実践を交えながら、奉術師のみょうを感知出来るように、この場所を選んだらしい。騒々しくない所で3人座りながら。


 みょうとは、エネルギーの一種。人間のみょうが生命エネルギーなら、奉術師の命は変換エネルギー。理科でいうところの媒体や触媒、と説明されるが、ピンとこないようだ。


「例えば、目に映る情報は、目自体が判断するのではなく、脳で判断するよね。情報を伝達する物質や情報を転換する物質があって、最終的に脳が判断する、これと原理は一緒。

 奉術師には、神経伝達物質に繋がる別の非物質があって、それで「この人は奉術師だ」って脳が判断する。その非物質を使わなければ、普通の人と何ら変わらないってこと」


「何となく……」


「非物質については省くけど、その非物質を使うためには、力が必要になる。その力を感知出来れば、その人が奉術師だって判るから」


「はあぁ……で、どうやるの? 」


「第九感を使う」


「だい、きゅうかん? 」


「そっ。……人間には五感の他に第六感があるって言うよね。否定する人もいるけど、実際には第八感まであるんだぁ。奉術師には、第九感が備わってる」


「へぇえ~」


 涼夏が反応した。


「第六感は生命エネルギーの発受感覚。第七感は時間ときを掴む感覚。第八感は動植物へ繋がる感覚。そして第九感は自然界エネルギーの授受感覚。ついでに、第十感以上もあるらしいよ。九感以上は神の領域って祖父から教えてもらった」


「阿部阪くん、おじいちゃんいるんだぁ? どんな人? やっぱり建毘師たけびし? 」


「……それはまた今度」


「ふぁ~い(は~い)」


 舌を出すレイ。


「それじゃあ、私にも第八感まであるってことね」


 興味津々の隣の女子。


「そう。でも五感だけで満足出来る世の中だから……あとは訓練するかどうか……ちなみに、スピリチュアルとか宇宙や神との交信とか、あと教祖とか占い師とか……9割5分以上は嘘。既存知識と個人的想像なんかを組み合わせてるだけ……本物は奉術師のみょうを持ってる。本人が気づいてないことが多いけどね。そこまでは調べてないみたいだけど……」


「気づいて、ない? ……ってことは、阿部阪さんたちが把握している奉術師以外にも奉術師がいるってことね!? 」



 

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