第7話 事件を追う者
☆―☆―☆ 一人称視点の話です。
「砂、どうだ!? 」
情報屋からの電話に迷いなく、応対。
「うるおーす! 」
彼なりの挨拶だ。『うる』は麗しいと潤いから取ったらしい。つまり『元気そうで何よりです』という意味だ。『おす』は挨拶のことだが、略して『うるおす』。私が年上など気にしていない、というわけだ。
「おお」
とだけ返した。
「で? 」
「柳刃さん、別の事件で確認取れやした。昨年死亡した鎌倉の犯人、脳だけ焼けた痕が見つかってるそうっす」
「脳に火傷? 」
「です! もともとの死因は脳溢血による交通事故なんすが、解剖の結果、火傷による脳障害じゃないかと。まっ、公表されてませんけどね」
「公表されてないけど、頑張って見つけたってことだな!? 」
「いぇーす! 」
「流石だな。お前に頼んで良かったよ」
この褒め言葉は、彼のエネルギーだ。
「そぉーすか。じゃ、またマッスルしマッスル! 」
「よろしく」
閉じた電話を元の場所に置き、手帳の一枚を戻した。そこに書いているのは、“心臓、火傷?”の文字。そう、二つ目の難題は、対象者の心臓だけが焼きタダレていた、という変死体。そして今の報告。
(どうすれば身体内の一部だけが焼けるのか? 感電などの痕跡はないと言ってた。……薬品? 直接注射するってことだよな!? 医療関係者……いや、心臓に刺すなんて誰もが出来る技じゃない。雪籐じゃあるまいし……そんな遺体、他にもあるのか? )
そしてもう一つ。
(どこで『第三者』の存在を知った? ネットで探ってもそれらしきものはない。……向こうから近づいて……いや、リスクがあり過ぎる。……どこで知った。どうやってコンタクトを取る? )
もし、被害者家族が『第三者』に依頼している場合の、コンタクト方法。これがどうしても解らない。
(依頼……してない? じゃあ、なぜ旅行に行く必要が……偶然!? いや、今のところ全員が出掛けてる。偶然じゃない! 必ず繋がりがあるはずだ)
ジャーナリストとしての経験、そしてフリーとしての勘が蠢き始める。大きな事件であることを察した。他案件の調査を減らし、この事件に注力することを、決意。
さらなる情報集めのため、西日本と東日本の事件を複数に絞り、一気に調査することにした私は、翌朝から動き出す。
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